Fin-blog

フィンランドという国のライフスタイルや文化について心に思うことを記していくためのブログです。

かわいいデザイン=やさしいデザイン

2007-06-09 | Weblog
ヨーグルトや牛乳のパッケージや
ミネラルウォーターのボトルデザインなど、
北欧の日用品がカラー写真で紹介されている本が
たくさん出版されている。
私が手にしたのは『北欧のかわいいデザインたち』というタイトルのもので、
他にも、交通局のパンフレットうやスーパーの袋、
切手などが掲載されている。
どのデザインを見てもなんだかホッとして微笑ましく感じられてくる。
北欧のデザインが"かわいい"のはどうしてなのだろう?

「かわいいデザイン」を「やさしいデザイン」という言葉に置き換えてみる。
人に優しくてシンンプルなデザイン。
人に優しいとは言っても、
ユニバーサルデザインのように人間工学的に優れているというのではない。
シンプルとは言っても、ストイックなものではない。
そういうのではなくて、
人間味があって誠実なデザインなのだ。

機能的に考えてどうデザインすべきか、
一つ一つのデザインにどういう意味合いがあるのか、
企業としてのアイデンティティをどう表現すべきか。
もちろん、そのようなことが考慮されて
デザインが行われなければならないのは確かだ。
しかし、北欧のデザインは、
まず、人としてどうデザインするのかが考えられている点が
大きな特徴なのだと思う。
人としてどうデザインするか。
それは、考えられているというより、
自然とそういう意識であるように思われる。

"人としてのデザイン"とは、また曖昧な言葉で
上手くは説明できないのだけれど、
グラフィックデザインに限って言えば、
一目見て、それが何を伝えるデザインなのかが
すぐに分かるようになっていたり、
デザインされているモチーフが
その国や地域の人たちにとって身近な物であったり、
というようなものだ。

上に挙げた『北欧のかわいいデザインたち』(ピエニ・カウッパ著)の中で
特に印象的だったのは、次のようなデザインだ。
例えば、電車の時刻表の表紙。
プラットフォームが写っている写真に、
大きな時計のアイコンマークが重ねられている。
字を読まなくても、一目で電車の時刻表であることが分かる。
例えば、あるスーパーマーケットのロゴマーク。
手に買物かごを提げた女の子が表されている。
一目でそのマークが買物を表していることが分かるので、
そのスーパーマーケットの看板やレジ袋には、
いちいち「スーパーマーケット◯●」というような説明は付けられていない。
他にも、草花や白鳥、オットセイなどがモチーフとされているデザインには、
フィンランドがどういう環境にある国なのかがよく分かる。

そういう率直なデザインというのは、
とても親切で謙虚な姿勢につながっていると思う。
たくさんの文字やイラスト、写真を使ってデザインされた
チラシやパッケージは、
確かに誰が見ても、汲み取るべき情報を逃すことはない。
だけれど、そういったデザインには、
制作者の「ここまで説明をしたのだから、分からないとは言わせない」
というような傲慢さを感じなくはない。
親切なようでいて、人に分かりやすく伝えるということが
考えられていないように思う。

単純な表現でありながらも
きちんと伝えるべきことは伝え、
またそこに、デザイナーの遊び心や民族性などが
さりげなくプラスされているデザイン。
そんな親切で楽しいデザインを、
私は「やさしいデザイン」と呼ぶ。
そして、その優しさに含まれている素直さや親切さが、
北欧デザインが「かわいい」と呼ばれる理由なのだろう。

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