救急一直線 特別ブログ  Happy保存の法則

オリジナルHP「救急一直線」は2002年5月-2007年7月で修了中,ブログも2012年末で一時修了としております。

MRSAの抗菌治療  テイコプラニンの使い方

2005年08月03日 03時27分06秒 | 講義録・講演記録 3
MRSAの抗菌治療


北海道大学大学院医学研究科
救急医学分野


松田直之



MRSAに対する抗菌治療
ポイント

1)MRSAは術後管理の長期化した症例の日和見感染として認められることが多い。
2)MRSAは市中感染の起因菌としても注目されている。
3)MRSAは主に接触感染で伝播する。
4)術後のMRSA定着で感染兆候のない場合は,原則として,抗菌薬を用いない。
5)テイコプラニンはトラフ濃度を17-20μg/mL以上を目標に治療域を保つ。
6)バンコマイシンはトラフ値を10-15μg/ mLに保つとよいが,使用しないのがよい。
7)アルベカシンはピーク値を8-12μg/ mL に保ち,トラフ値を2μg/mL以下とする。
8)腎機能低下患者には抗菌薬のTDMが必要である。
9)毒素産生型MRSAに対しては,早期炎症軽減のために,リネゾリドを推奨する。


はじめに
 MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は術後管理の長期化した症例の日和見感染として認められることが多く,周術期管理を複雑にする薬剤耐性菌の1つである。術後管理の長期化と患者の免疫力低下により,保菌患者から菌交代症として検出される場合や,医療従事者を介した接触感染で伝播される。手術部位感染症(SSI:surgical site infection)では,感染巣の適切なドレナージが原則であり,発熱,白血球数,CRPなどの感染徴候が認められない場合は,不必要に抗菌薬を選択する必要はない。しかし,MRSAによる感染徴候を確認した場合には,的確に抗菌治療を開始することが大切であり,添付書どおりの抗菌治療では治療効果を得にくいことも多い。現在,使用されているMRSAの注射用抗菌薬は,テイコプラニン(TEIC),バンコマイシン(VCM),アルベカシン(ABK)であり,リネゾリド(LZD)も承認される予定である。VCMに耐性をもつMRSA(vancomycin-resistant Staphylococcus aureus: VRSA)が米国で出現しており,日本でもVCMやTEICの耐性化が進んでいる。以上を念頭におき,本稿ではMRSAの抗菌治療をまとめる。

I. MRSA菌株の多様性
 MRSAは院内感染の起因菌とされてきたが,1990年代より既に市中感染の起因菌として報告されていた。Community-acquired MRSA(C-MRSA)として,MRSAは院内感染や術後感染症のみならず,市中感染の起因菌としても注目されている1)。
 従来MRSAは,β-ラクタム系抗菌薬が作用する4つの黄色ブドウ球菌細胞壁のpenicillin binding protein (PBP)のうち,PBP-2の変異体PBP-2’を発現させることでβ-ラクタム系抗菌薬に対する耐性を高め,抗菌薬耐性を獲得した。このPBP-2’をコードするメチシリン耐性遺伝子は,mecAと命名されている。このような耐性獲得の共通機序があるものの,さらにMRSAには多くのクローンが存在し,MRSAはあくまでもメチシリン耐性を示す黄色ブドウ球菌の総称に過ぎない。過去のMRSAの出現と蔓延には,小児をはじめとする外来診療におけるセフェム系抗菌薬の多用が一因となったが,分離されるMRSA菌株のminimum inhibitory concentration(MIC)は均一ではないため,術後の不適切な濃度のMRSA抗菌薬の使用により,今後もMICの高いMRSA株が交叉感染し,院内感染を拡大させる可能性がある。

II 感染か定着か

1. MRSA定着の除去
 MRSA定着の90%以上が鼻前庭と鼻毛と報告されている。術後の免疫低下や抗菌薬の併用の可能性から,術前監視細菌培養検査で,MRSAの保菌が確定した場合,食道や膵臓などの炎症性手術である場合には術後に免疫が低下するために,MRSAを除菌してもよい。術者は,自身の手術の炎症性を自身が一番よく知っているので,使用するかどうかを検討すればよい。鼻腔のMRSA除菌に対してはバクトロバンTM(一般名:ムピロシン)の1日3回の3日間の鼻腔内投与とし,MRSAが咽頭から同時に検出された場合はポビドンヨードによるうがいを併用する。また,術前に便細菌培養検査よりMRSAが検出された場合は,バンコマイシンの経口投与を1回0.5 gの1日3〜4回の投与を行い,3日後の便の細菌培養検査で結果を再評価する。経口投与されたバンコマイシンは腸管吸収されることはない。しかし,このような定着タイプのMRSAは,一般にプロテアーゼやリパーゼを産生する株でないため,肺炎に移行しにくい特徴がある。

2. MRSAの抗菌治療の原則
 MRSAの抗菌薬治療開始の原則は,感染と評価した場合とする。術後,細菌培養検査でMRSAが検出されたからといって,すぐに抗菌薬を使用するわけではない。長期化する術後管理では,感染状態か,定着状態かを評価することが大切である。この感染状態と評価される場合の多くは,プロテアーゼやリパーゼなど,さらにPVLなどの毒素を産生している可能性がある。
 血液や胸水,腹水などの本来無菌からの検出は炎症源と評価し,抗菌薬投与を開始し,MRSAの増加を制御する。一方,喀痰,皮膚,尿,便などの非無菌的検体より検出された場合は,局所症状と炎症所見(呼吸数,脈拍数,発熱,白血球数,CRPなど)により,感染性の強度を評価する。感染と評価した場合は,しっかりと抗菌薬を使用する。定着の評価には,免疫抑制のないことが前提であり,移植術後や長期化した全身性炎症反応症候群,ステロイドや抗がん剤の使用,放射線治療併用などの病態では生体感染防御機構が低下するため,MRSAの生体内での蔓延を阻止する目的で抗菌薬を併用する。

3. 院内感染対策
 MRSAは主に接触感染で伝播するため,原則は接触感染予防であり,保菌者を隔離する必要はない。しかし,保菌患者管理では,免疫の低下した他の患者へ医療従事者の手を介した接触感染や交叉感染が生じる可能性があるため,定着患者であっても医療従事者は接触予防策,標準予防策に努め,手指消毒や手洗いが重要である。一方,高度の免疫低下患者は,MRSA患者からの逆隔離とする。
 以上が原則であるが,昨今,研修医のローテーションシステムの導入にあたり,感染対策の甘い医師の乱入が目立つ。このような際に,MRSAが消失しない患者を個室管理とすることは,不注意な接触感染を防ぐ点で,効果的であることは否めない。ベッドサイドのアルコール手指消毒や手洗いの必要性に対しては,徹底した指導が必要である。


III MRSAに対する抗菌薬治療
 日本で認可されているMRSA治療の代表的な注射用抗菌薬は,2005年の段階でTEIC,VCM,ABKの3つである。ABKは1990年に,VCMは1991年に,TEICは1998年にMRSA治療薬として本邦で承認された。これらの使用には血中濃度モニタリング(TDM:therapeutic drug monitoring )を行い,治療有効域を探り,かつ,中毒域を回避する。TDM解析にはTDXあるいはTDXFLXアナライザー(アボット社)などが利用でき,これを北海道大学において集中治療室で独自に運用していた。これら抗菌薬の血中濃度の推移をシミュレーションするTDMソフトを抗菌薬各社がは開発しており,これらも入手できる。

1. テイコプラニン(TEIC:teicoplanin,タゴシットTM)

 TEICは細菌細胞壁を構成するペプチドグリカン前駆体(ムレインモノマー)のD-alanyl-D-alanineに結合して細胞壁合成を阻害する。適応症は敗血症,深在性皮膚感染症,慢性膿皮症,外傷・熱傷及び手術創等の2次感染,肺炎,膿胸,慢性呼吸器病変の二次感染である。TDM解析では腹水や胸水にも移行が良いが,添付文書の使用法では十分な局所濃度を得ることができず,TEICは腹膜炎,心内膜炎,関節炎,骨髄炎,髄膜炎には承認されていない。血清蛋白結合率が90%と高く,終末半減期が46〜56時間ときわめて長いのが特徴である。初期には,アルブミンに吸着されるために,血漿濃度が上昇しにくい特徴がある。

a. TEICのトラフ値は 17-20μg/mLを目標とするとよい
 TEICを投与する際に注意すべきことは,有効血中濃度に到達させるためにローディングドーズを実施することである。添付文書の用法は,「成人には初日800 mg,または,400 mgを2回に分け投与し,2日目以降は1日1回200 mg,または,400 mgを30分以上かけて投与する」とされているが,これでは,有効血中濃度に到達するのに少なくとも3日を要する。TEICの中途半端な血中濃度はMRSAに対するTEICやバンコマイシンのMICを上昇させる可能性があり,早くTEICの有効血中濃度に到達させた方がよい。従来,TEICの有効血中濃度はトラフ値で10μg/mLとされてきたが,このレベルでは喀痰から検出されたMRSAに対して有効な治療成績が得られない。TEICのMRSAに対する治療血中濃度を,一般にはトラフ値17-20μg/mLを目標とするとMRSAの確実な消失が得られる。一方,MIC 4 μg/mLの株には25 μg/mL以上のトラフを推奨する。MIC 8 μg/mL以上の株にはTEICは効かない。このような急速ローディングの方法を,2002〜2003年の段階で北海道大学病院集中治療部で独自に開発し,MRSAのMIC ≦ 4 μg/mLの株に対して,良好な結果を得た。さらに,極めて重症な敗血症性ショックや急性腎傷害を併発していた症例でも,利尿がつくようになり,慢性透析を逃れることができている。しかし,TEICのトラフ値 60μg/mL以上の場合,腎機能傷害が発生する可能性があるが,このような経験は私の急速ローディング法において1度もない。高くて30 μg/mLレベルのトラフ濃度である。肝機能と腎機能が保たれている場合には,私の推奨する急速ローディング松田法では,この中毒域トラフ濃度には達しにくい。腹水や胸水がある場合は,そこにTEICが奪われるために,ローディングにおいても血中濃度は極めて上がりにくく,それらの3rdスペース量を考慮してTEIC 12 mg/kgを8時間毎に4回投与し,プライミング完成とする場合もある。

b.有効血中濃度に早く到達させる方法
 TEICは蛋白結合率や組織移行性が高いため,有効な血中濃度を維持するために,投与初日に十分な投与量を必要とする。トラフ値を早く上昇させるための方法を図1に示した。TEICの投与初日は10 mg/kgを8時間ごとに3回あるいは4回投与し,その後の12時間後にトラフ値を評価すると良い。このローディングドーズは,肝・腎機能に関係なくトラフ値を17-20 μg/mL以上に持込むために必要である。投与2日目(通算4あるいは5回目)からはTEIC投与量を4-6 mg/kgに減じ,1日1回投与とする。プライミング3回と4回の違いは,体液量が増加している場合と正常な場合であり,SIRSが進行していない場合は,TEIC 10 mg/kgの8時間毎の3回のローディングでよい。

c. 腎機能低下症例での使用
 腎機能障害によりテイコプラニンの排泄半減期が延長するため,クレアチニンクレアランス(Ccr)に基づき,投与量か投与間隔を調節する。Ccr 10 mL/分以下,乏尿や無尿,持続濾過透析中や透析前後では,血中濃度をトラフ値で評価する。推奨する投与方法を図2に記した。

d. TEICの効果が得られない場合にどうするか
 TEICの治療効果が得られず,細菌培養検査でMRSAが減じない場合,まず,TEICのトラフ値を測定し,適切な血中濃度にあることを確認する。MIC 4~8μg/mL以上のMRSA株には,テイコプラニンは私のローディング法でも効きにくい,あるいは効かない。カルバペネム系抗菌薬を併用している際には,VCMよりもTEICが相乗効果をもつ傾向がある。TEICはβ-ラクタム系抗菌薬と相乗効果を持つため,他の抗菌治療を行なう場合は,細菌感受性を評価して有効なβ-ラクタム系抗菌薬を併用するとよい。さらに,炎症が強く惹起されている場合には,プロテアーゼやリパーゼを産生している可能性があり,クリンダマイシン 1800-2400 mg/日 2Xを併用するとよい。


2. バンコマイシン(VCM:vancomycin,バンコマイシンMEEKTM,塩酸バンコマイシンTMなど) BYe-Bye バンコマイシン

 VCMはMRSAに限らず肺炎球菌,化膿性レンサ球菌,黄色ブドウ球菌などのグラム陽性球菌全般に強い抗菌力をもつが,VRE(VCM耐性腸球菌:vancomycin-resistant enterococci)やVRSA(VCM耐性黄色ブドウ球菌:vancomycin-resistant Staphylococcus aureus)の出現により,VCMの使用に注意が必要である。VCMの主な作用機序はTEICに類する細胞壁合成阻害とRNA合成阻害であり,蛋白結合率は30-55%,健常人の消失半減期は約6時間,無尿患者で消失半減期は7.5日レベルである。VCMは,MRSA敗血症のほかに,感染性心内膜炎,外傷・熱傷及び手術創等の2次感染,骨髄炎,関節炎,肺炎,肺膿瘍,膿胸,腹膜炎,化膿性髄膜炎に承認されているが,VCMの組織移行性は,部位によりまちまちであり,組織濃度の対血清比は,関節液が41.7 %,肺は23.7 %,喀痰は10.8-13.3 %,骨組織は14.6 %であり,決して,肺に移行が良いのではない。用法は,通常,成人にはVCMを 6 時間ごとに1 回0.5 gの投与,または,12時間ごとに1 回1 gの投与とし,60 分以上かけて点滴静注するとされている。年齢,体重,症状により適宜増減し,高齢者には1日総量を半量の1 gに減じる。小児,乳児には,1日量を40 mgとする。 VCMは急性腎不全を作る薬であり,重症敗血症や敗血症性ショックでは,私自身は使用禁忌としている。急性期にMRSAをVCMで治療しているようではいけない。急性期炎症治療の本質を理解していれば,VCMを使用することはないと評価している。

a. VCMのトラフ値は 10-15μg/mLを目標とするとよい
 VCMの血中濃度は腎毒性に留意してトラフ値を10μg/mL以下に下げることが推奨されてきたが,トラフ値を10-15μg/mLレベルに保つことでMRSAが消失しやすい。しかし,MIC≧2 μg/mLMRSA株には効かない。さらに,全身性炎症反応の管理では,その遷延や増悪により急性腎傷害を合併しやすく,VCMは適切なトラフ値に血中濃度を保っていても,炎症の回復期に利尿がつきにくい。さらに,トラフ値が20μg/mLを超える状態で維持すれば,急性腎傷害が不可逆となりやすい。アミノグリコシド系抗菌薬と同様に,腎障害を避ける注意が急性期医療においても必要となる。

b. VCMはAUC/MICを高く保つほうがよいが効かない
 VCMはAUC/MICを高く保つほうが,治療効果が上がる。このため,成人ならばプライミング量 25 mg/kgの後,1回1 gの投与でトラフ値を10 μg/mLレベルに保つように投与間隔を設定するのがよい。しかし,結局,トラフ値 ≧ 15 μg/mLでは,急性腎不全を慢性腎不全に移行しやすいために,急性期領域でVCMを使用しているようではいけない。VCMを使用しないMRSA管理を学ぶのがよい。

c. BIVR(β-lactam antibiotic induced VCM-resistant MRSA)
 β-ラクタム系抗菌薬とVCMの併用により,β-ラクタム系抗菌薬によるVCM耐性の誘導が認められる2)。



3. アルベカシン(ABK:arbekacin,ハベカシンTMなど)

 アルベカシンは日本で1973年にジベカシンを修飾して合成されたものであり,1990年にMRSA治療薬として承認された。作用機序はTEICやVCMと異なり,アミノグリコシド系抗菌薬として,細菌のリボゾームに特異的に結合し,蛋白合成を阻害するため,MRSAだけでなくグラム陰性菌にも抗菌力を持つ。MRSAはアセチルトランスフェラーゼ(AAC),ホスホトランスフェラーゼ(APH)及びアデニルトランスフェラーゼ(AAD)などを産生することでアミノグリコシド耐性を獲得したが,ABKはこれらの酵素に安定である。ABKの適用はMRSA肺炎とMRSA敗血症のみであり,成人には1日150-200 mgを2回に分けて30分-2時間かけて点滴静注,小児では1日4-6 mg/kgを2回に分けて30分かけて点滴静注するとされている。

a. ABKのピーク値は 20 μg/mLを目標とする
 ABKはアミドグリコシド系抗菌薬であるため,最高血中濃度(Cmax)を上昇させ,AUCを高めると抗菌を期待できるが,ABKの添付文書にはピーク値12 μg/mL以上やトラフ値2 μg/mL以上の繰り返しにより腎障害や第8脳神経障害を合併するとの記載がある。しかし,実際の臨床では20 μg/mLのピーク濃度を得ない場合,MRSAに対する殺菌効果を期待しにくい。一般的具体的投与は,成人に100mg×2回/日の投与ではピーク値は 8-12μg/mLレベルに達することが困難であるため,200 mgの1日1回投与に変更し,投与時間を30分と短くすることを勧める3)。しかし,実際には10 mg/kg,60kgの患者さんであれば600 mgの30分間での投与として,トラフ濃度が2 μg/mL以下となる時点で再投与するのがよい。TDMを併用しながらピーク値とトラフ値をモニタリングし,投与を適正化するとよい。ABKのピーク値は少なくとも15 μg/mL以上を目標とし,トラフ値は2 μg/mL以下とする。

b. ABKの効果が得られない場合にどうするか
 ABK耐性株が4 %レベルで存在するため,治療効果が得られない場合は,細菌検査室などでMICを評価してもらうとともに,血中濃度管理が適切である際には,1週間をめどにTEICに変更するとよい。また,ABKはスルバクタム/アンピシリンの併用で相乗効果を期待できる。


4. 持続血液濾過透析中のMRSA抗菌治療
術後全身性炎症反応の遷延により急性腎不全を併発した場合,集中治療室では,積極的に持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration: CHDF)を併用し,全身管理に努める。透析療法の導入に際しては,MRSA治療薬の投与計画を再考する必要がある。当院集中治療部での検討は,膜面積1.5 m2のセルローストリアセテート膜を用いて,血液流量 100 mL/分,透析液流量1 L/時,濾過速度 2 L/時を基本設定としたものだが,これより高流量でCHDFを行う場合,MRSA治療薬の消失は更に高まる。VCMは血液透析(hemodialysis: HD)や腹膜透析では除去されないが,血液濾過(hemofiltration: HF)で通常の排泄量を代償できる。上記設定では,成人に対して通常投与量の半量のVCM 1 g/日が推奨される4)。TEICに対しては十分なローディングを行った後,Ccr 50 mL/分レベルと同等な投与設定とし,投与間隔を2日に1回とするか,投与量を半量に減じさせる5)。一方,ABKはHDでもHFでも同様に排泄され,腎機能正常患者と同じ投与計画でよい。これらをTDMにより,より厳密に管理するとよい。


おわりに
 MRSAは周術期管理を複雑にする感染症の一つである。本稿では,真にMRSA治療に難じた際の保険適応外の使用法にも言及した。MRSA抗菌治療の開始には,TDMを用いることで,より効果的な,適切な管理が望まれる。さらに週に2回の監視培養検査を行い,MRSA消失が認められ,炎症が消失した際には,速やかにMRSA治療薬の投与中止するとよい。すべてのMRSA治療薬に対する耐性株が出現した現在,その耐性化状況を細菌検査室との共同で毎年整理するとともに,MRSA耐性株を伝播させない抗菌薬使用と管理を模索しなければならない。SSI治療におけるMRSA抗菌治療においても,感染管理の原点である感染予防と抗菌薬の適正使用が大切であることは言うまでもない。


参考文献

1)Hiramatsu K, et al: New trends in Staphylococcus aureus infections: glycopeptide resistance in hospital and methicillin resistance in community. Current Opinion in Infections Diseases 15:407-413, 2002

2)Haraga I, et al: Emergence of vancomycin resistance during therapy against methicillin-resistant Staphylococcus aureus in a burn patient--importance of low-level resistance to vancomycin. Int J Infect Dis 6:302-308, 2002

3)榮井 毅 ほか:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌患者への硫酸アルベカシンの1日1回投与法の有効性. 日病薬誌 39: 179-181, 2003

4)矢ヶ崎和明,早川峰司,松田直之 ほか:持続的血液濾過透析患者におけるバンコマイシンの薬物動態解析. 日本救急医学会雑誌14:739-744, 2003

5)Yagasaki K, Gando S, Matsuda N, et al: Pharmacokinetics of teicoplanin in critically ill patients undergoing continuous hemodiafiltration. Intensive Care Med. 29:2094-2095, 2003


図1 テイコプラニンの急速ローディング松田法
TEICの投与初日は1回量を10 mg/kgとし,8時間ごとに3~4回投与する。改善しにくい極度の低アルブミン血症(<2 g/dL)がある場合は3回ローディング,それ以外は,8時間毎に10 mg/kgの4回ローディングがよい。トラフ値を計測するのは,ローディングの3回あるいは4回目のhigh dose 投与後の12時間後であり,ここでトラフ値が17μg/mLレベルであれば,投与4~5回目からはTEIC投与量を4-6 mg/kgに減じ,1日1回投与量を開始する。トラフ値が24μg/mLレベルであれば,次の12時間後からTEIC投与量を4-6 mg/kgに減じ,1日1回投与量を開始する。腎機能低下時は,図2を参照。


<img src=http://image4.photohighway.co.jp/Z061/460/photos/middle/40833331qz1.jpg>
図2 腎機能を考えたテイコプラニンの使い方
ジャンル:
ウェブログ
キーワード
黄色ブドウ球菌 医療従事者 プライミング 急性腎不全 プロテアーゼ 集中治療室 消失半減期 トランスフェラーゼ 北海道大学 日和見感染
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加 mixiチェック
« J. Clin. Invest. 114:1531-1537... | トップ | 業績録 X マスコミなど »

あわせて読む