紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【るろうに剣心】緋村剣心の物語を追う[京都]

2010-06-03 23:23:23 | ○○の物語を追う
前回からの続き


  京都へ向かう

志々雄真実に会うため、神谷道場を離れ京都へ向かう道中、
剣心は一人の少女と出会う。



少女の名は、巻町操(まきまちみさお)。
操は山中で追い剥ぎをしているところであった。
どうやら人探しの旅の途中、路銀が尽きて追い剥ぎをしていたようであったが、
なんと操の探し人は、剣心と因縁浅からぬ四乃森蒼紫と隠密御庭番衆の面々であった。
しかし、御庭番衆は蒼紫を除いて全滅しており、蒼紫自身は剣心を殺すことを
宣言し、どこかへ消えてしまったままであった。
剣心は操に御庭番衆終焉のことを話すのを忍びないと判断し、
だんまりを決め込むことにした。
操は、剣心が蒼紫のことを何か知っていると感じ、
剣心の京都への旅路に付きまとう。
こうして、二人の奇妙な京都道中が始まったのであった。


  逆刃刀・真打



途中、志々雄一派の占領する「新月村」にて、
大久保卿を暗殺した瀬田宗次郎と対決する剣心。
この戦闘において、鳥羽伏見の戦い以降、剣心の愛刀であり続けた
新井赤空作「逆刃刀」は真っ二つに折れてしまう。

逆刃刀以外の刀を持つことは不殺の誓いを破るも同然。
逆刃刀は「流浪人」としての剣心の象徴なのだ。
その逆刃刀が、今や無残な姿をさらしている。
折れた逆刃刀を鞘に収め、剣心はとりあえずも京都へ向かう。


剣心と操は新月村を抜け、京都へと辿り着く。
剣心にとっては、人斬り抜刀斎として血の雨を降らせた町であり、
最愛の妻・巴を失った地でもある。
剣心としては心穏やかでなかっただろう。
また、同じ頃、神谷道場から剣心を追ってきた薫と弥彦、
道中、修行しながら突っ走ってきた左之助、
剣心が京都に向かったことを知り、再戦を果たすため追ってきた蒼紫
も京都へ到着していた。

操の生家、旅館「葵屋」を訪れた剣心は、
操の祖父であり、元・隠密御庭番衆の「翁(おきな)」こと柏崎念至と知遇を得る。
翁は剣心を一目で「人斬り抜刀斎」と見抜き、剣心が京都を訪れた目的が
志々雄真実であることをも知っていた。
剣心は、翁の情報収集能力を見込んで、二人の人物の探索を依頼する。
逆刃刀を造った「新井赤空(あらいしゃっくう)」
飛天御剣流の師「比古清十郎(ひこせいじゅうろう)」
この二人が、剣心には必要であった。


新井赤空は、すでに故人であった。
息子の新井青空(せいくう)は、明治の世に刀を打つことをやめており、
剣心の逆刃刀復活は絶望的と思われた。
しかし、新井赤空最後の一振りと呼ばれる御神刀が白山神社に安置されていた。



それは、かつて剣心が託された逆刃刀の「真打」となる刀であった。
刀身には赤空の辞世の句が残されていた。

 我を斬り 刃鍛えて 幾星霜 子に恨まれんとも 孫の世の為

幕末、殺人刀を造り続けてきた赤空の深い悔恨と、
この刀を振るう人間が真に平和な世を築いてほしいという願いが
込められた句であった。
ここに、剣心の手に逆刃刀が戻ってきたのであった。


  飛天御剣流奥義

もう一人の探し人「比古清十郎」は、陶芸界の注目の新人
「新津覚之進」として京の山で陶器を焼く日々を送っていた。



かつて、師の忠告を聞かずに喧嘩別れをして幕末の動乱に身を投じ、
人斬りとして誤った道を歩んでしまった剣心としては、
なかなか師に顔を合わせ辛かったはずであるが、そんなことに
こだわっているわけにはいかなかった。
十年前にやり残した奥義の伝授を、今、師に願い出る。
が、当然都合よく話しを聞いてくれるはずもなく、
あっさりと断られる剣心。

そこへ、剣心を東京から追ってきた薫と弥彦が現われた。
驚く剣心だったが、心のどこかでほっとするものがあった。
剣心が薫に抱く想いは、かつて巴に抱いたものと似たものであるかもしれない。
薫と弥彦から、剣心が流浪人として人々を助けてまわっているという話を
聞いた比古は、剣心に奥義を伝授することを決意する。



飛天御剣流奥義「天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)」。
神速を超える、超神速の抜刀術である。
あまたの人の命を奪った剣心は、その悔恨と罪悪感のあまり
自分の命を軽く考えようとしてしまっており、それが剣心の
真の強さを抑圧していた。それを克服させるために、
比古は剣心に「死」を実感させる一撃を放つ。
剣心は生と死のはざまで、「生きようとする意志」を見出し、
奥義「天翔龍閃」を会得するのであった。


  激闘

奥義を会得した剣心は、左之助、斉藤一と共に志々雄のアジトへ乗り込む。
そこで待っていたのは、かつて剣心と死闘を繰り広げた
元隠密御庭番衆御頭・四乃森蒼紫であった。



蒼紫は、死んでいった御庭番衆の面々の墓前に最強という華を添えるため、
剣心に再度決戦を挑む。
しかし、剣心は蒼紫が「御庭番衆たちのため」に剣を振るっているのではなく
「御庭番衆たちのせい」にして剣を振るっていると指摘。蒼紫を徹底的に批判する。
この批判は効いた。
蒼紫は自身の非を認め、それでも剣心との決着をつけなければ前に進めないとする。
剣心は、蒼紫と決着をつけることに異存はなかった。
そして。



飛天御剣流奥義・天翔龍閃は紙一重の差で蒼紫に直撃。蒼紫は敗北した。
しかし、負けた蒼紫は不思議と晴れた気分だった。
葵屋では、操が蒼紫の帰りを待ちわびている。




無間の間では、新月村で剣心の逆刃刀を折った男
"天剣の宗次郎"こと瀬田宗次郎が待ち構えていた。
宗次郎の高速移動術「縮地」と、感情の欠落による先読み不可に
てこずる剣心であったが、最後の抜刀術の打ち合いにおいて、
宗次郎の瞬天殺を破り、天翔龍閃により勝利を収めることができた。



志々雄を盲目的に信じ、付き従ってきた宗次郎は、剣心との敗北で
自身を見つめなおす機会を得た。
志々雄のもとを離れ、宗次郎は自らの足で歩き始める。


  志々雄真実



アジト最深部。
ついに、志々雄真実と対峙する剣心。
乱世を望み、太平の明治に再び動乱を起こそうとする志々雄真実と、
動乱の世での人斬りの罪を悔い、新時代に生きる人々の幸せのために
戦う緋村剣心の死闘が今、始まろうとしていた。

飛天御剣流奥義・天翔龍閃の秘密は、抜刀から刹那の拍子でずらして
左足で踏み込む最後の一歩にあった。
その「左足」に注意を払っていれば、天翔龍閃の発動を察知できる。
これは、奥義を喰らった宗次郎が解き明かした秘密であった。
その秘密を知った志々雄は、剣心の奥義発動の瞬間を察知。
天翔龍閃の一撃を見事防御する。

しかし。

飛天御剣流の抜刀術はすべて、隙を生じぬ二段構えである。
剣心の放った初撃により、前方の空気がはじかれ、時間差を生じて
急速に元に戻ろうとする。吹き荒れる風に身体の自由を奪われた志々雄に
天翔龍閃の二撃目が炸裂した。

志々雄真実は敗れた。
そして、全身火傷の後遺症による体温調節機能の暴走により、
志々雄真実は業火に包まれる。



志々雄は高笑いとともに、業火の中へ消えた。
時代は志々雄に味方しなかった。
明治の世にこれ以上の動乱は起こらないようである。
おそらく地獄へ落ちた志々雄真実は、閻魔相手に地獄の国盗りでも
始めるのであろう。


  ただいま

志々雄との戦いのあと、剣心は十年ぶりに巴の墓を訪れた。
この地は、剣心がずっと避けてきた土地であった。
東京・神谷道場での生活。あらゆる人々との出会い。志々雄一派との戦い。
それらを経て、剣心はようやく巴の墓に花を添える決心が着いたのだった。

「また来年の盆に来るよ」

剣心は、巴の墓に向けてそうつぶやく。
剣心の京都での旅は終わった。



東京、神谷道場。
流浪人として流れる剣心が、はじめて歩みを止めた場所。
剣心は、またこの場所に帰ってきたのだった。

「お帰りなさい」

という薫に、剣心は言う。

「ただいまでござる」

と。


 次回へつづく

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-09-04 04:14:15
原作の操の服が赤だったのに驚き

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