紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【るろうに剣心】弥彦の物語を追う[第四幕]

2011-04-10 13:13:31 | ○○の物語を追う
前回からの続き


  闘いのあと



乙和瓢湖との闘いのあと気絶していた弥彦が目を覚ましたとき、
待っていたのは目をそむけたくなる現実であった。
弥彦の師である神谷薫は、剣心への復讐に燃える雪代縁の凶刃によって
命を落としていたのだった。



神谷薫(享年十七)の葬式には大勢の人が集まり涙を流した。
弥彦は薫の死にざまは目撃しておらず、見たのは清められたあとの
白装束の薫で、見たときにはまるで別人のように感じた。

薫を殺した男・雪代縁は同志・外印と共に逃亡。
警察は捕縛した他の同志からアジトの場所を割り出し急襲したが、
すでにもぬけのカラであった。

緋村剣心は一連の騒動の中で、忽然と姿を消しており、
薫の葬式にもついぞ現れなかった・・・。


  落人群の剣心



皆が悲しみに暮れるなか、ついに剣心の居場所が判明した。
剣心は、人生を捨てた者たちが身を寄せ合う最終領域「落人群」に
身を落としていたのだった。
剣心の瞳は力なく虚空を見つめ、薫の弔い合戦に臨もうとする
左之助の激しい言葉にもまるで耳をかさず、

「もういい・・・。もう疲れた・・・」

とだけつぶやいた。
そこにいたのは、皆が知っている人々のために逆刃刀をふるう剣心ではなく、
ただ人生に絶望し、生きる気力をなくした落人そのものであった。

誰も、その後は言葉一つ口にできず、その日はめいめいばらばらに
家路に別れた。



同日、京都から巻町操と蒼紫が到着した。
生前の薫に頼まれて雪代巴の日記帳を持ってきたのだが、一足遅かった。
が、操は消沈する弥彦を叱咤する。

「弱音を吐くのは後にしろ!あんたには今やるコトがあるでしょうが!」


操たちが持ってきた日記帳には、雪代縁の姉・巴の本当の気持ちが綴られている。
これを雪代縁に突きつけて、自分のやったことの無意味さを理解させ、
薫の墓前で謝罪させる、というのが操の言い分であった。

「それくらいしないと薫さんだって絶対浮かばれない
 そして、これは薫さんの一番弟子で緋村がコレと見込んだあんたの役目!」


操の言葉に励まされ、弥彦は気力がよみがえってくるのを感じた。
操の言う通り、雪代縁をこのまま放っておいて済ませない!

剣心が絶望し、左之助はそんな剣心に失望し東京を去ろうとするなか、
弥彦は雪代縁捜索に動き出す。



弥彦は、剣心のもとを去っていく左之助の背中に向かって叫ぶ。

「まだ終わりなんかじゃねェ・・・いや!俺が絶対このままでは終わらせねェ!!」


そして、剣心。



弥彦は剣心に向かって告げる。

「俺はこれから雪代縁を探す。そして、必ず薫を殺した罪を償わせる。
 でも、その先は正直わからない。ただ、もうくじけない。
 絶対に迷ったりもしない。決して振り返らずひたすら前だけ見つめていこうと思ってる。
 そして以前に剣心が言った様に神谷活心流で強くなって、剣心がこれまで
 そうしてきたように自分の瞳に映る弱い人や苦しんでる人たちのために剣を振るう」


弥彦は決して、剣心に失望したりはしなかった。
かつて、京都の葵屋で剣心を最後まで信じぬいたように、このような
絶望的状況においてもなお、剣心を信じることをやめなかった。

「もう、ここには来ない」

「神谷道場で、待ってるぜ」


それだけ告げて、弥彦は落人群を後にする。


  希望



蒼紫がとんでもない提案を持ち出した。
今夜、神谷薫の墓を暴くのだという。

蒼紫の話によると、薫の死体が精巧な人形である可能性があるそうだ。
薫の死亡の診断は医者である高荷恵が下したのだが、あれは決して人形
などではなかったと強調する。
あくまで可能性。常識で考えれば零に近い。
けど、決して零じゃあない・・・。



弥彦は蒼紫の見出した可能性に希望をみた。
そして、――



蒼紫の睨んだ通り、薫の死体は精巧な人形であった。
雪代縁が何故このような手の込んだ真似をしたのか不明だが、
とにかく、薫は生きているのだ!
一同の胸を希望の光が明るく照らした。

あとは、剣心が自分の力で立ち上がったときすぐさま動けるよう、
薫の居場所を突き止めることが自分の今すべきことである。
弥彦はすぐに動いた。



警視庁では、雪代縁の居場所の捜索が続いているはずである。
弥彦は、捜索の全権をまかされている斎藤一から情報を引き出すことに成功した。



今はとにかく、まず動く。それがいずれ必ず活路を開くことに繋がるはずである。
弥彦にはそれが自然とわかっていた。
蒼紫は弥彦のそういった感覚に触れ、剣心が弥彦を見込んだことに対して理解を示すのだった。


  巨大な敵



しかし、雪代縁の居場所が見つからないまま、ひとつの騒動が起きる。
神谷道場決戦の際、剣心と斎藤に倒され捕縛された「鯨波兵庫」が留置所を脱走。
街中で暴れているという。



これを知った弥彦はすぐさま現場に急行しようとする。
「万が一もしものことがあっても頼れる人は誰もいない」とあわてて止める燕。
弥彦はこれに対して、

「誰もいないからこそせめて、ここは俺一人だけでも闘わねェとな」


と死地に赴くのだった。
剣心の志を継ぐと決めた弥彦にとって、ここで逃亡する選択肢はない。
走って行く弥彦の背中を見送った燕は言いようのない不安を抱き、
落人群の剣心のもとへ助けを呼びに急ぐのだった。



剣心への恨みを狂気に変えた鯨波兵庫はとにかく強かった。
無い右腕に銃器を仕込み、東京の町を火の海に変えていた。
弥彦は怖気づく警官隊にハッパをかけ、勇気を振り絞って巨大な敵に挑む。
その存在感はまるで緋村剣心のごとくあり、狂気に走った鯨波も
弥彦に剣心の存在を感じるほどであった。



自分より遥かに巨大な敵と対峙する弥彦は、かつて見た遥か先を走る
剣心の背中を思い出していた。
あの遠い背中に追いつくため、そしていつか追い越すため・・・

そのための道は前にしか 拓かれないんだ!


瞬間、弥彦の眼前を舞っていた木の葉が弾けたのを、警官の一人は目撃した。
それはまるで、一流の剣客だけが発することが出来るという、「剣気」を
まるで弥彦が発しているようであった。


  復活

弥彦が鯨波と奮戦するのと時を同じくして、落人群では燕が剣心のもとを訪れていた。
弥彦を助けてくれと剣心にせがむ燕の声は相変わらず剣心に届いていなかった
かのように見えたが、その「助けて」という声は少しずつ剣心の内側に浸透していた。

「薫の仇討ち」という声は剣心の心にはまったく届かなかったが、
助けを求める声は少しずつだがちゃんと届いていたのである。
なぜなら、「目に映る人々のために逆刃刀を振るう」ことが剣心の真実だから。
どんなに絶望的な状況におかれても、剣心は助けを求める声に応じて必ず立ち上がる。

そして――



満身創痍の弥彦のもと、復活した緋村剣心が現れたのである。
他の誰でもない、弥彦は剣心の復活を信じて疑わずに闘い続けていた。
京都の葵屋のときのように、剣心を最後まで信じぬいたのは弥彦だった。

剣心の一撃を受け、右腕の銃器を切断され、鯨波は正気を取り戻す。
戊辰戦争の折、剣心に右腕を奪われるも命までは奪われなかった鯨波。
それを、武人としての死に場所を奪われたとして剣心への恨みにかえてきた。
弥彦はそんな鯨波に喝を入れる。



「侍が侍を恨む道理なんてねェはず!誇りがどーの時代がどーの…
 侍が口にしてわめいてもそんなの空しく響くだけ
 侍なら拾った命で新しい時代にこれから何を為すか考えろ!
 剣心はずっとずっと人を守って闘ってきた!
 お前は失くした右手に弾を仕込んで暴れただけで、残った左手でいったい何をしてきた!」


鯨波は弥彦の言葉を黙って受け止め、両目から涙を流す。

「自分の負けだ。士族・明神弥彦の言う通り、侍が侍を恨む道理無し…迷惑をかけた」


その日、鯨波兵庫は再捕縛された。


  決着



剣心も復活し、左之助も東京へ帰って来た。
あとは警察がつかんだ雪代縁の新アジトへ乗り込み、薫を助け出すのみ。
弥彦も鯨波との闘いで受けた傷が完治したわけではなかったが、
剣心の力となるべく、アジトへ共に乗り込むことになる。

今度は、ただついて行くだけでなく、防御としての要員でもなく、
剣心と肩を並べる者として、戦場に赴く。
弥彦はここに来てようやく、剣心の背中に追いつくことができたのである。



上陸した雪代縁の新アジトでは、左之助・斎藤・蒼紫と共に
縁の組織する中国マフィアのNo.2「呉黒星」が放った四星のひとり
「玄武」を打ち倒した。
実力者ではあったが、すでに十本刀や六人の同志との死闘を経験してきた
弥彦にとって、苦戦する相手ではなかった。



そして、剣心は雪代縁との闘いに決着を着ける。
縁の作り出した生き地獄の中、あらためて不殺の信念を見出した剣心に、
もう迷いはなかった。

闘いは終わった・・・。


  旅立ち

月日は流れる。

斎藤一は剣心との決着を着けぬままいずこかに去り、
四乃森蒼紫・巻町操も京都へと帰って行った。
高荷恵も故郷・会津へ帰り、
相楽左之助は、日本を出て世界へと旅立っていく。

時代が移り変わる中、人々だけが変わらずそのままということはあり得ない。



別れ際、左之助は弥彦に「悪一文字を背負ってみるか?」と勧めた。
弥彦に期待しているのは、剣心だけではなかったようだ。



そして、さらに月日は流れ、明治十五年!




弥彦は、神谷活心流道場師範代として着実に成長していた。
ライバルだった塚山由太郎も独逸から帰国し、神谷道場二人の師範代として
道場を盛りたてているようだ。



そして、弥彦の十五歳の誕生日。
昔の武士でいう、「元服」の日である。
弥彦は剣心に呼び出されていた。
弥彦の背には左之助から受け継いだ「悪一文字」が見える。



剣心との一本勝負。
剣心は、弥彦が一人前になったかどうか試そうとしていた。
弥彦にとっての最強の剣客が今、目の前にいる。
臆しそうになる弥彦に対して、剣心が言葉をかける。

「お前が剣の道を志してからこれまで…お前の人生に顕れた全ての闘いを思い出せ
 その目で見た闘い…その耳で聞いた闘い… そして自らの腕で繰り広げた闘い…
 
 それら全ての闘いの中でお前が感じた全てを
 渾身の一撃に込めて撃てばそれでいい――」


弥彦はこの言葉通り、剣心に向けて渾身の一撃を放つのだった。



そして、剣心から不殺の信念の象徴である「逆刃刀」が弥彦へと託される。
剣心は、弥彦の渾身の一撃から魂を感じて、これを弥彦に託すことを
決めたのである。



「いつか、拙者を越えるでござるよ」


剣心の言葉を背に受け、弥彦は旅立っていく。
いつか夢見た凄い男達の背中に、いつの間にか追いついていた弥彦。
そして、今度はそれを追い越すため、「逆刃刀」を手に、「悪一文字」を背に走りだす!


  弥彦の逆刃刀



逆刃刀を受け継いだ弥彦の活躍を少し垣間見ることができる。



そこには剣心の信念を受け継ぎ、目に映る人々のため逆刃刀をふるう弥彦の姿があった。



明治の東京を舞台に、逆刃刀を手にした少年の活躍譚がはじまる――。

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7 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-11-19 14:44:33
結構嫌っている人も多い印象の弥彦だけど、当時少年だった自分は子供ながら剣心たちに混じって命懸けの戦いに挑む弥彦に勇気づけられていた。
noozomlove3@gmail.com (123vip หวยออนไลน์)
2023-11-01 13:23:21
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