紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【ダイの大冒険】アバンの物語を追う[海の章]

2010-07-12 23:27:21 | ○○の物語を追う
前回からの続き


  アバンの書

魔王ハドラーを倒したアバンは、カール王国へ凱旋。
平和が戻るまでは、とフローラに預けていた伊達メガネを受け取ると、
平和になった世界を味わう暇なく、一冊の書物の執筆に取り掛かった。



後に「アバンの書」と呼ばれる手書きの書物である。
アバンが習得した武芸、呪文、精神のすべてを記したもので、
地の章(武芸)、海の章(呪文)、空の章(精神)の三章からなる。
アバンは、ハドラーのような魔王が再度出現する時にそなえ、
後世の者たちのためにこの書を著したのだった。


  憎しみの少年ヒュンケル

さらに、アバンは書物を記すだけでなく、実際に弟子をとって
自分の志を継ぐ者の育成を始めるのである。
アバンの弟子は、人々から「アバンの使徒」と呼ばれることになる。



アバンの一番弟子は、「ヒュンケル」という少年だった。
ヒュンケルは、魔物に育てられた少年だった。
親を亡くし泣いていた赤子を、地獄の騎士「バルトス」が拾い、
育てられたのが、ヒュンケルであった。

アバンはハドラーの居城に攻め込んだ際、このバルトスと刃を交えていた。
アバンはバルトスに勝利したが、トドメは刺さなかった。
バルトスの首に子供の手作りと思しきアクセサリーを見たからだ。
バルトスはアバンの武と精神に感銘を受け、自分の息子・ヒュンケルを
弟子としてくれるように依頼する。
アバンは快くそれを引き受けた。
バルトスはこの後、ハドラーによって処分されてしまうが、
ヒュンケルは勇者アバンが父・バルトスを殺したのだと誤解した。

ヒュンケルはアバンを憎んだまま、弟子としてアバンから武芸を学んできたが
卒業の際、ついにアバンに襲い掛かる。
アバンは反射的にヒュンケルを撃退してしまい、
ヒュンケルは急流に転落して、そのまま行方不明になってしまった。

アバンにとっての最初の弟子は、不幸な卒業を迎えてしまった。
結局、ヒュンケルが見つかることはなかった。


  レイラ・ロカの娘マァム

アバンの二番目の弟子となったのは、アバンのかつての仲間
戦士ロカと僧侶レイラとの間に宿った娘「マァム」であった。
不幸なことに、戦士ロカは平和になった世界をあまり享受できないままに
亡くなってしまっていた。
アバンは亡き親友の娘を大切に教えた。



マァムは父の戦士の血と母の僧侶の血を引き、
武芸にも回復呪文にもその才を発揮した。
マァム卒業の際、アバンは自作のアイテムをマァムに贈る。
それは「魔弾銃(マダンガン)」という銃であった。
弾丸に呪文を込めて発射できる高度な魔法のアイテムである。
アバンは、こうした技術にも長じており、まさに天才であった。


  臆病な少年ポップ

アバンの三番目の弟子となったのは、魔法使い志望の少年「ポップ」だった。



アバンが立ち寄ったランカークスという村で、アバンに惚れ込んで
家出同然についてきた少年であった。
ポップはヒュンケルのような闘志もなく、
マァムのように伝説の勇者パーティの血を引いているわけでもない
普通の少年だった。
むしろ、人より多少臆病なところや怠惰なところがあった。
しかし、アバンの丁寧な教えで、この年齢の魔法使いにしては
高度な呪文を身につけるにまで成長をとげた。


  ハドラーの復活



ポップを弟子にしてからほどなくして、
魔王ハドラー復活の報が全世界を駆け巡った。
勇者アバンがハドラーを倒した日から、実に15年ごしの復活であった。
アバンは、ハドラーの復活を予期していた。
アバンが弟子をとり育てていたのも、この日に備えてのことと言っても過言ではない。

そして、アバンはパプニカ王国の王家からひとつの依頼を受けていた。
南海の孤島・デルムリン島に暮らす「ダイ」という少年を
勇者として育てて欲しいと。
このダイという少年こそ、未来の勇者であると。


  小さな勇者ダイ



ポップとともにデルムリン島に上陸したアバンは、さっそくダイを弟子とする。
アバンにとって四人目の弟子である。
すでに魔王が復活しているため、ダイへの修行はスペシャルハードコースで
急ピッチで行われた。
ダイの勇者としての素質はすばらしく、たった数日で驚くほどの成長をみせた。
この分で行くと、一週間で卒業の証を渡せるのでは、と思えるほどであった。
しかし…。


  ハドラー再戦

ダイへの修行は、思いがけない形で打ち切られた。
なんと、魔王ハドラーがアバンのもとへ直接乗り込んできたのである。



15年ぶりにあいまみえる両者。
ハドラーの力は、あきらかに15年前の時より増していた。
その強大な力にどんどん追い詰められるアバン。
しかも、ハドラーは自身の復活について驚愕の事実を口にした。
なんと、ハドラーは「大魔王バーン」なる者の魔力により
復活したのだという。
ハドラーよりもさらに上級の魔王が存在することに衝撃を受けるアバンだったが、
今は弟子たちを守り、この窮地を脱することが重要であった。
アバンはある覚悟を決める。



ダイとポップに鋼鉄変化呪文・アストロンをかけ、
卒業の証である「アバンのしるし」を渡す。
まだ修行の途中なので、仮免のような形となるが。
二人は卒業の証を渡すアバンに、決死の覚悟を感じ取る。
アバンは二人に別れを告げた。



自己犠牲呪文・メガンテ。
アバンは、自分の命とひきかえにハドラーを倒し、二人を救ったのだった。
自分の命はもはやここまで。
大魔王バーンなる者を倒すのは、きっと自分の弟子たち。
とりわけ、ダイの勇者としての素質を見抜いていたアバンには、
いつの日かダイが立派な勇者となり、魔王を倒す未来を見ていたに違いない。

いずれにせよ、勇者アバンの冒険はここに終わった。

…かに、見えた。


 次回へ続く


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