風そよぐ部屋

ウォーキングと映画の無味感想ノート

映画/世界一キライなあなたに

2017年02月27日 | 映画
 
英語題は、「Me before you」、あなたと出会う前の私でしょうか。日本での題名は、奇を衒ってでしょうが最悪です。
これがアメリカ映画でなく、フランス映画だったらきっともっとコメディタッチで秀作になったと思いますが、
やっぱりアメリカ映画って感じの普通作でした。でも、言葉はイギリス英語で耳触りが良いです。
この映画は、“安楽死”と言うシリアスで非常にデリケートな問題を含んでいます。それについては最後に触れます。
ストリーは単純で、大富豪の男が交通事故で車椅子生活となり、その世話に訪れた女性とのラブロマンスのお話です。
しかし、彼は、そんじょそこらの普通の金持ちではありません。大きな城を持ち、旅にはジェット機を丸々チャーターし、
専属の看護師を雇うと言う桁外れの金持ちで、イギリスのおそらく貴族の家系のイケメンの男性です。

他方、彼女は労働者階級の娘で、ウエートレスの仕事を首となり、父親も失業しています。
しかも、彼女はおっぱいは大きいのですが、背も低く小太りで美人とはとても言えない風貌です。
その眉は、日本のお笑い芸人「シングルポケット」の斎藤慎二のように上下に動く八の字眉毛です。

おしゃれが好きとは言うのですがその服装は苦笑ものです。

傑作は、靴です。
ルーは、はじめ世をすねていて半年後には安楽死を願っているウィルがキライだったのですが、
恋人を捨て、彼に乗り移り、彼女のトリコとなった彼は彼女を愛するが故に「生」より「死」を選ぶという単純なお話です。
ルーが労働者階級(貧乏)で美人でない、ウィルは貴族の大富豪で美男子という「ミスマッチ」が何ともいやらしいです。
観客の女性が、ルーに感情導入をするのがとてもたやすい仕組みが見え見えなのです。
ルーが美人でスタイルも良くしかも人柄も良ければ、観客には遠い存在ですから…。
それ以上にウィルがルー同様貧乏人で醜男だったら、ルーはウィルを決して好きにはなりません。
私は、途中からこの映画を単純なラブストーリーではなく、ルーは実は深謀遠慮を駆使して、彼をまんまと丸め込み、
大金を手に入れるサスペンスコメディ
映画として見ました。
事実、彼女の父親は、ウィルの家の庭師として雇われ、彼は安楽死し、遺言で莫大な遺産を手に入れるのです。
映画の最後は、パリ・ロワイアル辺りの公園のプラタナスの葉が落ちて、ウィルの死を暗示するシーンです。
ルーは、彼から贈られたミツバチ柄のタイツをはいてカフェの前にたたずみます。
私には、彼女は、「我が意を得たり」とほくそ笑むように見えました。

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さて、この映画は冒頭に触れましたが、安楽死の重いテーマを投げかけています。
現在、安楽死が認められている国は、スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダそしてアメリカのワシントン州などの
いくつかの州、だそうです。
特筆すべきは、スイスでは1942年に認められたことです。
スイスには、ディグニタス(DIGNITAS)と言う自殺を幇助する団体があるそうです。
安楽死を求めるツアーは70万円ほどだそうで、2008~2012年の5年間で611人の人が亡くなったと発表されています。
門戸が外国人にも開放されているのはスイスだけ、と言われています。
この団体・システムについては様々な疑惑があり、激しい賛否両論があると言うことです。
 折しも、日本弁護士連合会は、2月22日、「旧優生保護法下において実施された優生思想に基づく優生手術及び
人工妊娠中絶に対する補償等の適切な措置を求める意見書」を発表しました。
その趣旨は、
1 国は、旧優生保護法下において実施された優生思想に基づく優生手術及び人工妊娠中絶が、
対象者の自己決定権及びリプロダクティブ・ヘルス/ライツを侵害し、遺伝性疾患、ハンセン病、
精神障がい等を理由とする差別であったことを認め、被害者に対する謝罪、補償等の適切な措置を速やかに
実施すべきである。
2 国は、旧優生保護法下において実施された優生思想に基づく優生手術及び人工妊娠中絶に関連する資料を保全し、
これら優生手術及び人工妊娠中絶に関する実態調査を速やかに行うべきである。
です。
 その意見書の全文はここをクリックです。
ナチスの断種法はことに有名ですが、アメリカでもかなり強烈に行われたそうです。
日本でも、多くのハンセン病患者や「精神障害」者の多くが強制断種させられましたし、ろう者などの「身体障害者」も
断種・不妊手術を強制されたと聞きます。
昨今、様々な出生前診断が行われています。これについても様々な考えがあります。
これらの問題は、私には難し過ぎ、到底私の手に負えるものではありません。
倫理だけの問題にしてはいけないと言う常識以上を語ることは私は出来ません。
生まれてくるすべての人が普通に均しく心穏やかに生活出来る社会はいつ来るのでしょうか。
さて、高齢者である私が考えているのは自分の死の迎え方です。
私のわがままは、私が更に高齢になって生きる気力が失せた時、私は安楽死・尊厳死を選びたいことです。
今はそう思っていても、その時になったら、一刻でも長く生きたい、などと思うでしょうけど…。
日本で安楽死が認められても、自分が高齢になって痴呆が進めば、それを意思表示できません。
従って、私は「医学的延命措置を拒否する意思証明書」を含む遺言書を作成しています。
古代ローマは人類まれに見る文明を築きましたが、医術・医学は発達して居なかったので、病気になると治癒は難しく、
ローマの貴族階級の一部は、高齢による死を悟った時、「断食」という苛烈な方法をとった人も居たと聞きます。
そんな死生観も私が古代ローマにあこがれる理由の一つですが、しかし、それはまさに「即身仏」そのもの、
私にはそんな意志力が在るはずがありません。
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さて、映画に戻って、「世界一キライなあなたに」の映画を見ていて、私は、「ジョニーは戦場に行った」のことが思い出されました。
私は、私のブログの「トランボ」で、次のように書きました。
第一次世界大戦に出征したジョーは、目(視覚)、鼻(嗅覚)、口(言葉)、耳(聴覚)を失い、壊疽した両脚も切断されます。
彼に残されたのは、皮膚感覚と意識そしてわずかに動かせる首と頭だけでした。
彼はそれらを駆使して必死に生き、訴えようとします。
医師や軍関係者らは、彼には意識はなく、もはや人ではない生物として横たわっているだけだと思うものの、
「人間の不思議さ」を調べる格好の臨床試験・実験対象と思い、彼に鎮静剤と人工栄養を注射し、生かし続け、観察します。
彼は、小さい頃遊んだSOSのモールス信号を思い出し、必死に頭を動かして発信し続けます。
ある日、看護婦がそれを感知し、医師に伝えます。
「何が望みか」との問いに、彼は、「自分を公衆の前に出し、見物料金を医療費に充ててくれ」と答えます。
「出来ない」との返事に、「では、殺してくれ」、「では、殺してくれ」……と訴え続けるところで映画は終わります。
それは、ナチスの生体実験、そして最近のトランプのヘイトと極端なナショナリズムを私に惹起させ、私は恐怖に襲われました。
 「世界一キライなあなたに」は、凡作ですが、いろんなことを考えさせられた映画ではありました。
しかし、私は、ちょっと神経質、・偏屈・屁理屈・大袈裟になりすぎましたでしょうか。  【2月20日】


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