And This Is Not Elf Land

BroadwayのJERSEY BOYSは1月15日をもって終了しました。
Londonは3月26日までです。

ステージからスクリーンへ(5)

2014-10-01 | JERSEY BOYS(映画)
映画が素晴らしいのは、全て「監督が素晴らしいから」なのか?


先週末公開の映画「ジャージー・ボーイズ」上映館数が143、上映していない地方も数多いという状況で、批評家の評価も観客の評価も高く、口コミでまだまだ人気が続きそうな気配です。このブログのアクセス数も凄いことになっていまして(笑)今になって、過去に書いた「いいかげんな記事」(汗)の書き直しをしています。

ああ、こんな日が来るなんて。



さて…「ジャージー・ボーイズ」は日本では上演されたことのないミュージカルで、出演俳優も舞台出身者が多く、映画俳優としては無名。モデルとなっているフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズも同時代のビートルズやビーチボーイズなどと比べると、日本ではそんなにメジャーではない。映画の「売り」というのはクリント・イーストウッド監督の作品であるということだけ…。この現状では、配給会社は「クリント・イーストウッド作品である」ということを前面に出して宣伝するのは当然といえば当然。

このあたりは、最近映画化されたミュージカル「レ・ミゼラブル」とは違うところです。「レ・ミゼラブル」、たくさんの人が観られましたが、監督の名前を挙げられる人はどれだけいるでしょう(笑)でも、作品の知名度が高いので、それでよかったわけですね。事実、今回の「ジャージー・ボーイズ」は、イーストウッド監督作品だからという理由でご覧になる方も少なくないでしょうが、それはそれで、良いことだと思います。

私自身、実は、特別に映画が好きなわけではありません。面白そうだと思ったものはどんなに遠くで上映していても見に行きますが、それでも舞台や音楽のほうが好きで、映画はその次です。なので、映画やその周辺的なことについてはそんなに詳しいわけではありません。イーストウッド作品は「ミリオン・ダラー・ベイビー」「Jエドガー」を観ていますが二作品とも、とても好きな作品です。好きな映画は?と尋ねられればこの二つは確実に名前を挙げるでしょう。



「ジャージー・ボーイズ」の話に戻りますが…公開を待ちわびていた映画の絶賛レビューを目にするのはこの上ない喜びであり、興奮でありました…特に、本国アメリカでは冷たい反応だっただけに。

しかし、だんだん腑に落ちなくなってきました…なぜなら、イーストウッドのファンに言わせれば、結局「人間描写にすぐれているのも」「音楽の使い方がうまい」のも「面白い演出」も「セリフが面白い」のも、すべて「さすが、イーストウッドのなせるわざ」とくる。私から見れば「元の舞台がそうなのだから、映画も当然そうなった」のであって…「ちょっと違うんじゃない?」という思いがだんだん膨れ上がって、不快感さえ覚えるようになりました。

この映画はあくまでもミュージカルの映画化で、映画の脚本もミュージカルと同じくマーシャル・ブリックマンとリック・エリスによるものです。また、映画のエンドクレジットには「デス・マカナフ演出による舞台ミュージカルに基づく」とはっきり書かれています。映画の台詞の8割ぐらいは舞台と同じですし、演出の部分でも、明らかに舞台のものを取り入れていると思われるところが数多くあります。あくまでも、イーストウッド監督はそれを基に、スクリーンの上でもっとも映える方法をとってくれたのです。

ステージからスクリーンへ(1)

映画であれ舞台作品であれ、作品にはそれぞれの独立性がありますから、「原作を知らない人は批評すべきでない」とか、そういうことを言いたいわけではありません。しかし、そこまで「監督の腕」を讃えるのであれば、やはり元となった舞台を観たうえで、それに対して監督がどう働いたのか、十分に考察したうえで讃えるのでないと、あんまり説得力ないと思いますが。


例えば「キネマ旬報」の伊藤俊治氏の批評では

「フォー・シーズンズに材をとったジュークボックス・ミュージカルのドキュメンタリータッチの映画化」

とありますが、もともとが「ドキュメンタリータッチの舞台ミュージカル」なのです。映画化に際して「ドキュメンタリータッチ」になったわけではありません。このあたりは、ちょっと調べればわかることです。


また同誌の別の批評では野崎歓氏が

「おそらく演劇版に同様の工夫がすでにあったのかもしれない。だがこの劇中独白形式、映画でこそかくもドキッとさせ、かつ説得力をもつものではないか。」

氏にとっては、映画で見られる独白形式というものが、演劇版にもあったのかも「知れない」という推察の上でしかないにもかかわらず、「映画でこそ説得力を持つ」と言い切っている。こういうのって通用するのか?じゃあ、舞台との比較を具体例で示していただきたい。

…結局は、どちらも、「思い込み」で書いていらっしゃる。そして、何よりも残念なのは、ミュージカルというものをどこか軽く見ているのが見え隠れしている。


まぁ、プロの批評家さんでさえこういう有様なので、一般の方が「映画が素晴らしいのは、全てイーストウッドが素晴らしいから!」と手放しで褒め讃えているのも仕方がないかな、という気がします。私は、一般の方々にまでどうこう言おうとも思っていませんが…


私は今回の映画はとてもよくできていると思っています。「ジャージー・ボーイズ」という舞台ミュージカルは、実は非常に映画化が困難な作品でした。非常にユニークな形態を持つ作品だからです。映画化が決定するまでのゴタゴタ、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。ドキュメンタリータッチにするといっても、映画はあくまでも「ジャージー・ボーイズ」でなくてはいけません。「フォー・シーズンズ物語」ではないのです。そして…あくまでも、舞台の映画翻案として完成度の高いものを目指したものが今回の映画だと思います。

舞台ミュージカルの「ジャージー・ボーイズ」のモデルになったフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ。この素晴らしい作品の素材となってくれたメンバーへの尊敬の念は、「ジャージー・ボーイズ」ファンとして、私は常に持ち続けています。あの人たちがいなければ、こんな素晴らしいミュージカルは出来ませんでした。

オリジナルへのリスペクト、今あらためてこの意味を考えさせられています。
ジャンル:
ウェブログ
Comments (10)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« ステージからスクリーンへ(4) | TOP | ステージからスクリーンへ(6) »
最近の画像もっと見る

10 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
こちらのBLOGで色々と教えていただいてます (Borinquen)
2014-10-02 06:07:46
こんにちは、はじめまして。
映画「ジャージー・ボーイズ」を観た後BLOGを拝見し、改めて「ジャージー・ボーイズ」の良さを再確認しています。私は、残念ながらミュージカル版を観ることは出来ていませんが、フォー・シーズンズのファンとして映画に泣かされ、サルサやドゥワップでも路上から生まれてくる音楽の生まれる瞬間に心震えました。参考にこちらのBLOGも紹介させていただきましたが、問題などありましたらご指摘下さい。
http://borinquen.typepad.jp/blog/2014/09/jerseyboys.html
Unknown (Elaine's)
2014-10-02 15:03:47
Borinquenさま、コメントありがとうございます。

今までは、海外の舞台ミュージカルに関心がある一部の人にしか知られていなかった「ジャージー・ボーイズ」。今では、誰もが口にしているのが不思議な気がしています。

リンク、問題ありません。そちらのブログもじっくり読みたいと思います。よろしくお願いします。
音楽の力 (Borinquen)
2014-10-03 05:35:22
舞台を観る機会がないのですが、やはり音楽の持つ力が何かを突き動かしているのではないかと実感しました。それにしても、「Can't Take My Eyes Off You」のホーンが入る時のあっと驚く展開に、もう涙で前が見えなくなるほど。なんとか時間を作ってなるべく早くもう一回観たいです。
映画もよかったですね! (4seasons Fan)
2014-10-05 17:56:37
昔からフォーシーズンズが大好きです。出会いは映画の「BIG WEDNESDAY]の中の「シェリー」でした。
2011年と今年の夏の二回、ブロードウエーの舞台も見ました。そして、今年の正月の日比谷公会堂のフランキー・ヴァリさんの公演も行きました。そして、ついに、きょう映画の「JERSEY BOYS]を見てきました。ちょっと長い感じもしましたが、終わりのほうで「君の瞳に恋してる」の場面で、涙、涙でした。時系列など、あんまり難しいことはわからないですが、本当に良い映画でした。イーストウッドが一瞬登場するシーンには思わず笑いました。
偉そうに言いたくないですが、この映画の批評をするプロのライターの方は、NY(かよその公演でもいいですが)一度は、舞台を見てからモノを言ってほしいですね。
クリストファー・ウオーケン氏、おじいちゃんになっていてびっくりしました。あの「DEER HUNTER]でも、「君の瞳に恋してる」が有効に使われていましたね。ウオーケン氏も、まさかフォーシーズンズがモデルの映画に出るとは思わなかったでしょうね。
ウオーケン氏のセリフで、フランキーが借金を返すには90歳までツアーをやる必要がある、というのに笑いました。だって、実際にヴァリ氏は80歳になろうという現在まで、元気にツアーを世界規模でおこなってますからね。
ヴァリ氏のますますの長寿と健康を祈りたいです。またAugust Wilson 劇場に行きたいです。


Unknown (Elaine's)
2014-10-06 00:22:00
Borinquenさま、再びありがとうございます!
Can't Take My Eyes Off Youのホーンのシーンは(ここで散々ネタバレしていますが)舞台のシーンの印象が強くて、映画のシーンには慣れるのに時間がかかりましたが、それでも見る人を強く印象付けるシーンに出来上がっていると思います。
とにかくフォー・シーズンズの音楽が素晴らしい、それに尽きると思います。アバにも共通していますが、誰にもなじみやすい音楽だったことでいわゆる「通」からは評価されなかったアーティストの音楽が、舞台作品となって成功しているというのは面白いと思っています。そちらのブログもゆっくり拝見したいと思います。
Unknown (Elaine's)
2014-10-06 00:34:44
4seasons Fanさま、コメントありがとうございます。

ブロードウェイで見てこられたのですね♪2011年であれば、マリー役は映画と同じくレネー・マリノだったかもしれませんね…

私も映画も好きですが、やはり映画を見れば見るほど舞台がむしょうに見たくなります。この7月にブロードウェイで観たときは、お客さんの盛り上がりは大変なものでした。キャストも終演後のステージドアで「映画の影響か、盛り上がりが凄い」と驚いていました。「映画」→「舞台」と見るほうが正しい観方なのかもしれません~

クリストファー・ウォーケンがまたこの映画に安定感をもたらしてくれていて最高でした。顔を数ミリ動かすだけで演技できるという(笑)やはり映画俳優は凄いですね!

フランキー・ヴァリもまた来日してほしいです!今度はもっと早くチケットが完売すればいいんですけどね(笑)そうなればそうなったで大変かもしれませんが、うれしいことには違いありません。
イーストウッド目当てでも (4seasons Fan)
2014-10-06 21:05:32
この映画、フォーシーズンズという実在する(現存している)主人公たちよりも、映画界でのネームヴァリューが圧倒的なCイーストウッド監督を中心に語られていることが多いですね。(日本はとくにその印象が強いような・・)

ここのElaine'sさんのブログを覗いたり、書き込んだりする、わたくしのようなフォーシーズンズのファンは、日本では残念ながら、ごく少数なのが実情でしょう。
ビートルズの1/1000も知名度、浸透度はないかもしれません。シェリーと「君の瞳に恋してる」しか知らないポップスファン~しかもそれが、オリジナルがフォーシーズンズとも知らない~人が、大多数でしょう。

でも、私は一晩寝てから考えました。イーストウッド氏が監督したから、この映画を見に行こうと思う人がたくさんいればいるほど、彼らの音楽の素晴らしさが広く伝わり、若い人たちにも、この映画によってフォーシーズンズが知られてゆくのは、それはそれで素晴らしいことじゃないかと。

どんな情報の伝わり方でも、彼らの音楽の素晴らしさ、曲の美しさ、楽しさが知られて日本でフォーシーズンズのファンが増えればそれでいいと、私は思います。今週末、もう一回映画見てこよう。
今年の8月は、高校生の娘と二人でNYに行き、JERSEY BOYSを一緒に見たのですが、彼女も喜んでいました。
来年の夏、またNYに行って、JERSEY BOYS見に行きたいです。
今年行ってみたら、日本語のイヤホンであらすじを聞けるサービスがありましたよ。10ドルでしたが、わかりやすく、歌の邪魔もしてませんでした)

Unknown (Elaine's)
2014-10-07 12:26:46
4SeasonsFanさま、再びコメントありがとうございます。

洋画が昔ほど観られなくなっている今、私の住んでいるような地方では、大作以外は公開されないような実情の中、この映画がイーストウッド監督でなかったら、大都市のみの公開になっていただろうと思っています。地方でも公開されるのはイーストウッド監督という冠があるからに違いありません。

でもすごいと思うのは、「音楽に興味がない」という人がこの映画を観られても「2曲ぐらいは聞いたことがあった」とおっしゃることです。私はこういうのを見ると感激してしまいます。昔の九重ユミコさんからタモリ倶楽部、君の瞳に恋してるまで、長い年月をかけて彼らの音楽が浸透してきていたということです。

ミュージカルでここまでの成功を収めたという事実が示す通り、彼らの音楽はまだまだ可塑性ががあると思いますし、どのように形を変えても人々をひきつけていくと思います。

私も舞台のほうも恋しくなってきています(!)

TV放送告知 (4seasons Fan)
2014-10-09 03:21:25
すでに何度も再放送された、何年も前の番組ですが、BS-TBSで10月15日のPM11時から「SONG TO SOUL]という番組で「君の瞳に恋してる」を特集します。フランキーヴァリはもちろん、ボブ・ゴーディオ、アレンジャーのチャーリー・カレロ、アーティ・シュレクのかなり長いインタビュー、そしてJERSEY BOYSの舞台映像もほんの少しだけ見られます。またヴァリ氏のライブシーンもあります。そして、映画DEER HUNTERの有名な球撞き場で、この曲が流れるシーンも挿入されます。JERSEY BOYSの映画のヒットに合わせた再放送でしょうが、まだご覧になったことのない方は、是非ご覧になることをお薦めします!
Unknown (Elaine's)
2014-10-10 15:03:00
4SeasonsFanさま、情報ありがとうございます!
これ、2年前ぐらいにやっていたものですよね?私は友人から後日聞きまして、見逃したことを本当に悔いていました。一応、番組HPにも再放送のリクエストを送っておいたのですが…今回こそ絶対に見逃しません。楽しみです♪

post a comment


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

Related Topics

Trackback

Trackback  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。