Fish On The Boat

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『感情労働シンドローム』

2017-08-24 19:24:21 | 読書。
読書。
『感情労働シンドローム』 岸本裕紀子
を読んだ。

あまりおすすめできる本ではないかなあ。
珍しく、批判的な内容の感想文になります。

気持ちの管理や抑制に重点を置いた精神労働を
感情労働と言うそうです。
たとえば、キャビンアテンダントの仕事ぶりを思い起こしてみる。
高圧的で不遜な態度の客にも、他の客と同じように笑顔で、
きちんとした言葉遣いで、また他の客にするよりも細やかに
相手の感情を読んで対応する。
そういうのが、感情労働です。

また、職場内での人間関係を考えて、
気持ちを抑えて話をしたりすること、
これも感情労働に当たるとされる。

しかし、本書の質がよくないのか、
ところどころ論理的な破たんみたいなところだとか、
若者叩きのところなどが見受けられる。

例を出すと、
職場で上司がみなのいる前で新入社員をしかりつけ、
それを新入社員が恨む。
なにも、みんなの前で叱らなくてもいいじゃないか、と。
著者は、これについて、新入社員のほうが常識が無い、といいます。
仕事、職場、とはそういうものだという常識なんでしょうね。
たぶん、新入社員がいる文脈と、著者のいる文脈が違うのに、
著者は自分の文脈で判断して叩いているんじゃないのかなあ。

どうにも、著者がゆるぎない正義の場所にいるかのような、
若者の叩き方が、そのほかにもいろいろありました。
それで、章の最後の数行だけ、でも社会がサバイバル型になっているから、
若者がそう変わったのだ、みたいなことを言います。
そんなことを言うならば、なぜ叩くのだ、言いたくなる。

そういった、言うだけいっておいて、
最後に手のひらを返すように少ない言葉でまとめて、
自分の言い分を隠すようなにおいがする本です。
さらにいえば、前半は、雑誌を読んでいるような感覚でした。
解決策などを述べる種類の本ではなく、
感情労働の例をひたすらあげていく本です。

それでも、「女性は過去に固執する」だとか、
「アルバイトは、昔と比べて今は異質なものになった」だとか、
「最近の、生徒による先生いじめの様相」だとか、
なるほど、と思える箇所はありました。

それでもなあ、論旨がなあ。
「昔がよかったのはゆるぎない事実で」
という基盤からのモノの言い方ですし、
若者叩きとは真逆に、中高年には同情めいた態度です。
昔がよくても、その流れで今があり、
その今を作ったのが、まあ世の流れに流されたとはいえ、
その中高年であり、
苦しんでいる若者の住む世界が息苦しいがゆえ、
昔と違う形の考え方で生き方を模索しているのに、
そのあたりを理解せずに叩く。

まるで、若者は自然発生したもののような扱い方です。
若者の態度や常識を生みだしたのは、誰か。
そこまで言及してくれないと、違和感があふれだしてきます。

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