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九州国博『~仏の国の輝き~タイ特別展』:その3

2017-05-26 07:42:06 | 博物館・日本
<続き>
 
〇第1章・タイ前夜 古代の仏教世界・#2
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今回は第1章の残り半分を紹介したい。出品番号30、31についてである。タイ南部マレー半島は、東西世界を結ぶ交通路に位置しており、交易の拠点として先住民が割拠していた。それらの国々はいずれもインドとの交易により繁栄し、なかでもシュリービジャヤは、漢籍にも『室利仏逝』として登場する。
ナコーンシータマラートやスラタニー県チャイヤー郡は、大乗仏教の信仰を示す仏像(出品番号・31)や碑文が出土し、有名な仏塔も存在する。それらはタイではシュリービジャヤ様式と呼んでいる。
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 (写真出典:Google earth投稿Panoramioより転載)
写真はチャイヤーのシュリービジャヤ様式の仏塔である。それとともに31番の観音菩薩立像もシュリービジャヤ様式の白眉である。
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 (バンコク国博にて撮影)
尊顔は眉目秀麗で、どことなくガンダーラの仏像に似ており、シュリービジャヤ様式の特徴である。まさに大乗仏教の観音で、宝石で飾られた多くの首飾りをつけている。
タイ国宝の第一と思われるシュリービジャヤ様式のタイのビーナスと呼ばれる菩薩像が存在する。残念ながら今回出品されてはいないが紹介したい。
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 (写真出典:バンコク国立博物館にて撮影)
この菩薩像はシュリービジャヤ様式であるが、インド・グプタ朝のサールナート派の影響、つまり大乗仏教の影響を受けていると云う。
シュリービジャヤ様式も時代と共に変化し、いわゆるチャイヤー派と呼ばれる形式を示す仏像も存在する。
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 パンフレットの33番及び図録の表紙を見て頂きたい、チャイヤー派と呼ばれる仏像である。ガンダーラ仏に似たシュリービジャヤ様式に見るアーリアンの顔立ちから、やや変化したことが読み取れる。時代は出品目録にあるように12世紀末から13世紀である。
この像は悟りを得た仏陀が瞑想する間、龍王ムチリンダが傘となり、仏陀を風雨から守った仏伝に基いている。東南アジアでは、水と関係する蛇の神ナーガを龍王と同一視しており、タイに行けばそこかしこで見ることができる。
興味深いのは36番のアルダナーリーシュヴァラ座像である。目録によればプレ・アンコール時代の8-9世紀とある。
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アルダナーリーシュヴァラとは、男女両性の神で、シバ(右半身)とその妃パールヴァティ―(左半身)の合体した姿である。これはヒンズー教徒が信仰した。出土地はコラート高原である。そこはクメール族やクイ族さらにはモン(MON)族が蟠踞した地である。
(九州国博HPより)
一方タイ北部も先住民が蟠踞した地である。先住のラワ族の地にモン族がハリプンチャイ王国を建国した。写真はそのモン人による比丘座像である。
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 (チェンマイ国博パンフレットより)
この座像はワット・ハリプンチャイ伝来で、チェンマイ国博で常設展示されている。時代は12-13世紀、左右の眉は繋がりモン族の技と即座に判断できる。顔は四角張り、唇は厚くなにやら三段に波打ち特徴的である。
最後にアンコール時代の観音菩薩立像を紹介したい。出土地はカンチャナブリ―のムアンシン遺跡である。その遺跡はクメールの西の拠点で、最大版図はミャンマーにまで及んだことを伺わせている。
その像はパンフレットの43番をご覧頂きたい。御覧のように中肉中背というか、肉付きの良い体系であるが、これがクメール様式の特徴でもある。パンフレットの写真ではわかりつらいので、バンコク国博の10-11世紀のブラフマー像を紹介する。イメージ 9
 (写真出典:バンコク国立博物館にて撮影)
タイ国内から出土するクメール様式の像には、紹介したようにヒンズー神像とともに仏像も出土する。ごちゃ混ぜと云えば語弊があるが、ヒンズー信仰はポピュラーなものであったことが想定される。
 
前回の”九州国博『~仏の国の輝き~タイ特別展』:その2”で紹介できなかった”法輪”について追加で記しておきたい。
ドヴァーラバティーの法輪の特徴は、全面に幾何学文や植物文が表現されている点で、インドやほかの地域に伝わる法輪と異なる。
(写真出典:バンコク国立博物館にて撮影)
そしてドヴァーラバティーの法輪の一部にはヒンズー教の神像が現わされる。法輪基部に刻まれているのは、両手に蓮華をもつ太陽神スーリヤである。
(出典:九州国立博物館HP)
ドヴァーラバティーと云えばモン(MON)の部族国家である。そのモン族は稲作を営む。稲作に不可欠な水と太陽。水と云えばナーガや龍王信仰、太陽と云えば先に紹介した旭日と上掲のスーリヤ神信仰である。仏法の広がりを示す法輪にヒンズーのスーリヤ神像。まさに何でもありの様相を示している。この様相がモン陶に継承されているとの見方は、大きく外れてはいないであろう。
                             <続く>                                                  

 
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