TPPに対しては慎重に考えよう
ここ1年来、特に昨今TPPにかんしての論議がかまびすしい。賛否両論あい半ばしている。TPPの条目はいろいろあり、またいろいろに解釈されるので将来に関しては解らないことが多い。自由化といえば聞こえはいいのだが、私にはなにかうさんくさく、危険なものを感じる。危惧感を率直に列挙してみる。
TPPの方向を原理的に受け止めれば、資本、労働、財貨などの完全自由化、つまり国境を越えてこれらのものが自由に動くことになる。まず労働力の移動が完全に自由になった場合、日本は新興国他の安価な労働力を無限に受け入れなければならないのだろうか?もしそうなれば我々の賃金・収入は現在の20%程度に落ちかねない。貧困とデフレが輸出される。これは破滅だ。中国人の不法入国者を容認しなければならないのだろうか?なら日本の治安は危機に陥る。
率直に言って一番不安なのはアメリカの動き、TPPへの積極性だ。かの国は近年とみにこの動きを加速させつつある。サブプライムロ−ン破綻以後、アメリカの経済は不安定で危機にあるといっていい。そのアメリカが輸出を倍増するという。倍加される輸出の主力は製造業関係のものになるだろう。アメリカの製造業の技術は高いとはいえない。アメリカがあえて輸出を増加させようとすれば、技術的に比較的低い水準でスタンダ−ドを決めて、これをグロ−バルなものとして強要すればいい。アメリカならやりかねない。そうなれば高品質高価格をもってなる日本製品は著しく不利になる。新興国にとっては幸いだろうが。ここで彼らの低賃金が生きてくる。低賃金、低価格、低品質なる製品が幅を利かせれば、日本の製造業はおしまいだ。というより世界的にみて工業技術の進歩は止まる。
金融にしても不信はある。破裂したサブプライムロ−ンのような金融製品の新たな市場として日本はじめTPP参加国の市場が狙われているのではないのだろうか?サブプライムロ−ンは一種の貧困ビジネスなのだが、そういう類のものを作って日本他の市場が開発され、食い荒らされる可能性は無視できない。ことその種の金融商品の開発にかけてはアメリカは優秀だ。狡猾と言ってもいい。金融とは、金融が金融に留まる限りは、ゼロサムゲ−なのだから。私にはアメリカの金融業者など詐欺師に見える。
また恐慌も輸出されかねない。現在欧州の小国ギリシャが世界経済の台風の眼になっている。放漫な行財政の結果ギリシャ経済は破綻した。これがギリシャに留まらず、ギリシャ国債を通じて全欧州の危機につながっている。こういうことがTPP体制下では起こらないだろうか?ある一国の経済が破綻するとする。TPP下に自由化された経済体制では政府の管理能力は低下する。破綻しそうな国への金融はより自由でより大胆になるはずだ。危機は容易に周辺に広がる。恐慌は輸出される。
経済自由化は一概にいいことなのだろうか?今から20年前に日米構造協議が盛んに行われた。日本側の貿易障壁を取り除くとかで、露骨に内政に干渉され改革(?)された。プラザ合意以後の円高を背景にして、対米輸出力を削減された日本は、そのはけ口を東南アジアに求め、当地に直接投資して企業は生き延びた。日本国内は不況になり、延々と平成不況が続いた。この間アメリカは自由化を利用し、金融業にいそしみ、繋栄(?)を謳歌した。我々が歯を食いしばって工業製品を作っている間に、あちらさんは高利貸しでせっせとかせいでいたのだ。イソップ童話のありときりぎりすのお話を思い出す。過去の経験から言えば日本にとって自由化は決して幸福をもたらさなかった。
自由化といえば私は昭和初年の金解禁を思い出す。昭和5年時の蔵相井上準之助は金解禁つまり金本位制復帰という強硬手段に訴えて当時の深刻な不況を克服しようとした。世界恐慌の影響をもろに受けて日本経済の規模は約半分に縮小した。当時の金解禁は資本移動の自由化そして政府の金融政策関与の放棄を意味した。平成不況下のTPPにも同じことが言えるのではないのか?まして政府は増税するといっている。もしそうなら不況の進展は避けがたくなる。
TPPに参加して輸出が容易になるというが日本は輸出立国ではない。GDPに対して輸出額の占める割合は15%弱だ。TPPに参加することによる経済への寄与率は15%でしかない。それより日本経済を下支えしている内需を食い荒らされることのほうが怖い。金融業と製造業は異なる。製造業ではこつこつと物を作り、製品して販売するまで資本を寝かし、顧客の注文と自分の能力をすりあわせて完成するという地道さを必要とする。なによりも技術の独創が比較的安全に護られ、公正な競争が保証される環境が必要だ。なら製造業を育成する基盤は国民国家次元になる。下手に国際的あるいはグロ−バルな次元に拡大すると製造技術は成長しないのではないのか?グロ−バル化とは製造業にとっては中程度の品質の製品を比較的低価格で販売してそのレベルに留まることを意味するかもしれない。
最後に一部では、アメリカが急いでいるからその意に沿うべくTPPを急ぐべきだという意見もある。愚かしい話だ。アメリカはアメリカ、日本は日本だ。肝心な事は国益を第一に考えることだ。地球市民などこの世にはいない。日本と日本人の利害は日本人自身で考えることだ。その点ではアメリカを見習うべきだろう。
(付)日本の輸出の主力製品の75%は工作機械と工業用原材料(部品)だ。製品の性格上無価格競争になることが多い。
ここ1年来、特に昨今TPPにかんしての論議がかまびすしい。賛否両論あい半ばしている。TPPの条目はいろいろあり、またいろいろに解釈されるので将来に関しては解らないことが多い。自由化といえば聞こえはいいのだが、私にはなにかうさんくさく、危険なものを感じる。危惧感を率直に列挙してみる。
TPPの方向を原理的に受け止めれば、資本、労働、財貨などの完全自由化、つまり国境を越えてこれらのものが自由に動くことになる。まず労働力の移動が完全に自由になった場合、日本は新興国他の安価な労働力を無限に受け入れなければならないのだろうか?もしそうなれば我々の賃金・収入は現在の20%程度に落ちかねない。貧困とデフレが輸出される。これは破滅だ。中国人の不法入国者を容認しなければならないのだろうか?なら日本の治安は危機に陥る。
率直に言って一番不安なのはアメリカの動き、TPPへの積極性だ。かの国は近年とみにこの動きを加速させつつある。サブプライムロ−ン破綻以後、アメリカの経済は不安定で危機にあるといっていい。そのアメリカが輸出を倍増するという。倍加される輸出の主力は製造業関係のものになるだろう。アメリカの製造業の技術は高いとはいえない。アメリカがあえて輸出を増加させようとすれば、技術的に比較的低い水準でスタンダ−ドを決めて、これをグロ−バルなものとして強要すればいい。アメリカならやりかねない。そうなれば高品質高価格をもってなる日本製品は著しく不利になる。新興国にとっては幸いだろうが。ここで彼らの低賃金が生きてくる。低賃金、低価格、低品質なる製品が幅を利かせれば、日本の製造業はおしまいだ。というより世界的にみて工業技術の進歩は止まる。
金融にしても不信はある。破裂したサブプライムロ−ンのような金融製品の新たな市場として日本はじめTPP参加国の市場が狙われているのではないのだろうか?サブプライムロ−ンは一種の貧困ビジネスなのだが、そういう類のものを作って日本他の市場が開発され、食い荒らされる可能性は無視できない。ことその種の金融商品の開発にかけてはアメリカは優秀だ。狡猾と言ってもいい。金融とは、金融が金融に留まる限りは、ゼロサムゲ−なのだから。私にはアメリカの金融業者など詐欺師に見える。
また恐慌も輸出されかねない。現在欧州の小国ギリシャが世界経済の台風の眼になっている。放漫な行財政の結果ギリシャ経済は破綻した。これがギリシャに留まらず、ギリシャ国債を通じて全欧州の危機につながっている。こういうことがTPP体制下では起こらないだろうか?ある一国の経済が破綻するとする。TPP下に自由化された経済体制では政府の管理能力は低下する。破綻しそうな国への金融はより自由でより大胆になるはずだ。危機は容易に周辺に広がる。恐慌は輸出される。
経済自由化は一概にいいことなのだろうか?今から20年前に日米構造協議が盛んに行われた。日本側の貿易障壁を取り除くとかで、露骨に内政に干渉され改革(?)された。プラザ合意以後の円高を背景にして、対米輸出力を削減された日本は、そのはけ口を東南アジアに求め、当地に直接投資して企業は生き延びた。日本国内は不況になり、延々と平成不況が続いた。この間アメリカは自由化を利用し、金融業にいそしみ、繋栄(?)を謳歌した。我々が歯を食いしばって工業製品を作っている間に、あちらさんは高利貸しでせっせとかせいでいたのだ。イソップ童話のありときりぎりすのお話を思い出す。過去の経験から言えば日本にとって自由化は決して幸福をもたらさなかった。
自由化といえば私は昭和初年の金解禁を思い出す。昭和5年時の蔵相井上準之助は金解禁つまり金本位制復帰という強硬手段に訴えて当時の深刻な不況を克服しようとした。世界恐慌の影響をもろに受けて日本経済の規模は約半分に縮小した。当時の金解禁は資本移動の自由化そして政府の金融政策関与の放棄を意味した。平成不況下のTPPにも同じことが言えるのではないのか?まして政府は増税するといっている。もしそうなら不況の進展は避けがたくなる。
TPPに参加して輸出が容易になるというが日本は輸出立国ではない。GDPに対して輸出額の占める割合は15%弱だ。TPPに参加することによる経済への寄与率は15%でしかない。それより日本経済を下支えしている内需を食い荒らされることのほうが怖い。金融業と製造業は異なる。製造業ではこつこつと物を作り、製品して販売するまで資本を寝かし、顧客の注文と自分の能力をすりあわせて完成するという地道さを必要とする。なによりも技術の独創が比較的安全に護られ、公正な競争が保証される環境が必要だ。なら製造業を育成する基盤は国民国家次元になる。下手に国際的あるいはグロ−バルな次元に拡大すると製造技術は成長しないのではないのか?グロ−バル化とは製造業にとっては中程度の品質の製品を比較的低価格で販売してそのレベルに留まることを意味するかもしれない。
最後に一部では、アメリカが急いでいるからその意に沿うべくTPPを急ぐべきだという意見もある。愚かしい話だ。アメリカはアメリカ、日本は日本だ。肝心な事は国益を第一に考えることだ。地球市民などこの世にはいない。日本と日本人の利害は日本人自身で考えることだ。その点ではアメリカを見習うべきだろう。
(付)日本の輸出の主力製品の75%は工作機械と工業用原材料(部品)だ。製品の性格上無価格競争になることが多い。










