経済(学)あれこれ

経済現象および政策に関する意見・断想・批判。

麻生政権の不況対策をどう評価するか(再掲)

2011-11-30 12:43:10 | Weblog
  麻生政権の不況対策をどう評価するか?
 
麻生政権の経済対策の項目で、2008年11月20日から2009年6月30日まで、読売新聞朝刊一面に挙げられた経済記事の項目総数は約90になりますが、その内解説の対象として主要なものを下記のように抽出整理しました。11月20日以前の記録はないので私個人の記憶に頼ります。与党の提案も、日銀による対策もすべて、ここでは麻生政権の施策として捉えます。
2008−11−23(日) 日米韓首脳 金融危機 連携強化確認
11−28(金) 定額給付金所得制限設けず 
12−3(水) 社会保障費抑制見直し 景気対策に軸足
      日銀 資金繰り支援 年度末向け3兆円規模
12−6(土) 雇用対策 3年で2兆円 
12−9(火) 新経済対策15−20兆円 
12−11(土)一般会計過去最大88兆5480億円 
12−12(金)景気対策40兆円に 
        生活雇用6兆円追加   
12−13(土)景気雇用に23兆円 
        減税1兆1000億円 
        通貨融通枠300億ドルに拡充 日韓首脳会談確認        
12−19(金)日銀量的緩和実施へ 最終調整 CPなど買い取り日銀利下げ0.1%に   
12−24(水)赤字国債25兆円 社会補償費14%増 
12−27(土)「非正規」救済に3万戸 雇用促進住宅の活用拡大 
2009−1−24(土)企業再建に公的資金  出資金融機関の損失穴埋め 
2−3(火)日銀株買取1兆円 銀行保有分4年ぶり
2−19(木)資金繰り支援拡充へ 日銀決定会合 CP買いきり延長
2−23(月)日中韓ASEAN 経済監視へ常設機関 外貨融通枠11兆円
2−25(水)日米、経済対策で連携  
3−11(水)無利子国債を提言 
3−17(火)地デジ推進 景気策に 旧型TV買い取り案  
3−18(水)日銀、銀行に1兆円支援 劣後ロ−ン引き受け 
       3年間で需要60兆円(低炭素社会 健康長寿 底力発揮)
4−7(火)追加景気対策10兆円 首相指示 がん治療薬開発支援
4−8(水)「野菜工場」普及を支援 政府方針 設備投資減税で4倍に
4−9(木)未就学児童手当 年3万6000円  住宅向け贈与610万円
4−18(土)パキスタンに50億ドル超 支援国会合 (付)日米各10億ドル 
5−3(日)円資金6兆円を融通 ASEAN+3 日本支援策表明
      (付 サムライ債5000億円保証)
5−28(木)厚生年金・健保・雇用保険 非正規労働者へ拡充 
6−18(木)「景気底打ちを宣言 月例報告 輸出や生産持ち直し」  
6−28(日)アフガン・パキスタン G8が支援生命 外相会議閉幕       

対策の内容は以下のように要約されます。
1 政府支出が約80兆円---景気対策、雇用促進、社会補償、新産業支援、定額給付など 内赤字国債23兆円 
2 減税
3 外国との連携---IMFに1000億弗、日韓中で相互融通11兆円、ASEANに6兆円融通
         パキスタンに支援10億ドル
4 金利下げ
5 日銀による株買い取り、劣後ロ−ン引き受け、CP買い取り
  無利子国債発行 

 するべき事はしたという事です。問題は政策の規模と提案の順番です。5つの項目のうち政府の予算による支出が最大です。政府支出による景気刺激、有効需要の喚起は最も考えやすい対策ですが、効果は解らないし、金が要るし、結局赤字国債に頼る事になります。
 外国との連携は絶対に必要です。内需拡大より優先すべき事です。総計約27兆円になりますが、本来今回の危機は外国発ですから、病源の治療が優先されるべきでしょう。この項目での対策の規模は小さいと思います。
 減税と金利下げは常道ですが、不況でパニック気味になっている時には金利下げは象徴的な意味しか持ちません。減税には限度があります。
 第5項目は不良債権あるいは債務の貨幣化です。無利子国債は政府発行の紙幣と考えて差し支えありません。すべて貨幣流通量を減らさないための方策です。この項目の対策はすべて実行されたのでしょうか?また規模が小さすぎます。
真っ先にすべきは5と3です。特に昨年9月から10月にかけて経済界がパニック気味になっていた時、5の対策を派手に打ち出しておけば、なんとか資金繰りができると考えるだけで、企業は安心します。3の対策も同様です。後の1・2・4は定番どおり、状況を見て適宜施行すればいいのです。金利下げ、減税、公共投資、生活支援、などは必要でしょうが、効果はすぐには見えてきません。即効性があるのは、5と3、つまり貨幣流通量の維持、信用収縮の防止です。国内では不良債権を貨幣化し、外国と資金の融通をしあって、外国発の不況の波及を防ぐ事が肝要です。特に大切なのは、この種の施策をした時、大声で趣旨と効果を宣言する事です。麻生総理は、就任早々IMFに1000億弗(10兆円)寄与されましたが、それに伴う意義と効果と趣旨の宣言は、少なくとも民間には伝わってきていません。またやはり就任早々中国を訪問されました。経済対策の連携がそこで話し合われたはずです。誠に時宜にかなったtimelyな行動です。惜しいかな、自らの行動の意味を政治的価値に結びつける点での努力が欠けたようです。
 さらに対策の順序に問題があります。まず5と3です。1と2と4はその次、状況しだいでは、リップサ−ヴィスでもいいのです。定額給付、これは食事の後のデザ−トくらいの意味しか持ちません。どういうわけかこの提案は早かった。言ってみれば懐石料理かフルコ−スの冒頭に、コ−ヒ−とケ−キが出てきたようなもので、以後のメニュ−への食欲は減退します。
 
麻生財政を見ているとするべき事はした、とは言えましょう。しかしその規模と順序に問題があります。順序を間違えなければ、宣伝もしやすいはずです。順序に問題があり、政策の宣伝が不十分だとすれば、それは政務担当者である総理に、断固たる自信がなかったからだと言われても仕方がないでしょう。

 現在「麻生降ろし」なる騒動があるようです。しかしここで振り返って安部・福田政権の事を考えて見ましょう。安部政権はわずか一年でしたが、相当な成果を残しました。失政はありません。しかし野党から、なんだかんだと問題が持ち上げられ、それに与党の一部も同調(動揺?)して、政権は崩壊しました。続く福田政権は、前車の轍を踏まないためか慎重を期し過ぎて、何もできないまま退陣しました。麻生政権の課題はもちろん不況対策です。その点では、成果をあげていると言ってもいいのです。6月下旬になって経済は底打ちしたと報道されています。私はそれほど楽観していませんが、ほっと一息ついたのは事実です。なら麻生政権はするべきことをしつつある、と言えます。医者の悪口を言われたり、など言動に若干のぶれはありますが、それらの事は二の次です。経済対策に一定の成果を挙げている政権がなぜ今、交代すべきなのか、解りかねないところがあります。

(2011年11月付記)
3年前に書かれたこのブロッグを若干補筆して再録します。なつかしい思いに駆られます。というのは改めて見返して麻生政権には明確な経済政策があったことに気づきます。以後の民主党政権は抽象的文言の羅列と現実無視、そして大言壮語と口からでまかせのオンパ−レ−ドです。現実の経済にどう対処するかと言う厳しい姿勢は感じられません。
 麻生政権がこころみた他の政策もここで振り返っておきましょう。次のとおりです。全国の学校の耐震化工事、東京外環自動車道の整備、エコ減税、エコポイント、国立アニメ劇場の創設などなどです。麻生政権の政策の特徴は財政と金融の二方向から同時に積極的拡大政策を行ったことです。結果として2009年度第二四半期には経済がプラス成長に転じています。
 また2009年2月には中川蔵相を通じてIMFに総額1000億ドル(10兆円)を融資し、スロロスカ−ン専務理事から、人類最大の偉業だと絶賛されています。どういうわけか日本のマスコミはこの事実の報道は避けています。
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