まさおレポート

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回想の孫正義21 自ら考える経営者

2017年10月01日 11時44分44秒 | 回想のNTTデータ 新電電 来るべき通信事業

孫正義氏はMBA風やコンサルタント会社の薦める経営改善にほとんど興味を示さなかった。いや一度だけ経験がある、顧客情報漏洩事件の後で改善策を依頼したことがあり、社員から聞き取りをしてまとめたものが経営会議で報告されたがほとんど関心を示さなかったばかりか、わかりきったことばかりでなくもっと新鮮な改善策を提案しろと怒った。

自らが数字を並べてホワイトボードにざっくりと経営プランをたてるのを好み、担当者が数字を操作して気にいるようなプランに作理上げるのを嫌った。このあたり相当に注目すべき特色ではないかと思う、同時に大企業になるにつれ孫正義氏のこうした優れた個人技が姿を消してしまい、MBA風やコンサルタント会社の提案風の社風になってしまうことを恐れる。外資系通信会社某社で4年働いた経験やNTTデータ、新電電某社での経験から孫正義氏の経営流儀の特色を比較してみよう。詳細なビジネスプランや経営学を学ぶこと、改善運動が無駄だと主張しているのではない、外部に学びながらも自らの経営流儀を考え出さない、株主のご機嫌とりに終始する雇われ社長も目につくが、孫正義氏はそのいずれからも免れていると言いたいのだ。ただし既に大企業病が囁かれていて、後継幹部たちがその道を歩むかどうかには不安がある。

外資系某社役員は社長以下のほとんどを米国人が占め、マネージメントチームと呼ばれた社長以下10名程度が実質的なリーダシップチームであり、筆者はその一員であった。それまで、ドメスティックオンリーであった私には、辟易した点や感心した点も多かった。筆者は電話事業部門の責任者だったので、電話事業に関する投資的費用(CAPEX)、経費的費用を一点残らず洗い出し、エクセルで積み上げ、需要予測と併せて年間および5年間のビジネスプランを作成する。こうしてあらゆる部門の収支計画を、綿密に各部門の責任者が積み上げて、会社全体に纏め上げるのだった。もちろん設備部門や営業部門はそれぞれ各パーツを作成してくれるのだが、それを電話事業に総合的にまとめるのはこちらの仕事になる。

これを毎年一回なら、あるいは、せいぜい4半期に一回なら当然のこととして理解できるが、ほとんど毎月のように米国側から非常勤の経営陣が来日し、会議の度にビジネスプランにクレームが出て、そのたびに年間計画の見直しをさせられる。年に10回以上も米国からやってくる非常勤役員のチェックのために行うのだが、当然のことながら実際の営業活動とはリンクせずに数字のお遊びに過ぎないし、リーダシップチームは時間の相当部分をこの作成作業にとられ、営業等の本当に必要な計画作成にあてる時間が少なくなる。

つまり報告のほうが営業よりも優先する体質になってしまいがちになる。皮肉な現象が見えてくる、つまり、社員は年10回以上の予算作成作業でMBA取得者なみの見事なビジネスプランが作成できるようになる。しかし、本当に力を入れなければならない営業力には、時間をあまりさかない。要は米国人社長が株主に当面のご機嫌をとっておけば自身は安泰で、数年しのげれば良いという姿勢が露骨に現れてた。以前の会社でもインタネット事業部門や技術部門の部長などを務めたが毎年一回の予算計画と、半年ごとの見直しでせいぜい2回程度だったので驚いたり呆れたりした。 

後に働いたソフトバンクはADSL事業の開始時点では非常に粗いビジネスプランしかなかったので、当初面食らったものだ。ビジネスプランを見せてくれと探し回ったら、やっと、一人の担当者がエクセルを開いて見せてくれたが、それも綿密に積み上げたものではなく、外資系通信会社某社レベルからみてはるかに見劣りのするものだったが、孫正義氏の頭の中には200万加入獲得すれば採算が取れるとの読みが大つかみにされていることは読み取れるプランで、初期段階で力を注ぐのは顧客獲得とネットワーク構築、円滑なサービス提供と割り切っている風だった。その数年後には経理の専門家による精密なビジネスプランが毎年経営会議で検討されるようになったが、何がビジネスの本質かを見極める鮮やかさが印象に残る。

上述の傾向はなにも外資系通信会社某社に限らない、筆者はNTTデータでもこれに近い経験をした。大阪に赴任したときのボスは仕事上のどんな些細な行動も金銭的価値に置き換えることを自らの経営方針とし、レポートすることを命じたので現場はレポート作成に追われ、本来あるべき売上額の向上など念頭になかったのではないか。時は金なりを社員に植え付けるための方針というのは理解できないことではないが事業の発展にはもっと他にやることがあるだろうと、この方針になんだかなあという思いがしたものだ。

孫正義氏もときにこれに近いことを行うことがあり、たとえば多変量解析という言葉に感動した孫正義氏はなにがなんでも多変量解析で営業の傾向をつかもうとした時があり、相場におけるアノマリーを求めるような癖に陥った時がある、又ある米国人経営者に傾倒して社員全員にその著者の本を配り感想文を書かせるなどしたこともあったが実際の営業に結びついたとは思えなかった、しかしそのうち自己流のパラソル営業が定着するとこの多変量解析なる言葉も米国人経営者の話もまもなく影を潜めた。いずれも最新の経営学やMBA風のものではなく営業に密着したものであるがそれを捨て去る転換も鮮やかである。

筆者が在籍した当時のNTTはマッキンゼーにコンサルを依頼して筆者もいろいろ聞き取りをされたがそのレポートを聞いた当時も、今振り返っても、多額のコンサル料を払って聞くほどのことかと思ったものだ。つまり事業発展の本質論ではなくわかりきったことばかりを言葉にして並べ立てているという印象しかなかった。その後NTTデータは発展するがマッキンゼーのコンサルとは何の関係もない、事業発展に向けた努力の結果だと思う。

筆者が在籍した新電電某社ではトヨタのカイゼン運動を取り入れて、赤字脱却と事業発展に努力していたがやはり所詮は借り物で血の出る現場に効く特効薬にはならない、トヨタのカイゼン運動が新電電某社の事業発展に貢献することはなかった。

回想の孫正義

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