まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

Q.哲学者ってどういう人と結婚するんですか?

2014-05-10 14:22:44 | 哲学・倫理学ファック
看護学校の第1回目の授業でいただいた質問で、答えやすそうなやつはあらかた答えてしまい、
どう答えたらいいものか悩んでしまうような問いばかりが残されました。
今回の質問に対してもどう答えればいいやら困り果てていましたが、
とりあえず次のようにお答えしたいと思います。

A.哲学者はいろんな人と結婚しています。

まあ、こう答える以外ないですよね。
哲学者と言ってもいろんな哲学者がいるので結婚相手もいろいろです。
ていうか、職業によって結婚相手ってパターンが決まったりするもんなんでしょうか?
逆にお聞きすると、看護師はどういう人と結婚するんですか?
お医者さんをはじめとする医療関係者ですか?
まあ知り合える範囲が職場からまりになるという意味ではやはりそうなのかもしれませんね。
学校の先生どうしの結婚も多いですし、プロ野球選手がアナウンサーと結婚するというのも、
いわば職場結婚みたいなものなのかもしれません。

ただ、哲学者の場合は大学教員であることが多いので、
大学教員どうしの職場結婚ってそんなに多くありません。
大学教員になれるのはたいてい30過ぎ、場合によっては40前後ということもありますので、
適齢期にまだ就職していないということが多いからです。
大学教員のなかでも特に哲学者は就職が遅いので、
職場結婚という例はほとんど聞いたことがないような気がします。

それでは哲学者はどういう人と結婚するんでしょうか?
まず、そもそも結婚しないという人も少なくありません。
私の研究しているカントも生涯独身でした。
ほかにもデカルト、ショーペンハウアー、キルケゴール、ニーチェなど、
生涯結婚しなかった哲学者はけっこういます。
また、プラトンやフーコーのように同性愛者で結婚しなかったという哲学者もいます。
現代においてもさまざまな理由で独身を通している哲学者はけっこういます。

結婚する場合はどういう人と結婚するんでしょうか?
ひと昔前までは結婚というのは見合い結婚が基本でしたから、
そういう時代においてはいろいろなツテで紹介されたフツーの人と結婚していたのでしょう。
恋愛結婚の時代になってからは、哲学者にとっては受難の時代となりました。
なんせ若くして就職できるという可能性がきわめて低いのですから。
したがって職場結婚が望めませんから、知り合える範囲というと大学や大学院時代でしょうか。
その頃の研究者仲間か、部活等をやっていればそこで知り合うか、
あとはバイト先で知り合うかくらいではないでしょうか。
実際、研究者どうしで結婚しているカップルはある程度います。
お互いに哲学研究に携わっていて (あるいは携わったことがあり)、
その大変さをわかっているというのは一緒にやっていく上で重要かもしれません。
特に双方 (あるいはどちらか一方だけでも) 就職するまでの長い期間、
定職に就かずに研究を続けていくことを認められるかというのは大事なポイントです。
私は大学時代に部活で知り合った女性と卒業後もけっこう長い間付き合っていて、
自分たちもまわりも結婚するものと思っていましたが、
相手は卒業後フツーに就職した方だったので、
まったく先の見えないことに耐え切れずけっきょくフラれてしまいました。

定職に就かないことに理解があるのと同時に、
ある程度女性に経済力があるということも必要になってくるように思います。
結婚したら専業主婦になって男性に養ってもらおうと考えているような人は、
そもそも哲学研究を続けている大学院生なんか相手にしないでしょう。
むしろ自分が働いてなんとかしてあげると思っているぐらいの人が、
哲学者の結婚相手としては多いような気がします。

そして最後に、これはたんなる予想にすぎないのですが、
哲学者 (哲学研究者) と結婚するような人って、
理屈っぽいのに耐えられる人が多いのではないでしょうか。
哲学者 (哲学研究者) って日常生活のなかでもいちいち理屈をこねてるような気がするんです。
どんな問題であれ、それはなぜかって考えたり、そもそもそれは何なのかと考えたり…。
少なくとも自分はそうですね。
結婚相手の方もそれに対抗できるといいですし (研究者どうしというのはその意味ではベストです)、
対抗せずとも、それに腹を立てることなくはいはいと受け流せる度量が必要な気がします。
ソクラテスの妻クサンティッペは悪妻の代名詞のように言われています。
ソクラテスの有名なことばに次のようなものがあります。
「とにかく結婚しなさい。よい妻を持てば幸せになれる。悪い妻を持てば私のように哲学者になれる」。
しかし、はたしてそれは本当なのでしょうか?
ソクラテスはクサンティッペと結婚したから哲学者になったのではなく、
中年になってから結婚したときすでに彼は哲学者でした。
甲斐性もなくフラフラして理屈ばかりこねている哲学者の夫。
その屁理屈に辟易としたり癇癪をおこしたりしながらも彼とのあいだに3人の子をもうけ、
何とかやりくりして家を守ったクサンティッペ。
彼女は哲学者の結婚相手として理想的なパートナーだったのではないかと思うのです。


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