まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

Q.別れを告げるとき、相手を傷つけないようにするセリフってありますか?

2012-09-05 17:35:28 | 性愛の倫理学
前期の看護学校でもらった質問です。
哲学・倫理学の先生はこういう質問に対する答えを知っていると思われているのでしょうか?
あるいは、たんに人生経験が豊富そうな大人の人だったら誰でもよかったので、
とにかく誰かに聞いてみたい切実な問題だったのでしょうか?
哲学とか倫理学とかのことはひとまず置いておいて、
まさおさま個人の経験の範囲内で答えられることを答えておきましょう。

A.相手を傷つけずにすむ別れの言葉なんてありません。

本当に好きだったんだとするならば、別れによって傷つかないはずがありません。
相手を傷つけないようにするセリフなんてものがあれば、
別れを告げる側にとってはたいへん好都合かもしれませんが、
そんな便利なセリフがあるならば、
恋愛に起因するイザコザなんて地球上に存在しなかったはずですね。
したがって、そんなものはないということを前提にして、
問いを組み替えていく必要があるだろうと思います。

ここから先も私の個人的経験に基づく個人的見解にすぎないので、
けっして唯一ゼッタイの答えと思わずに聞いてほしいのですが、
まず、この質問の背景にある、質問者の意図をはっきりさせておきたいと思います。
質問者は次のような状況にあるものと思われます。
1.今まで付き合っていた人と別れなければならない。
2.別れるにあたってできるだけ相手を傷つけたくない。
たいてい別れを切り出す人というのは、よっぽど冷淡な人でもないかぎり、
この2つの要求のあいだの葛藤を経験することになります。
特に本当に好き合って長年付き合ってきた人相手の場合は、
2のような配慮がより大きくなるわけですが、
1と2は基本的に正反対の方向を向いた欲求だということは肝に銘じておく必要があるでしょう。
本当に相手を傷つけたくないのであれば、別れずに付き合い続ければいいわけです。
でもそうはいかないんですよね?
理由はどうあれもうこれ以上付き合い続けることはできなくて、
とにかく別れなければならないんですよね?
だとしたら何よりも重要なのは 「1.別れたい」 ということですね。
まずはきちんと別れるということを優先させなければならない、
大事なのは2よりも1であるということを覚悟しましょう。

この覚悟が足りない人が別れを切り出すと、別れ話がこじれてしまうことがよくあります。
相手を傷つけないようにしたいあまりに、はっきり別れを告げなかったり、
本当の理由を言わなかったり、そのためこちらの 「1.別れたい」 という意志が相手に伝わらず、
いつまでも相手が破局という事態に直面できないことになってしまいます。
最悪の場合、相手がストーカー化してしまうということも生じます。
こちらはもう終わったものと思っているのに、
相手はまだ付き合ってるつもりであるというケースです。
こんなふうな中途半端な別れ方だけはゼッタイに避けなければなりません。
そのためには、相手を傷つけることなんかを心配している場合ではなくて、
自分はあなたとは別れなければならないと思っていることとその理由を、
はっきりと相手に伝えることが大事です。
それによって相手は傷つくにきまっています。
しかしこういう場合は、きちんと傷つけてあげることが大事なのです。
しっかりと傷つくことによって相手も破局という事態に向き合えるようになるのです。

もちろんはっきりとこちらの意志を伝えたとしても、
相手がストーカー化してしまうことはいくらでもあります。
そうならないようにするために 「2.できるだけ相手を傷つけない」 という配慮も必要でしょう。
これはあくまでも1を優先させた上でのプラスアルファの配慮になります。
最初に述べたように、相手をまったく傷つけずにすむ魔法のセリフはありませんので、
できるだけ傷つけないようにするためのいくつかの注意事項といったものにすぎません。
これはおそらくいろいろとあるのでしょうが、
私として一番思いつくのは次のことです。
別れを突然切り出したりしない、ということです。
私の経験で言うと、こういうことをする女性がひじょうに多いような気がします。
昨日まで普通に付き合っていたのに、ある日突然別れを切り出されてしまうのです。
何がツラいといって、これが一番傷つきます。
なんせこちらの心の準備が整っていないのですから。
授業でも 「心の慣性の法則」 について話しましたが、
急ブレーキをかけられるとそれだけ受ける衝撃は激しくなってしまいます。
だから、急ブレーキはやめましょう。

別れにはじっくり時間をかけて、言葉ではっきり別れを告げる前に、
できるだけ態度や会話やメールなど、いろいろな言動で来たるべき別れを匂わせてあげましょう。
しかも、男性はそういう遠回しな表現に対する読解能力が著しく劣っていますので、
女性どうしならこれで伝わるのにと思うよりももっとあからさまに表現してあげてください。
このときもできるだけ相手を傷つけないようにと思って、
いつもどおりを取り繕ったり、婉曲な表現方法ばかりを選択していると、
男性はまったく何にも気づいていなかったということがありえます。
そうなるとけっきょく相手にとっては別れの言葉が青天の霹靂になるので、
そんなことにならないように、あなたとはもううまくいかない、
私はもうあなたを好きではない、私たちの関係はもうすぐ終わりを迎えるということを、
ことあるごとに表現してあげるようにしてください。
そうやって時間をかけて別れを予感させておいた上で、
ある時が来たらきちんと別れを告げる、
ツラいことですが、恋愛関係を終わらせるにはラクちんな王道はありません。
お互いに傷つき合い、傷つけ合って、きちんとピリオドを打つようにしてください。
Good luck!


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4 コメント

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そうですねえ (仙人)
2012-09-05 21:56:26
大学も6年になるころ、4つ年下の女の子と付き合って、いやそのつもりだったわけです。僕としたことが、赤いスウィートピーよろしく、半年過ぎても手もにぎらなかった!もちろんそれほどオクテだったわけじゃありません。なぜか彼女に対してはそうだった。ある日、音楽仲間と連れだって飲みに行った。しばらくしてそいつが僕に謝るわけです。何?って訊いたら、やっちゃったんだって言うんだな。
僕には事実が認識できず、翌日彼女を誘ってドライブに行った。雨が降っていたが、黄葉のきれいな秋だったことをはっきり今でも忘れずにいます。初めて僕たちはキスをしました。彼女にとってはそれは別れのキスだったわけです。僕は間抜けなことに未だに事実を認識できず文字通り始まりのキスだと思った。
間もなく僕も事実をようやく認識しました
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まるで小説 (まさおさま)
2012-09-06 18:12:37
仙人さん、こんな公の場での赤裸々な自己開示どうもありがとうございました。
まるで仙人さんとは思えないような純愛物語ですね。
『神様のカルテ2』 のなかでも似たような悲恋が描かれていました。
でも、友人の告白を聞いたあともまだ事態をきちんと理解できていなかったというのが、
あの小説以上に、今回の私のテーマにふさわしい実例となっていました。
女性の皆さん、男というのはかくもものわかりが悪く、
すべてを自分にとって都合よく解釈してしまうことのできる動物なのです。
そこのところを理解した上で、男にもわかるように別れ話を切り出してあげてください。
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とりあえず ()
2012-09-07 22:36:56
いかなる理由があろうとも、他に好きな人ができた、と言うと、相手が諦めがついて、次に進めるだろう、ということで、そのように言ってきました。


というのも、大昔、傷つけたくなくて、「わだ付き合うとか考えられない」と言って断ったつもりになっていたら、なんと一年近く、彼は待っている、と彼の友人から聞かされて、なるほど、人って都合がいい解釈をするものだな、と気付かされた訳です。


なので、本当の親切は、傷つけないことではなく、「分かりやすい言葉」だと考えるようになりました。


ちなみに、一番傷付いたフラれ方は、「後輩にしか見えない」でした(笑)。
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なるほど (まさおさま)
2012-09-13 19:56:01
桃さん、コメントありがとうございました。
「他に好きな人ができた」 と言われるとものすごく傷つきますが、
一番受け容れざるをえない別れの言葉だという気がします。
「本当の親切は傷つけないことではなく、分かりやすい言葉だ」 というのは名言だと思います。
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