「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」
日本カルト映画全集1・ワイズ出版
映画「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」を監督した石井輝男は、キング・オブ・カルトと最近はとみに注目されている。彼が監督したこの作品はビデオ・DVD化が難しいらしいので特別上映などでしか見ることができない、そんな故もあってか一本の作品が丸ごと本になっている。ロードショー前の宣伝的要素が強いものや巨匠(黒澤や宮崎)の作品は別として、星の数ほどある映画作品が一冊の本になることはめったにない。裏を返せばそれだけ吸引力の強い映画なのである。
この本には、映画のシナリオ、乱歩の小説、当時の映画評論、監督へのインタビューなどが収められている。ボクがこの映画の中で一番好きなシーン、暗黒舞踏の土方撰が荒れ狂う日本海を剥き出しの岩肌で踊る場面、石井監督へのインタビューでこんなふうに語っている。
「あの波のダーンと立つところがありますんでね。ロケハン的にそれを見てきまったんですけど。ただ、あそこは非常に波の荒いところで、土方さんが波にもっていかれたら危ないってことがあったんです。僕も言いかねていたんですけど、でもどうしてもあの荒波から出したかったんで、雑談しているときにあそこから出るといいでしょうねえ、なんて言ったら、やるっていいだしたんでね。事故があったらと、なかばハラハラしながらやってもらったんですけど、でもきっと土方本人もあの波と岩を見てて、危険を冒してでもやりたいって意欲が湧いたんですね。だからまあ、本人もいい気持ちでやったんじゃないですか。」
危険度100%は画面から観て十分分かります。そこに土方と石井の役者&監督魂を感じずにはいられません。映像的なエクスタシーを伴った屈指の名シーンと言えるのではないでしょうか。
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土方巽の暗黒舞踏を映画で堪能するのでしたら「卑弥呼」がお勧めです。監督は「写楽」や「梟の城」の篠田正浩、音楽は今年没後10年の前衛作曲家・武満徹です。
日本映画データベースの一覧が役立ちます。↓
http://www.jmdb.ne.jp/person/p0301070.htm
私も「恐怖奇形人間」を観てみたいです。