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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

「ろくでなし啄木」(作・演出:三谷幸喜)

2013-04-25 | Weblog

■公演:2011年2月
■作・演出:三谷幸喜
■出演:藤原竜也、中村勘太郎、吹石一恵

 

今週は歌人の石川啄木について書いているのですが、これが申し合わせたように過去WOWOWで放送された三谷幸喜の作・演出による「ろくでなし啄木」というお芝居を収録したものを都合よく録画しており、じゃあ啄木ねっという感じでそれを見たのです。出演は石川啄木の役を演じる藤原竜也と中村勘太郎、吹石一恵が絡んでくる三人芝居でした。中村勘太郎と吹石一恵が演じる役柄は、私の僅かな知識によるとおそらく三谷幸喜が創作した架空の人物であると思われます。三谷幸喜は架空の二人の人物を石川啄木に絡ませることにより、その抒情的な歌やイメージとは裏腹に、借金に借金を重ねる、その借りた金もすぐに刹那的に使ってしまう、妻子を北海道に置いていた独身時代は女遊びも盛んであったという作品から伺うことができない啄木の特徴をクローズアップさせ、かつ、飽きさせないよう一種のサスペンス風仕立てに組み立てていました。それにより石川啄木という人物をより際立てて鮮明に浮き上がらせているように感じました。タイトルにあるように<ろくでなし>な啄木の一面を描いているのです。

 

私はこのお芝居を見てあらためて三谷幸喜の才能の豊かさを感じましたし、人気があるのがわかるような気がしました。エンターテイメントに仕上げながらも人間の本質を鮮烈についていると思ったからです。文学的な才能は恵まれているものの、理想が高く経済的能力は低く借金まみれ、女好きなルーズな一人の若者という歴史的人物像を見事に描き出していたからです。私は啄木のだらし無い側面はそれ以前は知りませんでしたし、彼の有名な歌を読めばなんと純粋なみずみずしい感性の持ち主なんだろうと思ってしまうだけでした。先に書いた啄木をテーマとしたラジオ番組で、だらしない側面があると聞いていても、やはりリアル感としてもち得ることは文学的価値の部分が先行しなかなかできませんでした。しかしこのようにお芝居として(それがかなり極端に描かれていたとしても)見せられると逆にだらしなさがリアルに感じ、実際の人物はそうでなくても、人物形成の想像力の一助となるのでした。

 

ラジオ放送の番組で啄木の歌はかなりの演出があると言っていたのですが、闇と光というか心の中と現実の開きがあるぶん実は逆にみずみずしい感性が研ぎ澄まされ、短歌史に残るような作品を生み出すことが可能となっていったのかもしれないと想像してみることもできるのでした。三谷幸喜の芝居の中の石川啄木はタイトルそのものの<ろくでない>でありました。しかしその<ろくでなし>も見よう次第でいろいろな色に変化していきます。三谷幸喜はその変化をサスペンス風に見せることで、色をつけるのを観客に委ねていると思いました。さまざな啄木というのを観客は思い描くことができるのです。いずれにせよ、人の善意や愛情を逆手にとり金と女をキーワードに泳ぎ切ろうとする啄木を三谷は描いていたのですが、それが天才・啄木の姑息な面や人間的な弱さを全面に押し出すことにより、逆に人間的な人物として提示されより石川啄木という魅力がより一層際立っていたように感じたのでした。面白かったです。

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時代閉塞の現状 食うべき詩 他十篇 (岩波文庫)
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