飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「ハート・ロッカー」(監督:キャスリン・ビグロー)を見た

2010-05-03 | Weblog
■製作年:2008年
■監督:キャスリン・ビグロー
■出演:ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、ガイ・ピアース、他

5月1日にニューヨークで爆破物騒ぎがあり、数千人が避難したというニュースがありました。新聞を読んでいると爆破物処理班がロボットを使って処理をしたという。まるで、映画「ハート・ロッカー」を想起させるような出来事ではないでしょうか。というわけで、映画「ハート・ロッカー」を見たことを書きます。昨日も書いたのですたが、映画鑑賞に拍車がかかっています。いい映画を見るとまた別の面白い作品があるんじゃないかと期待してしまうんですね。映画を見漁っていた学生時代を思い出します。そしてこの「ハート・ロッカー」、さすがにアカデミー賞を受賞しただけあって期待を裏切らない面白い映画でした。ただし一抹の割り切れなさを残しながら…と言っておききますが。それは後で書くとして、この映画を監督をしたのがキャスリン・ビグローという女性の方。こんなハードな映画を作るなんて、なんて強靭な女なんだろうとびっくりします。おまけにアカデミー賞の対抗馬となった「アバター」を監督したジェイムス・キャメロンの元奥さんと聞いてさらにびっくりなんですが…。(びっくりネタとしては古いんでしょうけれども)

「ハート・ロッカー」はイラク戦争の爆破物処理班の話。宇宙服のような爆破から身を守るための防護服を着て爆弾に向かう姿は異様です。その防護服姿のアメリカ兵の後ろには、イラク市民が歩いている様子の映像もあって、その対比がまた見ている側に底知れぬ不安感を引き起こします。カメラは手持ちなのか画面はゆれ、ドキュメンタリータッチの迫真性ある映像は、揺れる心をさらに揺らす効果があります。「ハート・ロッカー」は何よりも戦争映画ではあるのですが、別の側面から見るとまるでサスペンス映画のようにも見ることができるのではないでしょうか。

それは、アメリカ兵から見ると誰が市民で誰がテロリストなのかが見分けがつかない恐ろしさ、いつ襲撃されるかわからない恐ろしさ、いつ爆発するのかわからない恐ろしさなどなど、映画に描かれた世界においてはアメリカ兵以外のすべての環境は疑いの目で見ればすべて疑わしく見れてしまう生命を脅かす緊張感が漲る環境となっています。サスペンス映画も生命を脅かす危機、忍び寄る見えない敵、そして緊張感という風に、じつは「ハート・ロッカー」が設定している状況と非常に似通っているのではないかと思うのです。

もちろん、本来の映画のテーマは別のところにあります。戦地に赴いたアメリカ兵の中で最も死亡の確率が高いのは爆破物処理の仕事であるといいます。戦争映画としてすぐに連想してしまう銃撃戦のドンパチではないわけです。映画で描かれた世界こそが、実は最も危険で生命をかけたハードな仕事であるということ。そうした知らなかった部分(少なくともボクは知りませんでした)にしっかりスポットをあてた功績、そしてその異常状態のなかで精神まで病んでしまうしかない状況に追い込まれていく袋小路としての悲惨さなど、そう多くはこのジャンルの映画を見ていないので何ともいえないのですが、新鮮な切り口であったように思いました。

アメリカとなると戦争ばかりしているイメージが強い。で、ここで思いだしてしまうのが、ブライアン・デ・パルマ監督の「リダクデット 真実の価値」です。デ・パルマの映画はアメリカ兵のイラン人少女レイプとそれを隠蔽するための一家惨殺という、戦争の狂気によりアメリカ兵が民間人に対して危害を加えた話でした。一方の「ハート・ロッカー」はアメリカ兵の苦悩を描いておりイラン人の事情はほとんど描いておりません。むしろ得体のしれない恐怖を呼び起こすものとして兵士に及ぼすストレスやダメージといった印象が強くでていました。ここにおいてこの2つの映画は描きかたの相違を見せてているわけです。冒頭に書いた一抹の割り切れなさとは、誰をを正義として描くのか?あるいは被害者とは誰なのか?という視点の位置だったかもしれません。戦争をどう描くか。とてもセンシティブで難しい問題ですね。

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2 コメント

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緊張感 (de-nory)
2010-05-05 17:00:11
こんにちは。TBありがとうございます。

はじめましてですね。
墨映画(BOKUEIGA)のde-noyと申します。

>誰が市民で誰がテロリストなのかが見分けがつかない恐ろしさ、いつ襲撃されるかわからない恐ろしさ、いつ爆発するのかわからない恐ろしさなどなど

本当に、この緊張感がすごい映画でした。
見ごたえありました。
きっと、またすごい映画に出会えますよ。
出会えましたら教えてください。
また、お話しましょう。
コメントいただき (飾釦)
2010-05-05 21:29:21
ありがとうございます。

ヴァーチャルな擬似的体験に近づけば、より一層リアルに難じることができる。そんな映画でした。それと砂ぼこりというかガサガサした感覚もたまらないものがありました。

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