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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

僕は知らない寺山修司NO.154⇒演劇公演「血は立ったまま眠っている」(シアターコクーン)

2010-01-28 | 寺山修司
■日時:2010年1月24日(日)
■劇場:シアターコクーン
■作:寺山修司
■演出:蜷川幸雄
■出演:窪塚洋介、寺島しのぶ、森田剛、遠藤ミチロウ、六平直政、他

蜷川幸雄が寺山修司の処女戯曲「血は立ったまま眠っている」を演出した公演を見ました。この作品は2年前に流山児★事務所による公演「血は立ったまま眠っている」を見ています。その時は作品から時代を突き破ろうともがき格闘しているエネルギーや精神を感じとることができてとてもよかったという印象があります。今回、演出した蜷川幸雄は寺山修司と同い年であるというでありませんか。老いを迎え老成してきた蜷川が23歳の時に書いた若き寺山の戯曲を演出するとは、これも奇縁な遭遇といえるのでしょうか?少なくとも蜷川はこの50年前に書かれた汗ほとばしる戯曲をリアルタイムで生きて感じとることができる世代であることは間違いないのです。

ところで、劇場には女性客がとても多かった。8割くらいは女ではなかったか?お目当てはもちろん蜷川幸雄でもない、ましてや寺山修司でもない、本命は森田剛であり、窪塚洋介なんだろうな彼女らは…。だから多くの客は、何の意味かよくわからないけど意味深なタイトルを感じたまま劇場へと足を運んでいるに違いないと思ったりするのです。きっと幕が開き舞台を見るにつれ、一体これ何?って感覚になるに違いないと思うのです。



何故なら、観客の多くは先にも書いたように戯曲がかかれたのは50年前のこと、60年代の安保闘争に象徴される政治の季節なんて知らない世代がほとんどなのだろうから。このボクだって生まれる前のこと(現在49歳)なのだから、お芝居がかかれた当時の空気などわからないし、目の前に繰り広げられる苛立ちだってきっと実感としてはわからないはずなのです。おまけに、ストーリーはあるようでない。すべてが断片的、まるで映画の一シーンを切り取ってきたかの様相だし。

それでもこのお芝居がきらめいて見えるのは、政治的なテーマを超えて“自己の存在”というか、今ここに生きているという実感、肌触りに対して様々な問題定義や揺さぶりをかけてくるセリフやシュチエーションに満ちていることなのではないだろうかかと思うのだ。それは理屈抜きに、という感覚に近い。たとえるなら音楽に近いのかもしれない。音楽を聞くと勝手に体が動き魂が揺さぶられるように、この「血は立ったまま眠っている」は勝手に魂が揺れてしまうのだ。



役者の中では窪塚洋介がかっこいい。独特なテロリストの味を出していた。女優では寺島しのぶだ。彼女は大変だ。夏美の役を演じる寺島は役柄ではあまり主張しないが、存在感としては大いに見せてくれます。なぜって、彼女が中盤に舞台に登場したと思いきや、やいきなりテロリストである灰男役の窪塚洋介に犯されてしまうし。バックでガンガンと突かれてしまい、会場内はなぜかシーンとして息をのんでしまう演出で。そこにはテロリスト・灰男の、後の寺山のテーマである母親殺しや近親相姦にも繋がるような予感の長い台詞が腰の動きとともに重なってくる。

パンフレットをみると寺島しのぶは『出て何十秒かで犯される役なんてそうそうないですよね(笑)そして犯されながら「何かが始まるかもしれない・・・・・・」って気づく。なんて素敵なんだろう!!めちゃくちゃ痺れます。』と言わしめている。この寺山の「血は立ったまま眠っている」は、そうしたよくはわからないけれども『めちゃくちゃ痺れます』という理屈では言えないような不思議な魅力は、先にもかいたように音楽を聞くことに似ている感覚なのだ。今回、蜷川幸雄の演出したお芝居を見てそう思いました。 

それは、在日朝鮮人・張の役を演じたパンクロッカーの遠藤ミチロウが寺山の詩をのせて歌うブルースが、まさにその『めちゃくちゃ痺れます』という感性を、まさに痺れるようなメロディー(=音楽)で歌って聞かせてくれたことに象徴しているように思えたのでした。

♪地下鉄の 鉄骨にも 一本の電柱にも
 ながれている血がある 
 そこでは 血は 立ったまま眠っている
 窓のない素人下宿の 
 吐寫物で洗った小さな洗面器よ
 アフリカの夢よ わびしい心が
 汽笛を鳴らすとき
 おれはいったい どの土地を うたえばいい♪

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4 コメント

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トラバありがとうございました♪ (Minnie)
2010-01-29 03:48:45
先程はトラバありがとうございました☆
ありがとうございます (飾釦)
2010-01-29 18:10:05
また、どうぞ見てやってください。
TBありがとうございます。 (こおろぎ)
2010-01-31 17:11:06
こちらからもさせていただきました。
本当に自然と魂が揺さぶられる作品です。
余韻も残り、いろいろと考えさせられます。
忘れられない体験になりました。
ありがとうございます (飾釦)
2010-01-31 21:59:14
寺山修司の作品は、いろいろあるけれど魂が揺さぶられるものが多いんです。だから、今でもこうして上演されるんじゃないのかなと思っています。

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