おーちゃんぶろぐ。-まっすぐ歩いてる?-

人生は『ロード・ムービー』

喜び悲しみ
ひとコマひとコマ紡ぎ合わせて…
いつしか、ハッピーなエンドロールを。

『荒川で恋をして。』 第7話

2008-03-31 14:58:45 | Weblog
『お‥ お主‥どこから来たあぁ‥?』男が言った


『いや‥あの‥ 川から‥ いや、その‥ここって‥』

邦男は瞬時に 周囲の異変に気づいた


川の中から見渡す夕暮れの景色も、見覚えがある様で どこか違っている
それに 眼の前にいる男の容姿も明らかに時代錯誤している



                 〝ここは いったい‥〟



『夕刻か‥ とにかく、ここはまずい。』男は邦男の腕を掴み川から
引きあげた

川のすぐ近くの丸太小屋に男は独り 暮らしていた


火を熾し 暖を取り

邦男と、丸太小屋の主であるその男は 
男が前の荒川で釣った魚を食べつつ お互いを警戒しながら話し始めた


『あのぉ あなたは‥ それにさっき、ここはまずいって‥』邦男は聞いた


男は、静かに話し始めた

『なんだ、知らぬのか‥ すでに‥城の周りは豊臣の軍によって囲まれてしまった‥』


『いや、え‥? ってことは‥戦国時代‥??しかも豊臣って‥』

邦男は自身に言い聞かせた

             〝落ち着け‥ まず 整理するんだ‥〟




男は続けた

『拙者は‥ 鉢形城・城主 北條氏邦公に仕えていた者だ‥
名は〝左衛門〟と申す。』


『え? あなたが左衛門さん?』邦男は思わず口にした



不可思議な顔をしながら 左衛門は続けた

『拙者は、殿に仕える身で在りながら‥ 静姫様を愛してしまった‥
殿の逆鱗に触れ 武士から一村民に身を落とし‥今はこの通りだ‥
しがない漁師と、草鞋を編んで売って暮らしている。』






『もしかして‥このまま開城するの‥?』邦男は、本で読んだままを話した



『豊臣の大勢の兵に囲まれて もう、ひと月近くになる
もはや‥これまでかもしれん‥。』左衛門は炎を見つめながら話した





邦男は400年以上も前の、戦国時代の寄居にタイム・スリップしてしまったことを
受け入れるしかなかった





『お主が、未来で観たという城は‥城はどうなってしまう?』左衛門は邦男に尋ねた



『城跡は‥ そうだ!これ‥』ポケットから携帯を取り出す邦男


『写メもダメかぁ‥。』水に濡れて 邦男の携帯は機能しなかった




2人は、お互いの話を 半信半疑だが
それでも‥目の前の事実を受け入れる覚悟を決めるしかなかった





静まり返った夜の川原には 周囲の山々から聞こえる
鳥の囀りが響き渡っていた














                          つづく




〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟

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『荒川で恋をして。』 第6話

2008-03-28 10:03:51 | Weblog
8月も終わり 子供達も新学期が始まり
『博物館』への来場者も疎らになった頃

明日は休みを貰い、今日もバイトを普段より早く切り上げることとなり
邦男は夏の終わり夕暮れの、人気の少なくなった玉淀川原を訪れた

そう 花火大会で賑わいを見せていたあの川原だ


一人 川原を歩き 
ふと、目の前に広がる対岸の断崖絶壁 花火の打ち上げ場所でもある
『鉢形城』跡を見上げていた


〝ここに、その昔 城が聳えていたのか‥。〟



しばしの間 佇んだ後

帰ろうと 眼を逸らした瞬間‥
城跡の林の中に 人影を感じて再び眼を凝らした



〝着物の‥ 女性‥?〟  〝なぜ あんな険しい場所に‥?〟





駅まで歩く道で どうしても、さっき見た城跡の女性が気になり
邦男は『寄居駅』近くの〝町立・図書館〟へ導かれる様に立ち寄った

そして 歴史が苦手なはずの自分がなぜ、その本を手にしたのか
未だ解からないまま『鉢形城』に関する古い本を借りアパートへ帰った




シャワーを浴び 缶ビールを開け
食い入るように、その本と共にパソコンから寄居町商工会・HPを覗いてみた


気がつくと深夜を回っていた




あくる朝

トーストの焼ける間に 実家へキャンセルの電話を入れた後
同じく休暇を貰っているはずのバイト仲間のヒロシにメールした




そして先日まで〝うちわスタンプ・ラリー〟のノボリでいっぱいだった
商店街を抜け、正喜橋から荒川を眺めた


その向かう先は『鉢形城歴史資料館』

鉢形城跡すぐ東にある〝城主・北條氏邦〟公の歴史が学べる 
定期入れ替え展示型の町の資料館だ

資料館入り口には広場があり 春には『北條まつり』出陣式が行われる



館内の様々な展示物に いつしか興味を示す邦男

そして 一枚の古い絵の前で立ち止まった



〝昨日の‥ 確か‥ 昨日観た女性だ‥。〟





資料館を出たところでヒロシから電話が

『おつかれぇ どしたぁ?』


『ヒロシ今、どこにいる?』邦男はすぐさま問いただした


『今、出先だけど‥あと20分くらいで寄居着くけど‥なに?』



『鉢形城跡に来れる?』単刀直入に話す邦男

『鉢形城?!‥なんかあったん?』ヒロシは事の真相が掴めない


『とにかく、先に〝四十八釜〟に行ってるから 車停めて来てょ!』

邦男は、用件だけ話すと携帯を切った。






『鉢形の四十八釜』

〝深沢川〟と呼ばれ
ちょうど 資料館裏手の沢から荒川へと続く水路

その昔、鉢形城を囲む様に48箇所の 釜のような堀があり
古い書物にも記されている

合戦時には、敵軍を足止めにした事実の記も見つかっており
また それぞれに〝伝説〟が残る


その一つである〝龍宮伝説〟の発祥地とされている







邦男は一人 藪の中へと足を進める

険しい岩の間をさらに奥へと進み‥ ひとつの神秘的な光りを放つ堀を見つける


                 〝これだ‥。〟



と、その瞬間 足を滑らせた邦男は水の中へ




すぐ 後ろまで来ていたヒロシがその瞬間を見ていた

『邦男ぉぉぉーーーーっ!!』水の中を急いで走り駆け寄るヒロシ




完全に邦男の姿は水の中に沈み  ヒロシが叫んでいる




水中で必死にもがく邦男


最後の力を振り絞るかのように 思いっきり水を掻いた




『っぷはあぁぁぁぁっ!!』 水面からやっとの思いで顔を出した邦男


『うわあぁぁぁぁぁぁっ!!』 邦男と眼が合い水の中に尻餅をつく見知らぬ男






2人は川の中で尻餅をついたまま お互いを見つめていた














                          つづく




〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟

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『荒川で恋をして。』 第5話

2008-03-27 09:12:45 | Weblog
子供達の夏休みも 残り10日余りとなり
宿題に追われる頃

『川の博物館』は宿題の一研究の参考にと
大勢の家族連れのお客さんで朝から賑わっていた


アスレチック・ランドも順番を並ぶ家族で溢れ

すぐ前の川原では 今朝も早くから関越・花園インターからの
バーべQ組で混雑している



『今日はイカダ下りで川原もいっぱいだな。』
館長がバイト中の邦男に話しかけてきた


『イカダ‥下りですか‥?』邦男は首を傾げた


『そう、毎年この時季に行われる町のイベントだよ
もう10年以上前に 町の若者達が始めたもので 
今や寄居の夏の新・風物詩になっている この博物館前がゴールなんだ。』


『へぇ~‥。』 2人は広場からすぐ前の川原を見つめていた




お昼を回った頃 前の川原が、一際の賑わいをみせた

様々な手作りイカダが ゴール地点に近づいてくる
川原でバーべQを楽しむ一般の観光客達が歓声を挙げながら拍手を送っている


キャラクターを模った物や、凄く大きなイカダ
若者に混じってイカダを楽しむ団塊の世代達

みな、まるで子供の様にはしゃいでいる


邦男は思わず、川原へと駆け寄った


次から次へとゴール・インしてくる数々のイカダ

その中に、いつか『寄居駅』構内で見た『乙姫ちゃん』Tシャツを着た
チームを見つける


邦男はその中の一人に声をかける
『あのぉ、これって‥』

大会スタッフとして 朝から現場に張り付いていた男が答えた
『あぁ これは商工会のマスコット・キャラなんだょ。』


B.Cジャケットを身に着けた 不精ヒゲの大柄な男が川から上がり
邦男のもとに近づいてくる

みんなは彼を〝部長〟と呼んでいた



『どーもぉ ご苦労さんですぅーー。』見た目と違い 気さくな感じだ

『博物館の人かぃ?』大柄な男は続けた


『イカダ下りはねぇ 俺達の先輩達が始めたイベントで毎年、出場者が増えてる
みんな、いい顔してるだろ? 俺達はイベントを通して、町の雰囲気を変えたいんだ
寄居を一つにしてさ 新しい寄居を創りたいんだ。』

その後ろで 揃いのTシャツを着た部員達がうなづいていた


続けて メガネの男が、着ているTシャツを指して話し始めた

『合併以後、単独行政となり‥寄居の原点をもう一度みんなで探してね 
この川原に昔から伝わる 民話を見つけたんだよ
その〝龍宮伝説〟に登場する〝乙姫さま〟がこのキャラなんだ。』


初めて寄居に着いた日に 駅から乗せてくれた見覚えのある
マッチョなタクシー運転手が続けた

『うちはバカみたいに熱いのがいるんだょ 今日は来てねぇけんどな
でもみんな、いい奴らだぜ 今度お兄ちゃんもどう?笑』



その後、不精ヒゲの大柄な〝部長〟が静かに言った

『俺達は〝寄居〟をどうしても守りたかったんだょねぇ。』





邦男は 部長の言葉がいつまでも忘れられずにいた





お祭りの男達と同じように 川原で逢った大人の男達も
まるで子供の様な

そして




みな〝真っ直ぐ〟な瞳をしていた。










                          つづく




〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟

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『荒川で恋をして。』 第4話

2008-03-26 10:00:41 | Weblog
『お兄ちゃん これあげる。』

8月のジリジリと照りつける真夏の日差しの中
4歳くらいの女の子がバイト中の邦男に一輪の花を差し出した

『ありがとう。お名前は?』邦男の言葉に
『あけみ。』少女は答えた  その後ろで母親が笑っていた


二週間のバイト生活にも慣れ 少しずつではあるが
現場でもある種の〝ゆとり〟が出てきた


明日は『寄居 玉淀・水天宮祭』 町の花火大会だ

バイトを終え、アパートへ戻る途中
駅前の『金太郎』で食事を取ることにした

なにやら 店の奥のテーブルを陣取るお客達が盛り上がっている
テーブル席手前のカウンターに座り

ビールとやきとりを注文してからタバコに火を点けた


隣の席の男が、灰皿を邦男に渡しながら話しかけてきた
『お兄ちゃん一人かい?』

『あ‥すいません‥。』邦男はシェイブ・ヘッドの男に硬直した


『あ‥ あの‥僕、今 川博でバイトしてまして‥。』と邦男

『そうかい 川博かぃ!』と男


『なんだぃマサ、知り合いかい?』奥の男達が一斉にこちらを見ている
みな揃いのTシャツを着ている  背中には〝中町〟のプリントが

見渡せば、店内のお客もそれぞれ〝茅町〟〝本町〟〝武町〟〝栄町〟‥
Tシャツ姿の無骨な男達が一斉に振り向いた。

やきとりをほおばる暇も与えず 次々と話しかけてくる
『お兄ちゃんはあまり見かけないけど、どこだぃ?』

『いや、あの東京っす‥。』 圧倒される邦男

『ってぇ、東京からかぃ?!東京はイイ女多いかぃやっぱ!』
一同に『しょーがねぇなぁ んなことべぇ聞いてるん!』爆


〝‥なにやら 勝手に盛り上がってるようだ‥〟邦男は思った


テーブルには何本のジョッキや、空ボトルが置いてあるだろう‥


『明日はバイト何時に終わるん?』別の男が聞いてきた

『バイト終わったらさ、花火観に来りゃいいじゃん。』

『友達連れて うち(中町)んとこ来いょ。』

『出来れば女の子がいいなぁーーー!!』‥と
あれやこれやのうちに すっかりと巻き込まれてしまった邦男であった



その後 何杯飲まされたかは覚えていない
気がつくと部屋で寝ていた


『なんだか解かんねぇけど‥濃いオヤジ達だったな‥』
思い出し笑いしながら そのまま眠りについた





次の日


昨夜のことをヒロシ達に話した邦男は バイトの帰りそのまま
なおみ・ゆうこと共に4人で玉淀川原へと向かった


夕暮れ、街中に人が溢れ 駅から浴衣姿のカップルや家族 子供達が
露天商の間をぞろぞろと歩いている

川原へとさしかかった時に 夜空には大輪の花が咲いた

一斉に歓声が上がり 花火大会がスタートした


やきそばや たこ焼きのソースの匂い
川原は凄い人の数だ


川面には ぼんぼりや提灯に彩られた数々の船山車が揺れている
その中から祭囃子が聴こえてくる


昨夜の『中町』の船山車を見つけ その見覚えある大人達に話しかけた

『おぉーーー昨日のお兄ちゃんじゃない! こっち来いょ!!』


邦男が話しかける間もなく ビールとモツ煮を4人それぞれ渡された
『中町』ブルー・シートに腰掛け 頭上に上がるスターマインを楽しんだ


『すっげぇぇ!!』 ヒロシが興奮している

『こんな、近くで見るの初めてぇ!』なおみとゆうこも声を合わせた

邦男の隣のほろ酔い加減のおじさんが話しかけてきた
『寄居の花火はな、お尻で感じる花火なんだ。』


なるほど‥ダイレクトに花火の音が川原に響いてお尻に感じる

ババババッババッババババン ヒュゥーーーーーードッカアァァァンンン!!



時間を忘れ 花火に夢中になる邦男達

『3!2!1!ゼローーーー!!』中町・青年部長の掛け声と共に
川原の大勢の観客達と 一斉に恒例のロケット風船を飛ばした


本当に楽しい時間だった




ぞろぞろと帰りの上り坂を人混みの中歩きながら
邦男は何度も 川原を振り返り眺めていた
 

〝いつか マキを連れてこよう〟





この夏の思い出に またひとつ忘れられない景色が加わった











                          つづく





〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟
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『荒川で恋をして。』 第3話

2008-03-25 09:57:57 | Weblog
枕元に朝7時にセットした目覚まし時計を
布団の中から手探りで止める邦男

薄いカーテンから射す 夏の光りの眩しさに
思わず眼を細め 時計を手にする


Tシャツと短パン姿のまま 顔を洗い
タオルで頬を押さえながら部屋の窓を開けた

相変わらずのアブラゼミが こんな早くから仕事をしている


田舎の空気を思いっきり吸い込んだ後
昨夜、夕飯の帰りに立ち寄ったファミリーマートで買っておいた

サンドイッチをほおばり 100%のグレープフルーツ・ジュースで
流し込む様にしながら 今日から始まるバイトの時間を確認した




着替えを済ませ 部屋の鍵を掛け
再び 『寄居駅』から電車に乗り二駅

いかにもローカルな『鉢形駅』で下車 『博物館』までの道を歩いた



坂を下ると 荒川がすぐ傍を流れ、大きな水車が観えてくる

川原ではもう 都心のナンバー・プレートを付けた車が数台
学生達や、家族同士でのバーべQの準備をしている


左手のグラウンドや 右手の小高い場所のお土産物屋を眺めつつ
『博物館』の敷地内へと足を運んだ


中はかなり広く 本館・グッズ売り場とその二階のレストラン
前には散歩コースが広がり 反対側にはアスレチック・ランド

先程の〝水車〟の前には音の出る噴水と
水車から流れる澄み切った水が まるでプールの様に子供達を迎える


『お早うございます!』


邦男は館内の一室で、同じバイト仲間達や職員達との
朝の説明会のその輪の中にいた



施設館内の案内と 設備の操作方法
接客時の注意点などを聞かされること約1時間


開場までの時間 レストラン下の休憩ルームで
ジュース片手にバイト仲間達と、しばしの談笑を楽しんだ



お互いの自己紹介や大学の話


なかでも すぐに仲良くなった同い年のヒロシ・なおみ・ゆうこ
3人の携帯アドレスをお互いに交換し合った



夏休みということもあり
開場してからは たくさんの人との不慣れな接客と質問の応対



一日が〝あっ〟という間に慌しく過ぎていった


夏の夕暮れに 人も疎らになり
ゆるやかな風に吹かれながら 噴水前で眼の前に広がる荒川を眺め

とにかく 一日が終わりを告げることの安堵感でいっぱいだった



片付けを済ませ ロッカー・ルームで着替えながら
邦男はヒロシに話しかけた

『今日、飯どうすんの?』


ジーンズのファスナーを上げながら ヒロシは答えた

『二人誘って、どっか喰い行こうか?』



なおみとゆうこの二人は 他の女性スタッフからの先約があったため

邦男とヒロシは仕方なく、男二人で食事する事にした


ヒロシの住む『男衾』のラーメン屋で
軽く乾杯し、ギョーザと大盛り味噌ラーメンと半ライスをそれぞれ注文した



とにかく疲れた‥



ため息の合間に瓶ビールをお互い注しながら
なおみとゆうこの話と 明日からの互いの健闘を誓い合った



ヒロシと別れ 満腹のお腹をさすりながら
『寄居』の駅を降りてアパートへと歩く邦男



部屋の鍵を開け ゴロンと横になり
携帯からマキにメールを送る



〝もう クタクタです‥笑〟





シャワーを浴び 髪の毛の雫をタオルで拭き取りながら
テーブルの上の携帯を見る邦男



マキからの返信メールが届いていた




〝クニ  おつかれサマ





ニヤリと笑みを浮かべた邦男の顔には
いつにない 充実感が満ち溢れていた








                         


                         つづく




〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟

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『荒川で恋をして。』 第2話

2008-03-23 01:15:26 | Weblog
大学が 長い夏休みに入ったその日

邦男は 大学近くのアパートから荷物をバッグに詰め込み
電車を乗り継ぎ 池袋の東武東上線のホームに居た


と そこへ‥携帯の着信音 馬場俊英の『スタートライン』が鳴った

携帯を開くと 恋人・マキからのメールだった



〝おはょクニちゃんと起きたぁ? 今日からバイトでしょ?
マキはこれから羽田に向かいまぁーーすいいでしょぉぉ
お土産買ってくるからバイト頑張ってね〟



邦男は頭を掻きながら

〝東上線なんか 乗ったことねぇし他になかったんかょ〟

マキに返信した



2分して  マキからのメール

〝だって、マキもこれから大自然の中で暮らすんだから
クニもたまには 都会から離れてみるのもいいんじゃないかなぁって〟



『大自然ったってょ‥ 寄居とか全然知らねぇし‥。 ったく。。』


ぶつぶつと 独り言を繰り返す邦男のもとに
折り返し・池袋発『寄居行き』の電車が入って来た



車両に乗り込み ボストン・バッグの隣に座る邦男

『なんだょ  ガラ空きじゃん。』



昼間の下り電車は 比較的空いていた


発車のベルが鳴り響き ドアが静かに閉まり 電車は走り出した


車窓の景色が ビル群から徐々に駅前・商店街から住宅地へと移り変わる頃

邦男は2枚の紙切れを バッグの外側のファスナーから取り出した


1枚はマキからの手紙 
小田急線から電車を乗り継ぎ 寄居までの行き方が書いてある


もう1枚は マキが通う大学の、寄居の先輩から紹介してもらった
『さいたま 川の博物館』のリーフレット

これから邦男が夏休みの間 学芸員のバイトを始める場所だ



取りあえず 乗換えの『小川町』だけ確認し
しばらく眼を閉じることにした


ガタンゴトン ガタンゴトン‥



〝こんなに長い間 一つの電車に乗るのは久しぶりだ‥〟



午後の空いている車両に 暖かな光りが差し込む

邦男は いつしか深い眠りについた





駅員に起こされ 『小川町』で乗り換えて


『鉢形』~『玉淀』間に架かる鉄橋から見渡せる秩父連山と
真下を流れる〝荒川〟に煌く陽の光りに 邦男は眼を奪われた


いつか、大学の仲間達とキャンプをした 奥多摩とはまた違う
車窓からの風景


邦男の顔は 夏の陽の落ち着き払った時間の色に照らされていた



『寄居』駅のホームに降り立つ邦男
階段を上り 改札を出たところで時計を見る


『ずいぶんとかかったなぁ。』 ため息をひとつ



『さて‥と‥ どっち行くんだぁ?』 左右を見渡す邦男

改札・正面にある 掲示板の脇ショー・ケースの中に
飾られてある地元・商工会のマスコット・キャラ『乙姫ちゃん』

いくつもの関連グッズが陳列されている


『ふぅぅーーーーん。。』



駅前から タクシーに乗り込み 契約済のアパートへ


部屋の窓を開け、荷物を降ろし 胸いっぱいに大自然を吸い込んでみた


そして マキにメールを送る邦男



〝今、着いた  すんげぇーーー田舎だ 何も無ぇ。〟




明日から始まる 『さいたま川の博物館』でのバイト


蒸し暑い夕方に

都会の何倍ものアブラゼミの合唱と カラッポのお腹が
交互に輪唱していた



汗ばんだTシャツのまま 秩父連山に沈みかけた夕日を
火の点いていないタバコを咥えながら いつまでも眺めていた






                     

                       つづく




〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟

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連載 『荒川で恋をして。』 第1話

2008-03-21 15:51:40 | Weblog
とある 都内大学のキャンパス
まだ、照りつける日差しの午後 セミの鳴き声と学生達の声がリンクする


ひとり 折りたたみ自転車の停めてある キャンパス内・駐輪場へと
向かう学生の後姿

その彼が背負う〝迷彩柄〟のワン・ショルダー・バッグの
掛かる肩を ポンと叩かれ 彼は振り返る


『なんだ 修二かょ。』 彼は残念そうな顔をして呟いた


『あらららら? なになにぃ~! 邦男ちゃぁ~ん、そんな顔しないのぉ~。』

修二は邦男の横に並び歩き 話し始めた

『明日から、夏休みなんだしさ! 大学二年の夏休みよぉ?!邦男ちゃん!!』


『お前は相変わらずだね‥普段も夏休みも変わんねぇじゃん
ちゃんと単位取れてんのかょ‥。』

邦男は呆れ顔で笑いながら言った


『ってかさ、マキちゃんと何処いくのょ? 教えてみ?み?』

修二は 茶化す様に邦男に聞いた


『あいつさぁ、夏休みの半分以上は北海道の叔母さんとこだって‥
叔母さんとこ、中三の受験生がいるみたいでさ 住み込みの家庭教師ょ‥。』

口をポカンと開けたままの修二に続けた

『北海道の従妹と出掛けられるし バイト代は入るし‥
一石二鳥だって‥ 信じらんね‥。』


再び 邦男の肩をポンと叩く修二
そして、肩を抱き寄せる様に話した

『そりゃぁぁ~残念だったね邦男君!! 
今夜あたり、パァっとやりますかぁ?!』 修二は高笑い


軽くしゃがみこみ 自転車のチェーンを外しながら邦男は言った

『あーーダメダメ‥ 俺 明日早いんだ。』


『なんでょ?』 修二は邦男を覗き込むように聞いた


立ち上がり 振り返りながら邦男は言った

『だって俺、明日から住み込みのバイト入ってんもん。』


『なんか悲しいねぇ~君達!! 学生は遊ばなきゃ!!』修二は言った


『お前みたいにね、お坊ちゃまじゃないですから‥
毎晩、毎晩 クラブだ何だって‥ 少しはバイトくらいしろょ。』

邦男は自転車にまたがり 修二の肩をポン!と叩いた


修二は笑いながら 

『この間まで一緒に 六本木で遊んでた邦男ちゃんの口から
そんなお言葉が聞けるなんてな‥ んで、何処いくのょ?バイト。』


『言っても解かんねぇょ、すっげぇぇ田舎 埼玉の〝寄居〟ってとこ 秩父と熊谷の間だな。』

邦男は話した



修二は、駐輪場の向い側の駐車場に停めた
真っ赤なポルシェのウィンドゥを開け 大きな声で笑いながら言った

『なんかぁ  熊が出そうだな。』

すると排気音と共に 軽く手を振り、走り去った



邦男は一呼吸し セミの鳴き声の聞こえる 
木漏れ日が差し込む 大きな木を見上げながら

『熊ねぇぇ~。』



自転車を 静かに漕ぎ出し

学生達の賑わうキャンパスを颯爽と後にした





                          つづく




〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟


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『新幹線大爆破』

2008-03-20 16:39:40 | Weblog
春分の日の今日は、あいにくの雨
みなさんお家でのんびりとお過ごしでしょうか?

こんにちは 大橋理容室です


さてさて 商工会・白川職員と共に頑張っております
〝よりいフィルム・コミッション〟

先程も彼から連絡が入り、ロケ・スタッフさんも
すっかり『寄居の町並み』をお気に入りのご様子

今回は〝ロケ誘致〟決めたいところです


本日は、昨日と代わってお店もひと段落しているので
僕のお気に入りの映画についてのお話をしてみようかと思います。


ずっと、さかのぼること1975年の作品
高度経済成長に批判する、過激派学生運動の残党・犯人グループが企てた計画とは‥

『新幹線大爆破』(75年)東映

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが
以前、お客さんに教えて戴き

『どーーしても観たいっ』と
寄居・花園両TSUTAYAさんに置いてなかったので‥

嵐山店まで行って、会員になり借りたのを覚えております


どーーしても観たかった理由とは
なんと、この作品 我が『寄居町』も登場いたします


東京-博多間を走る〝ひかり109号〟
時速80Kmに達すると、仕掛けた爆弾が爆発してしまう

似たような洋画作品が後に登場しますが、こちらが本家本元
乗客1,500名の命を守る為、国鉄司令室と警視庁そして犯人グループとの
手に汗握る頭脳戦

主演・犯人主犯格役の高倉健さんが、当局に500万ドル(公開当時のおよそ15億円)の
〝身代金〟を積んだヘリを
『寄居桜沢高校の校庭に降ろさせろと指示するシーン

お隣の長瀞町もライン下りを使って逃げるシーンで登場します笑


キャストは、あの時代若かりし頃の東映系の看板スター勢ぞろい
いわゆるところの〝超豪華キャスト〟

健さん始め、宇津井健・田中邦衛・山本圭・小林稔持・千葉真一・志保美悦子
藤田弓子・浜田晃・渡辺文雄・竜雷太・多岐川裕美・岩城滉一・丹波哲郎と‥まだまだ名優ぞろい


現在はTSUTAYA寄居店さんにも置いてあります


まだご覧になられていない方
是非、一度観てみてくださいね

時代背景と共に

映像を通してのタイム・スリップもたまには楽しいですょ


現在の〝寄居〟も映像作品に残しつつ
全国のみなさんにも発信出来る様、FCも頑張りますね




〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟
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〝ロケハン〟

2008-03-19 10:02:17 | Weblog
昨日とはうって変わって、どんより曇り空

昨日の〝花粉〟がいまだ、鼻をつきます

寄居町のみなさん おはようございます 大橋理容室です


今朝一番のお客様
商工会の、僕のお店のページをご覧になってお越しくださいました

実はまだ あまりパソコン得意じゃないのですが‥
昨年・暮れあたりから お陰さまでこういった新規のお客様が増えております

なかなか〝インターネット〟が直結しづらい職業ではございますが
改めて、『すごいなーーー』と感心しております

逆にそれだけ いろいろ注意しながら一生懸命やらなきゃ
思い返す今日この頃ですね


お店の連休だった昨日は
商工会・白川職員と頑張っている『よりいフィルム・コミッション』

映画の〝ロケハン〟で
町内あちらこちらを、スタッフさんを乗せ案内しておりました。

映画『恋空』以来の折原地区 
今年1月に〝クドカン〟映画のロケハンで廻った寄居町も

改めて観ると、ホント素敵な場所があちこちにたくさんあり
映像を通して全国に発信したい想いがまた強くなりました。


そこで 
みなさんにもご協力戴きたいのですが

〝石段のある 割と広い境内の神社〟こちらを探しております


出来れば、もちろん『寄居町内』


たくさんの情報をお待ちしております




〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟
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ふぇーーーーっくしょいっ!!

2008-03-12 15:42:57 | Weblog
昨日とは、打って変わっての曇り空

季節の変わり目は 体調を崩しやすいので
みなさんも、充分ご注意下さいね

こんにちは 大橋理容室ですょ


昨日の花粉がまだ残っているのか‥
朝から、くしゃみと鼻水の連発

なにぶん 刃物を持つお仕事なので
緊張しっぱなしで ドっとくたびれながらの更新です


せっかくの連休で4月中旬~下旬の陽気にもかかわらず

ご飯を食べに行くとき意外はお家に篭っておりました

そうそう
久しぶりに〝寄居・TSUTAYA〟さんで、DVDを借りて観たんですょ


ウッチャン監督作品 映画『ピーナッツ』


2年くらい前のものですが
気になっていてなかなか機会がなく

コーラとポテチを買い揃えて
久しぶりにのんびりと、絵に描いたようなホーム・シアター

ご覧になられた方もいらっしゃるかと思いますが
舞台は地方の田舎町に在る『商店街』の草野球チームのお話。


自分達も普段、直面している問題がお話の軸となっています


すごく有りがちなストーリーと
〝あのメンバー〟によるコメディ映画な訳ですが‥

すごく伝わってくるものばかりで
ラスト・シーンでは感動の涙が、不覚にも零れ落ちてしまいましたょ



何かを感じること 何かに気づくこと


それは〝何かを変えたい〟

そう思いながら、一生懸命に走り続けている者にしか解らない。


エンディング

主題歌・馬場俊英さんのライヴ定番曲でもある『君の中の少年』



30~40代が

普段、何を想い 何を感じながら 何を残したいのか‥


上手く表現した映画でした


機会がありましたら
是非、ご覧になってみてください




〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟
コメント (6)
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