新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

要するに如何にして聴衆の集中力を保たせるかだ

2017-05-18 08:17:06 | コラム
上手なプレゼンテーションのやり方は:

昨日我が国のUNの議場での発言というか発表の仕方を批判したが、在職中に感じていたことをズバリと言えば、我が国におけるプレゼンテーションの仕方に問題があると思っていたということである。W社に転進して教えられたその技法には、大袈裟に言えば「目から鱗が落ちる」ような感があった。そこにはチャンとマニュアル化された資料があり「これに従って準備せよ」と言われた。アメリカの会社との文化の違いを痛感した。

そこで、散々経験してきた社内でのプレゼンテーションの記憶を呼び戻して、諸賢のご参考までにその(W社流であるとは思っていないが)手法を申し上げておこう。このやり方はPCのような文明の利器が普及していなかったオーヴァーヘッドプロジェクター(OHPというのは日本語である)の時代のものだが、根本原理はパワーポイントにも適用出来ると思っている。

(1)表紙には当日の演題だけを表示して、何を語るかを明らかにする。そこに日時を記入する必要もあると思う。

(2)掲示する資料の各ページには先ずそこで語るべき内容、例えば「日本市場の動向」のように表示し、そこで詳細に語るべき内容を3項目の見出しに纏めて明示する。記載するのはその3項目のみなので、大きな空白というか白紙の部分が残る。ここで注意し遵守すべきことは、3項目以上を記載しないことである。その理由はそれ以上を示すと、聴衆はそれを目で追ってしまい、語りを聞いてくれないことになりかねないからだ。

即ち、自分が語るべきことを事前に十分に整理して、3項目の見出しに纏めておく必要がある。英語では、これらの表示する項目を”bullet”か”punch line”と呼んでいる。なお、4項目になっても特に問題は生じないが、多くなればなるほど読んで貰う時間が長くなると知るべし。

(3)注意すべきことは表示した項目以外のことを語るのを極力回避するということ。いや、触れてはならないと思う。それは、聞き手が一瞬「アレッと」思って注意が散漫になるからだ。要するに「如何にして聞き手に集中力を保って貰うかを図ること」が肝腎なのだ。誰が聞いても面白く笑い転げるようなプレゼンテーションなどないだろう。

(4)語り(”narrative”というが)は事前に十分に練り上げて、可能ならば第三者の意見も採り入れた方が良いだろう。ということは十分に推敲して聞き手が確実に聞いてくれるような内容にしておくことだ。”narrative”の原稿が完成したならば、リハーサルを繰り返しておくことだ。中には全文を暗記暗唱しようと努力する人もいるが、私は現場では原稿を持って目で追って確認しながら語っているようにしていた。

この語りの原稿は印刷して置いて「興味がおありの方には後ほど差し上げます」ということ。絶対に事前に配ってはならない。配ってしまえば、聞き手は読む方に神経を集中して肝腎の語り(=プレゼンテーション)を聞いていないことになってしまう。手間がかかっても準備しておくのが親切だ。

(5)図表や統計資料を掲示しないこと。それらが何を示すかを語って「実はこういう図表もあります。これらは後ほど資料として差し上げますのでご了承を」と言うこと。即ち、掲示したければしても良いが、そうするのは一瞬で良い。我が国の多くのプリゼンターは表等を見せて聞き手が観客に変わってしまい、語りを聞き逃すように追い込んでいる例が多かった。回避すべきことだ。

(6)質問にどう対応すべきか。屡々語りの途中に質問をしてくる方がある。これを押さえるのは難しいのだが、私は「ご質問は語りが終わってからお答えしますので、宜しくご理解のほどを」と最初に断っておくことと教えられていた。

(7)目のやり場。これは講演でも同じことだと思うが、なるべく中央を見て誰か一人に焦点を絞っておくことにしていた。そして、余裕が出てきたら会場を見回して「誰か聞いていない人がいるかな」と探すようにしていた。

大要、以上のような次第だ。余談だが、UNの議場にはスクリーンが何処にあるのか見えないが、パワーポイントのなどは活用されているのだろうか。



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