新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

カタカナ語排斥論者は言いたい

2013-11-13 07:57:36 | コラム
自己ベストとは何のこと?:

10日にNHK杯のフィギュア-スケートの中継を見ていて、特に気になった事があった。それはアナウンサーが何かと言えば「自己ベスト」なるカタカナ語と漢字の熟語との合成語を連呼していた点。中でも一度「パーソナル・ベスト」と叫んだのが面白かった。「自己ベスト」が気に入らないのは当然だが、何故「パーソナル・ベスト」なる英語もどき?を混ぜたのか気懸かりだったし、不思議だった。

では「英語なら何と言うか」との疑問が出てくるだろう。実は、私は上記の"personal best"は正解だと思っている。理屈を言えば、その前に"one’s"を付けて末尾に"record"を加えればより良いのだが、カタカナ語にはそこまで要求しないでも良いだろう。他には"one’s personal record"というのもある。何れにせよ、自己ベストは珍妙であり私が一般論として主張する「カタカナ語が我が国の英語力発達を阻んでいる」の適用範囲内に入ると指摘しておきたい。

この問題点は「我が国には、この種のカタカナ語の概念をそのまま英語に置き換えると英語として通じる」と思い込んでいると思われる方が非常に多い思わせることである。「自己」が"personal"に相当する意味を持っていると知っていないと、"personal record"ないしは"personal best"になってこないのだ。即ち、カタカナ語と同じ意味を持っている英語の「単語がある」と思い込んではならないのである。即ち、bestと言っただけでは何ものも特定されていないと彼らは思うのだ。

「個人的」を別な視点から言えば、カタカナ語で「プライベート」(private)となっている言葉は、英語では"personal"であることが多いのだと、ご承知置き願いたい。名詞としての"private"は「私生活」という意味はないのだが。

他に例を挙げておくと、我が国では日常的に「~をアップする」、「~がダウンした」と前置詞か副詞である「単語」を恰も動詞のように使っているカタカナ語がある。これは良くないと思う。例えば「Xさんの(フィギュア-・スケートの)技術がレベルアップした」、「年俸がアップ(ダウン)した」のように。この用法は最早完全に日本語として戸籍を得ており、広く通用している。

だが、これを英語にしようとするとかなり難しいと思う。前者などは「"X has improved his skating skill."とでも言えば何とかなるかな」などと悩んでしまう。後者も難物で、私の知識には「昇給」を"pay raise"とする言い方がある。昇給は"raise"を使うのだが、下がった場合は"cut"か"reduce"を使えば良いのかなと考えている。「給与」は"salary"で良いのかも知れないが、普通には"pay"を使って話していた。要するに、事給与に関しては"up"も"down"も出てこないということだ。

このように日本語化されてしまった英語の単語の中には、そのまま英語にはならない例が多いという点を認識しておいて貰いたいのである。今回はこれくらいの例に止めるが、日常使われている簡単なカタカナ語を英語に訳そうとしてみられれば、その作業が如何に難物かが見えてくると思う。換言すれば「日本語だった」と解るのだ。