『美作の野は晴れて』&『138億年の日本史』&『岡山(美作・備前・備中)の今昔』

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◎一一七の三『138億年の日本史』享保の飢饉

2017-05-17 21:23:22 | Weblog
一一七の三『138億年の日本史』享保の飢饉

 世に「享保の大飢饉」と呼ばれるものは、1932年(享保17年)、これによる被害が西国を中心に甚大な規模に達していたことが伝わる。
 「享保十七年壬子年正月頃は広島米、代、新銀三十九匁七分より四十目。備前米、代、同三十八匁五分より三十九匁。中国米、代、同、三十六匁三分より三十七匁。
 然る処今年七月初より、西国・中国・九州筋四国田畑虫付き不熟凶作により、当九月以後は一時に米価貴くなり、米一石代新銀百三十目より百五十目位。(中略)
 当年西国筋都て大凶作なれども、東北国々豊穂にて天の命助を蒙り、凶作の国々も士民安堵す。右の通り西国筋は田畠不熟にて米穀数なく、又士民ともに飢渇に及び、道路に倒るるもの其の数をしらず。西国・四国・九州大小の諸侯、米穀払底にて士民の撫育も出来難く、公務を欠て迷惑に及ぶ。これに依て公儀より拝借金を仰付けられ、猶又大坂始め公領の市民餓死する者は、現米を以てこれを救はる。
 亦市中の富民より米銭雑物迄を出し飢民を救ふ。然れども去亥年市中の買持米これ有に付、大抵八九月の頃迄は窮民も可なりの取続きせしところ、追々米穀払底にて、十月後に至りては餓死するもの多し。茲に因て公儀よりも東国・北国の領主地頭へ下知せられ、数万の米穀を大坂又は西国筋へ積出さる。尤も東北の国々昨今年は作方豊熟にて、当九月・十月の頃より十二月迄の登り高左の通り。これに依て米価漸く下落す。
 北国登り米凡そ二百三十万石。東国登り米凡そ八十七万八千石。右登り高大数といへども、西国・四国・九州筋へ積下し、此年冬大坂堂島有米勘定高十八万千七百石といへり。」(『三貨図彙』)
 これに「西国筋は田畠不熟にて米穀数なく、又士民ともに飢渇に及び、道路に倒るるもの其の数をしらず」とある。別に『虫付損耗留書』と銘打った史料があって、その中には、諸藩が大坂から幕府の払下げ米(配給米)を受けるため、幕府に差し出した調書の内容がまとめてある。それによると、この年の物成りが半減以下の諸侯は、西街道の27藩、南海道10藩、山陽道4藩、山陰道4藩、畿内1藩の広範囲に及んだ。餓人の数は総数199万余、餓死人1万2172人に上っていた。実際の被害者数は、どうであったのだろうか。
 念のため他の史料を探すと、『徳川実記』の「享保十八年正月の条」には、「すべて山陽・西海・四国等にて餓死する者九十六万九千九百人とぞ聞こし」とある。これへの各藩の対処としては、「西国・四国・九州大小の諸侯、米穀払底にて士民の撫育も出来難く、公務を欠て迷惑に及ぶ」という程の有様であった。ついては、「公領の市民餓死する者は、現米を以てこれを救はる」とあって、ちなみに、サツマイモ)を栽培していた鹿児島藩や御三家の一つである紀伊藩は、払下米を申請していないことから本調書の数字から除外されている。
 それから、この制度の仕組みについては、元来は気象学者の荒川秀俊氏の説明に次の記述が見える。
 「その恩貸金の制はつぎのごとくであった。損害額が三十万石以上は二万両、(中略)、一万九千石より一万石までは二千両という制によって、大坂の官庫から貸し賜り、きたる享保十九年から五年をかぎって年賦で返却すればよいとした。
 この金は虫害で凶作になった飢民の救済にあてるための米穀の購入代金であるが、前述したように薩摩藩では甘藷を作っていたので、飢饉にはなっていないとして恩貸金を辞退しているし、逆に伊予松山藩の松平隠岐守定英は、領内で飢饉による餓死者を多くだしたという咎(とが)で出仕を止められる羽目(はめ)になった。
 じっさいに何十万両という正金が幕府の官庫にあったわけでもなく、何十万両という正金を貸したわけでもない。大坂に廻送した幕府の米を時価に換算して出た金額だけ、名目の貸金のなかから差し引くという方法で、大坂の倉庫から、西日本の大名たちに領民用の米穀を引き渡したのである。したがって、時価といっても、市中の米価より低廉であっただけで、享保十七、八年には米価が高かったわけだから、長期的にみれば高い米を買わされたわけであり、幕府は年賦無利子の貸金をしたとしても、大して腹はいたまなかった。事実、そんな内実もあったから薩摩藩では恩貸金を断っているのである。
 以上は一万石以上の大名についてであるが、万石以下の旗本にも領地で虫害を受けた面々には、虫害の程度にしたがって同様な恩貸金が五年賦で貸し与えられた。」(荒川秀俊『飢饉』教育社、1979)

(続く)

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