◎143の2『自然と人間の歴史・世界篇』スターリン時代のソ連経済から(1950年)

2017-09-22 22:17:55 | Weblog
◎143の2『自然と人間の歴史・世界篇』スターリン時代のソ連経済から(1950年)

 スターリン時代のソ連の計画経済では、生産物の一切が中央国営市場を通じて、公定価格で販売されていました。価格が改訂されないと、需給の均衡点への収束が起こらず、供給過剰(需要過少)のときは、資本移動がスムーズにいかないものです。また、供給が不足していても、価格が変化しないので供給意欲がそがれてしまいます。
 これらは非効率は国民にとって耐え難いたえがたいものだったでしょうか。生産物を隠匿して値上がりを待ち受けたり、ヤミ市場に横流しして利益を貪ったりする者は重罰に処せられたので、こうした不正は少なかったのではないでしょうか。この非効率と、インフレや失業からくる非効率を天秤にかければ、どちらが重かったのでしょうか。初めから、価格の硬直性による非効率により国民経済が被る不利益は耐え難いものであったと決めつけるのは、公正・公平ではありません。それと、当時はまだ生産物の差別化が進んでいない、少品種大量生産の下では消費者の嗜好によってそれほど売れ残るということはありませんでした。広大な国で資源も豊富であるため、社会主義共同体の中以外では、国際経済関係との調整をさほどに考えなくてもよかったのです。 
 1950年代までのソ連の財政・歳入においては、取引税の全歳入に占める割合が約半分もあった、との報告もある位、そのウエイトは高いものでした。1965年度予算では、ややウエイトが下がって、歳入総額の39%を占めている、と伝えられます(日本銀行「ソ連経済改革の背景と問題点」、岡稔・竹浪祥一郞・山内一男「社会主義経済論」筑摩書房、1968)。
 「ソ連邦国家財政の収入と支出(10億ルーブル、当年価格)より抜粋
1950年
①収入総額:42.3(100%)
うち取引税:23.6(56%)
うち利潤控除:4.0(10%)
うち各種租税:3.6(8%)
その他:11.1(26%)
②支出総額:41.3(100%)
国民経済費:15.8(38%)
社会文化費:11.7(28%)
国防費:8.3(20%)
その他:5.5(14%)
(出所:ブルイシェフスキー「ソ連邦国未完所得の分配」1960年、「ソ連邦国民経済統計集」1965年版。引用:(岡稔・竹浪祥一郞・山内一男「社会主義経済論」筑摩書房、1968)
 同国の体制では、社会の剰余生産物は大まかに企業利潤として企業に残される部分と、国家に上納される「取引税」部分とに分けられ、後者が国庫に入ることで基本的には次期の国家歳出に充てられてるシステムになっていました。
 いま生産財について適用される「工場(=企業)卸売価格」を例にとると、
 W=C+V+M:(総体の価値構成)
w=c+v+m:(個別の価値構成)
うちc+v部分は総原価に転化、m部分が(企業利潤+取引税+卸売割増+商業割増)
ここで、卸売割増は(卸売経費+卸売利潤)、商業割増は(卸売経費+卸売利潤)から成ります。
「工場(=企業)卸売価格」=総原価(:減価償却を含む物的支出)+賃金)+企業利潤:① 
一方の(卸売割増+商業割増)を省略すると、
w=c+v+m:(個別の価値構成)が転化しての「小売価格」=総原価(:減価償却を含む物的支出)+賃金)+企業利潤+取引税:②
個別価格の要素としての②から、同じく個別価格の要素としての①を差し引いた残りの額がプラスなら、その部分が取引税部分、逆にマイナスなら国家からの価格差補給金の支払いとなる理屈、とされていたようです。
(注)流通における生産的労働部分は捨象する。
 実際には、生産財の卸売価格(一般消費者向けのものには、小売り価格も設定されていた)が低く設定され、消費財の価格が割高であった中では、消費財部門からの税徴収が多くなります。とはいえ、消費財価格が高騰するようではいけませんから、その原料となる農産物の調達価格を低位に抑制する政策がとられてきたことがあります。
 1965年からの経済改革以前のソ連でとられていた「価格政策」とは、このように価格体系を国家・計画当局が人為的に操作することが当たり前のようになっていたことが、数多く指摘されているところです(例えば、野々村一雄編「社会主義経済論講義」青林書院、1975などを参照のこと)。また、「利潤控除」という項目がありますが、これは原価引き下げの成否にかかわるものであり、原価引き下げの政策課題が未達成の場合は、あまり当てができなくなってしまいます。国家蓄積の財源確保のためには、利潤控除より取引税の方がはるかに確実でした。とはいえ、取引税による国家資金の調達に頼る度合いが増せば、その分価格政策を財政政策に従属させることになり、価格が果たすべき機能、特に社会的労働計算、ひいては資源の効率的配分を弱める働きがあったことは否めません。

(続く)

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