(347)『自然と人間の歴史・日本篇』1990年代前半の日本経済

2016-09-15 20:33:27 | Weblog
(347)『自然と人間の歴史・日本篇』1990年代前半の日本経済

 1990年代前半の不況については、丸尾(筆者)は、こう述べたことがある。
 「5年越しの好景気は90年末には崩れ、経済は金融を巻き込んだ金融経済危機の様相を呈しました。それでも1991年1~3月期の実質国民総生産は年率ベースで11%の高成長で、不況の度を増したアメリカの同時期がマイナス2.6%に落ち込んだのと対照的な展開でした。
 好況末期にはバブル現象が生じました。 行き場を失った大量の資金が土地や株式の神話に群がりました。日本のマネー・パワーの源は85年秋のプラザ合意以降やってきた急激な円高とともに現出した低金利であり、これが企業業績を確かなものにしているように見えました。
 低金利のカネの源泉の一つは、1200兆円もの個人資産であり、その二つは大企業の内部留保である。その3つは膨大な対外黒字という資本流出の原資もさることながら、それ以上に対外投資を殖やすべく行い続けたユーロ市場などから短期借りをして長期貸しの存在でした。「走れトロイカ朗らかに粉雪蹴って」というところだったでしょう。
 この3つめの要因については、もう少し説明しておきましょう。1985年末のユーロ銀行市場に対する債券・債務残高のネットは748億ドルの借り入れでした。それが90年になると、3891億ドルの借り入れに膨れ上がっていたのです。日本に次いで第2位の債券大国と言われたドイツ(旧西ドイツ)がそれぞれ144億ドルの借り、1104億ドルの貸しであったのと比べると大きく異なります。
 債券大国日本の銀行は、国際金融市場から外貨をせっせと調達し、それを生命保険や損害保険、信託銀行などの期間投資家が海外証券投資に向けていく。銀行はといえば、調達したドル資金を機関投資家に売るとともに、返済の準備があるので、輸出業者のドル資金を目当てにドルの先物供給予約をとり付けておく、つまり将来の輸出を当てにして短期資本を取り入れ続けるという、切磋琢磨の構図が浮かび上がってくるではありませんか。(週刊「東洋経済」91年7月6日にBank of England Quartely Bulletinのデータが引用されています。)
 日本の株式のおよそ7割は企業間の持ち合いであって、値崩れすることはないとも、まことしやかに叫ばれていました。ところが、実体経済では需
給ギャップが開きつつあって、その増大の圧力をもろに受けて至るところでは不良債権問題が積み上がっていました。
 86年12月以来の景気拡大が減速傾向に移ったのは、バブルの過熱を冷やそうと89年5月に日本銀行が実施した公定歩合の2.5%から3.25%への引き上げによる金融引き締めがきっかけでした。89年5月から90年8月まで5回の公定歩合引き下げが行われてゆくのです。
 それから90年を経て、91年秋には設備投資のかげりがはっきりして、景気後退を顕在化させたのです。民間設備投資はバブルの88年度から90年度の3年間に、平均15%も増えていましたから、急角度で減少に転じた訳です。
 従来型の不況と違うのは、原材料減らしが中心だった過去の在庫調整と異なり、今回のケースでは自動車や家庭電化製品など最終消費財まで在庫調整がおよんでいるということで、調整が長期化に向かったことがあげられます。また、株価が大幅に下落して、金融機関に含み益の減少や不良債権の増加をもたらしました。
 そこでまず貿易不均衡への批判をかわすためとはいえ、なぜあれほどまでに金融を緩めたのでしょうか。
 金融機関は、なぜ値上がりする土地を担保に信用創造を市場に与え続けたのでしょうか。政府はなぜやがて来るであろう利害の衝突を回避する措置をとらなかったのでしょうか。
 こうした複合的な問題を解決するためには、真に勤労国民の立場に立った経済運営こそが求められたのですが、80年代を通じて弱体化していた勤労者運動と革新勢力にはそれだけの力が蓄えられていませんでした。
 91年度下期の企業倒産は初めて6千件を超え、政府発表の完全失業率は上昇のテンポを早めていきました。不況になってから95年始めまでに卸売物価は約10%下がりました。85年のピーク時から見ると約20%も落ち込んでしまったのです。独占大企業は生産調整で値崩れを防ごうとしました。」


(続く)

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