(267)『自然と人間の歴史・日本篇』平和と民主主義と基本的人権

2017-08-09 10:16:20 | Weblog
(267)『自然と人間の歴史・日本篇』平和と民主主義と基本的人権

 日本国憲法の最大の特徴というのは、やはり国民主権ということになる。前文には、国民が主権者であることが明確に述べられている。1946年(昭和21年)、天皇は「日本国民統合の象徴」と規定されるに至った。これからして、天皇は、もはや日本の政治に実権を持つ意味での、国家機関としての「元首」ではなく、その上に立つ日本国民がその「象徴」としての地位を与えたことになっている。
 加えるに、天皇その人にも、私たち国民と同様の人としての私的地位のほかに、公的地位については、国家機関としての地位と象徴としての地位とに分かって語られるべきではあるまい。この理解を踏まえての橋本公亘(はしもときみのぶ)氏の論考に、こうある。
 「それは、国家機関として「国事に関する行為」を行うことの他に、広く天皇の公的行為を認める端を開くものである。天皇が象徴としての地位を有し、そのことにもとづいて、国事行為をなす権能を与えられているのであり、国家機関として国事行為を行うのである。さきにも一言したように、天皇が象徴であるといっても、天皇が国旗と同じような意味で扱われているわけではない。憲法上、一定の権能が与えられているのである。公的地位の中に二重の性格を認めるべきではなく、かかる名目的形式的国事行為をなしうる国家機関としての天皇の地位を象徴と名づけたものというべきであろう。」(橋本公亘『憲法』改訂版、青林書書院新社、1976、410~411ページ)
 なお、これに関連していうと、首相も「元首」ではなく、「元首」たる者の規定が憲法にないという意味では、将来に含みを持たせていると言えなくもない。
 新憲法で認められたの大きな変革に、女性参政権があった。これに至る淵源は、敗戦までの日本の公民権運動にあったというよりは、それよりも連合軍による日本占領の「賜」であったともいえる。ともあれ、世界の潮流となりつつあった女性参政権が、敗戦後の我が国に導入されたのは、この国の民主主義にとって一大劃期となったことは、疑いない。
 国際的には、どうなっているのだろうか。その外国の淵源の一つとしてのアメリカ合衆国憲法補正第19条に、こう記されている。
 「合衆国も、いかなる州も、合衆国市民の投票権を、その性別を理由として奪ったり、制限したりすることは許されない。」(飛田茂雄「アメリカ合衆国憲法を英文で読むー国民の権利はどう守られてきたか」中公新書、1998)
 ちなみに、男女の完全平等原則が最初に導入されたのは、ロシア革命によって成立した最初の憲法であるロシア社会主義連邦共和国憲法(いわゆる「1918年憲法」)においてであった。この憲法は、国の最高の立法・執行・監督機関は全ロシア中央執行委員会(31条)であり、最高権力は全ロシア・ソビエト大会(24条)とするからわら、雇用者以外の18歳以上の市民男女の選挙権・被選挙権が認められた。
 これらの人類所産を写して、敗戦の年1945年(昭和20年)12月には改正衆議院選挙法が公布され、翌年の戦後初めての同選挙で、女性79人が立候補した。女性の投票率は67%を記録し、衆議院に39人の女性が議員当選した。同じ1946年(昭和21年)には日本国憲法が公布され、男女平等がうたわれており、遅ればせながら、我が国もようやく民主政治に向けた大きな一歩を踏み出したといえる。また、憲法の第9条には戦争放棄がうたわれた。これにより、国家成立以来の悲惨な戦争をくぐり抜け、軍部独裁が招いたといえる多くの戦没者の犠牲の上に、これからは二度と戦争に加わってはならないとの決意を新たにしたことになっている。
 基本的人権というのは、戦前までのこの日本には、目立った出番はなかった、といっても良いのではないか。それが、戦後の日本国憲法の第97条で、づきのように高らかに宣言された。
 「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の成果であって、これらの権利は過去幾多の試練に堪へ、現在及び未来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」
 互いにぶつかりあう政治の諸力に対して、いやそのことよりも個人の尊厳と、これに基づく基本的人権こそが人間社会の根本理念にならねばならないことを述べた。なお、この条文については、自由民主党の憲法草案(2009年改定)からは、志す価値観が根本的に異なるということであろうか、全文削除されている。

(続く)

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