二七八の四『138億年の日本史』20世紀の天文学(20世紀後半)

2017-06-02 08:56:47 | Weblog
278の4『138億年の日本史』20世紀の天文学(20世紀後半)

 1970年代初頭、アメリカの天文学者ヴェラ・ルービン女史がアンドロメダ銀河を観測していた。この銀河は、私たちの銀河系と同じ渦巻銀河で、星たちは銀河の中心を軸に回転している。星たちは全体として平たい円盤状を形成しているのであるが、星の数は円盤の内側ほど多く、円盤の外側に行くにしたがってまばらになっていく。そのため、私たちの目に見えている星が銀河にある全ての物質だとすれば、星が多く集まる銀河の内側ほど星を内側に引っ張る引力が強くなると考えられ、これでは回転がとまってしまう。
 この前提で強い引力と釣り合うためには強い遠心力が必要であり、そのためには内側の星ほど回転の速度は速くならないといけない。ところがルービンは、銀河の回転速度が銀河の内側と外側でほぼ同じである、つまり中心から遠く離れても遅くならないことを発見した。これを説明するには、星が少ない銀河の外側にもたくさんの物質がなければならない。そこで、ここは目には何も見えない、つまり不可視の物質で満たされていると考え、これを「ダークマター」(暗黒物質)と名付けた。
 1979年3月、天文学者たちはクウェーサーと呼ばれる準星状天体の発する強い光を観測し、その中に地球との間に凸(とつ)レンズのような働きで像を結ばせる、強い重力が働いているときにあらわれるのを発見した。これは、観測されるべきクエーサーが発した光が、途中で銀河もしくは銀河団によって作られた重力空間を通過するとき、その光が重力の力によってあたかも水やガラスレンズ の中を通過するように屈折率が大きくなって、光が曲げられて地球と観察者に届くというもので、「フヴオリソン・アインシュタイン効果」、一般的には「重力レンズ効果」と呼ばれている。これをもって、「光は曲がった空間に沿って直進する」(NHK「宇宙を読み解く」シリーズの第14回「深まる謎:ダークマターとダークエネルギー」(2015年1月6日放映分)での放送大学の海部宣男客員教授(国立天文台・名誉教授)、放送大学の吉岡一男教授による、今日までの「考え方と観測事実」の系列の整理、その他より)とも言えるのだ。
 1994年に撮影されたNASA(アメリカ航空宇宙局)のハッブル宇宙望遠鏡による写真を使って、このダークマターの3次元の解析が試みられた。ここでの重力源は、私たちから50億光年彼方の銀河にある。これらの星は太陽ができる前にこの光を放ったから、これらの星はいまや存在していないかもしれない。だが、写真の中で奇妙なことがあり、それは青い光が細い弧状になって見えていることだ。
 1989年、アメリカにより、宇宙背景放射探査衛星(COBE)が打ち上げられる。
これは2.2トンの極軌道衛星であり、軌道長半径900キロメートルの太陽同期軌道を回ることになる。これに搭載のFIRAS(遠赤外絶対分光測光計)によるスペクトル測定では、測った値と予言されていたプランク分布(ビッグバン理論から予測されるマイクロ波の2.728K)が完全一致した。これにより、宇宙には熱平衡状態の名残が残っていたことがわかる。測定された宇宙背景放射の温度は、これまた搭載のDMR(差分マイクロ波放射計による測定で、それぞれの方向によって10万分の1程度揺らいでいる、つまりほんの僅かだけ異なることが発見された。これは、宇宙がゆらぎから形成されてきたことの証拠なのだとされる。
 さて、この宇宙背景放射を利用して、宇宙の曲率を直接測るために大規模な計測が行われた。2つの観測は、それぞれ「ブーメラン」、「マキシマ」と名付けられたグループによって実施された。ブーメランでの観測は,米国とイタリアの大学のチームが中心になった。1998年の12月から1999年の1月の約10日間、計測の場所には南極が選ばれる。こうすれば、南極大陸の上空を2週間かけてぐるりと回っても戻ってくれる。この地なら、こうやれば地球が自転しても、同じ方向からの電波が捉えられる。だから、付近の電波に邪魔されず、絶対温度で3度の電波を捉えることができると考えたのである。
 1998年、天文学者のグループ(ソール・パールマター、ブライアン・シュミット、アダム・リースの3人であるが、シュミットとリースは共同研究者なので、2チームであるとされる)が宇宙の物質がとのくらいあるかを調べるために、宇宙の膨張速度の微妙な減速度合い調べていた。遠い場所にあるおよそ50個の、「Ia型」(イチエー)と呼ばれる超新星を見つける。それらを観察して、どのくらいの割合で宇宙の膨張速度が減速しているかを調べるのだ。ここでの「Ia(イチエー)型」の超新星は、宇宙を測る時の尺度になる。ある超新星爆発で、その爆発の継続時間により最大の明るさがどれも同じ(一定)性質を持っている。これを使うと、非常に遠方の銀河での「Ia(イチエー)型」の超新星の爆発を捕らえ、その明るさを測る。その見かけの明るさから距離を知ることができる、つまりはその銀河の後退速度と比較することができるのだ。
 その観測データが発表されると、従来の宇宙論をひっくり返す程の大発見であった。その結果は、事前の予想をはるかに下回る速度でそれらの超新星が遠ざかっていることを突き止めた。というのは、横軸に超新星の赤方偏移(~地球からの距離)、縦軸に超新星の見掛けの明るさをとり、遠方銀河の超新星の明るさと後退速度(赤方偏移)を測ってゆく。宇宙の膨張の速さが一定なら、赤方偏移は距離に比例するというのが、ハッブルの法則である。宇宙膨張のスピードが昔もいまも変わらなければ、天体の明るさは、距離の2乗に比例して暗くなる。それはそれを体した黒い線の上にくる筈である。ところが、実際に観測された結果は違っていた。それは、それより上の赤い線に来た。つまり、「Ia型」の超新星の明るさは、ハッブルの法則の場合より遠くで暗くなっている。つまり、赤方偏移と距離の比例関係は、わずかだがずれている。遠方の宇宙では、膨脹の速さが今よりも遅かった。
 これから、遠くにある超新星は昔の宇宙の膨張速度で遠ざかっている訳だから、遠くの超新星の速度が遅いというという観測結果は、とりもなおさず昔の宇宙の膨張速度が遅かったことになる。言い換えると、宇宙が膨張する速度は、時間を経るごとに大きくなっている、つまり宇宙膨脹は減速しているのではなく、加速していることをあらわしてしている。
 そして、加速するためにはエネルギーが必要であって、この重力に対抗して加速するためのエネルギーを「ダークエネルギー」と名付けた。この加速を説明するに足るエネルギーである、ダークエネルギーは、ダークマターの3倍くらいあるはずだ(NHK「宇宙を読み解く」シリーズの第14回「深まる謎:ダークマターとダークエネルギー」(2015年1月6日放映分)での放送大学の海部宣男客員教授(国立天文台・名誉教授)、放送大学の吉岡一男教授による、今日までの「考え方と観測事実」の系列の整理、その他より)。
 このような宇宙の加速膨脹はいつから続いているかというと、大体60億年から70億年位前、そのあたりから始まったらしい、と言われている。宇宙が広がるにつれ、だんだんと重力が薄まって力が弱くなっているところへ、空間の不変エネルギーであるこのダークエネルギーがその弱まりつつある重力に打ち克って、その力の膨脹で宇宙膨張の加速が始まり、現在も続いているのではないか、というのだ。

(続く)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« ◎二七八の三『138億年の日... | トップ | (352)『自然と人間の歴... »

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL