(265)『自然と人間の歴史・日本篇』財閥解体(独占禁止と過度集中力排除へ)

2017-08-09 10:12:46 | Weblog
(265)『自然と人間の歴史・日本篇』財閥解体(独占禁止と過度集中力排除へ)

 農地改革と並んで戦後日本経済の出発点となったのが、「財閥解体」であった。戦前・戦中までは、工業やサービス業(金融を含む)などは、少数の独占大企業が独占的な地位を占め、国民経済を牛耳っていた。その規模たるや、1937年(昭和17年)時点で、全国の会社の株式のうち、三井が9・5%、三菱が8・3%、住友が5・1%、安田が1・7%ということであり、この5つの財閥(グループとしての大きさ)だけで24・6%を占めていた。
 これに対し、アメリカを中心とする占領軍の経済民主化政策が導入され、わけても1945年10月22日、 GHQ(連合国総司令部)により、15財閥に対し、事業内容や資本構成に関する詳細報告の提出命令が出される。続いて同年11月6日、GHQ(連合国総司令部)により、覚書「持株会社の解体に関する件」(いわゆる「財閥解体指令」)が出され、四大財閥の本社解体が決定される。さらに同年12月、財閥関連の子会社336社の資産が凍結される。同覚書には、次のような米国の意志が込められていた、とされる。
 「日本の対外侵略に対する財閥の責任は、人的なものでなく主として制度的なものである。(中略)日本の産業は日本政府によって支持され強化された少数の大財閥の支配下にあった。産業支配権の集中は労使間の半封建的関係の存続を促し、労賃を引下げ、労働組合の発展を妨げて来た。また独立の企業者の創業を妨害し日本における中産階級の勃興を妨げた。かかる中産階級がないため、日本には今日まで個人が独立する経済的な基盤が存在せず、従って軍閥に対抗する勢力の発展もなく、ために此の国では軍事的意図に対する反対勢力として働く民主主義的、人道主義的な国民感情の発展も見られなかったのである。さらにかかる特権的財閥支配下における低賃金と利潤の集積は、国内市場を狭隘にし、商品輸出の重要性を高め、かくて日本を帝国主義的戦争に駆り立てたのである。(中略)上述せる結果をもたらす財閥の特権形態を破壊し、他の民主主義諸国の如く軍国主義者に依る政府支配に対抗し得るグループを育成することが米国の対日財閥政策の中心目的である。」(1946年1月に米国から来日の日本財閥調査施設団団長エドワーズが取りまとめたとされる『財閥とその解体』より抜粋)
 その骨子として企画された持株会社の解体の実行機関として、1946年8月8日、持株会社整理委員会が発足する。同委員会は、内閣総理大臣が指定した持株会社を対象とし、その持株の整理およびそれに伴う業務を主な業務とする。同委員会は、同年9月から約1年間にわたって持株会社の指定を続ける。
 この間に指定を受けた会社は、次に掲げる83社に及んだ。その内訳は、第一次指定(昭和21年9月6日)として、三井本社、三菱本社、住友本社、安田保善社、富士産業の5社。第二次指定(昭和21年12月7日)として、川崎重工業、日産、古河鉱業、野村合名会社、日立製作所、松下電器産業など40社。第三次指定(昭和21年12月28日)として、三井物産、三菱商事、三菱重工業、三井鉱山、三菱鉱業、三菱化成工業、三菱電機など20社。そして第四次指定(昭和22年3月15日)として、国際電気通信、日本電信電話工事の2社。それから第五次指定(昭和22年9月26日)として、大原合資会社、豊田産業など16社であった。
 これらの枠組みで実施された財閥解体の具体策としては、まずは三井・三菱・住友・安田などの財閥本社あるいは本社的性格の強い持ち株会社が28社が選ばれた。また、持株会社の形態は明確ではないものの、重要な生産部門を持っている51社を、1億6567万株の持ち株を譲渡したあと生産会社として再建を目指すことになった。その他の4社については解体の扱いとなる。第2は、財閥家族の企業支配力の排除ということで、10家族56名が指定される。これについても持株会社整理委員会が指定するもので、所有有価証券の同委員会への譲渡、会社役員への就任制限が行われる。第3として、株式所有の分散化が目指された。同委員会が譲受株式の65%、1億765万株を民間(多くは系列社員)に売却となる。
 第4として、企業分割で、過度経済力集中排除法によるもので、325社が過度に経済力が集中していると指定された。実際に分割されたのは11社のみであった。企業分割を免れた財閥系銀行は、自分を中心に戦後の企業集団を作っていく地盤を確保した。全体として、この財閥解体の一連の動きは、独占大企業支配の枠組みまでは届かず、いずれも中途半端に終わり、根本的な改革とはならなかった。しかし、こうした財閥解体の動きには、同年、早くもブレーキがかかるに至る。1947年(昭和22年)の独占禁止法の改訂によって、財閥的な企業支配形態を阻止する規定がなくなる。これに力を得た旧財閥が改め、敗戦後の系列化が始まることになる。およそこれらのことは、占領軍の力で制定されたものであって、日本側があれこれいう資格は与えられなかった、と言って良い。
 これに続いて、1947年(昭和22年)には独占禁止法(その事務は公正取引委員会が行う)と過度経済力集中排除法(昭和22年法律第207号)がつくられる。後者は1949年までの時限立法であって、こう定めてあった。
 「第一条 この法律は、平和的且つ民主的な国家を再建するための方策の一環として、できるだけ速やかに過度の経済力の集中を排除し、国民経済を合理的に再編成することによって、民主的で健全な国民経済再建の基礎を作ることを目的とする。
 第二条 この法律で企業とは、企業連合、企業結合、企業合同、会社、組合、個人企業その他形態の何であるかを問わず、事業上、金融上その他経済上の一切の方法又は事業体を含むものとする。
2この法律で独立企業とは、各個の法律上の人格を有する企業をいう。
3この法律で関係とは、協定、了解、共同行為その他名義の何であるかを問わず、一切の関係をいう。
4この法律で事業分野とは、事業上、金融上その他経済上の一切の活動の分野を含むものとする。
5この法律の施行について独占的性質の企業とは、独立企業の合併の結果、又は昭和十二年七月一日から昭和二十年九月一日までの間に当該事業分野において従前に比し過当な事業の拡張をした結果、当該事業分野において影響力を持つている、又は持つ虞のある企業を含むものとする。この場合において、影響力とは、企業による支配力であつて、当該事業分野における価格の決定又は資金、商品若しくは役務の移動を実質的に左右するに足る程度のものをいう。
6この法律の施行について関連性のない事業分野とは、生産過程において相互に依存する生産分野、一の最終生産品の生産において生産の段階となつている生産分野又はその他相互の間に生産、販売若しくは経営の合理化に役立つ関係のある事業分野のいずれにも該当しない事業分野をいう。
7この法律で競争又はこの法律の施行について競争者とは、現実に存する競争又は競争者及び潜在的な競争又は競争者をいう。
8この法律で生産能力とは、生産施設を通常の状態において最高度に使用した場合の生産の能力をいう。
9この法律で家族とは、本人並びにその配偶者及び三親等内の親族をいう。
10この法律の施行について個人又は家族における富とは、個人又は家族の成員が所有し、又は支配する企業財産その他の財産を含むものとする。
 第三条 持株会社整理委員会は、過度の経済力の集中で、この法律施行の日において現に存している又は昭和二十年八月一日以後この法律施行の日前において存したものを指定し、公共の利益のために、これを排除しなければならない。
2 前項の場合において過度の経済力の集中とは、営利を目的とする私企業又はその結合体で、一の分野においてその有する相対的規模が大であり、又は二以上の分野においてその占める地位を集積した力が大であるために、事業の重要な部分において、競争を制限し、又は他の企業が独立して事業を営むことを阻害するものをいう。
3 持株会社整理委員会は、前項の定義及び第六条第一項の規定による具体的基準に従い、過度の経済力の集中を指定しなければならない。
 第四条 前条の規定による指定は、昭和二十三年九月三十日までに、これをしなければならない。」(以下、略)
 同法においては、325社が「独占的性質の企業」(第二条)として指定される。しかし、その後のアメリカの対日政策の転換で指定の大半は解除されていく。さらに1950年からの朝鮮戦争を経て、産業界は「みそぎは終わった」との姿勢を取り始めるに至る。それまでの財閥解体政策の中でも分割を免れた旧財閥系銀行を中心に、新たな独占体制として復活していく。これは後日談だが、1951年(昭和26年)9月、ソ連及び中国などの社会主義陣営への対抗の必要から、アメリカを中心とする資本主義陣営の戦後再構築の一環としてのサンフランシスコ対日講話条約の調印がなされた。これにより、財閥関係のこれらの改革のおおかたに終止符が目され、財閥支配力排除法の廃止、財閥称号の復活、持株委員会の解散などが足早に決定されていったのである。

(続く)

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