田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

道立近代美術館「片岡球子展」

2017-01-09 23:49:42 | イベント
 “片岡球子”というと、破天荒な型破りな作風で知られる女流画家という印象が強い。そのような彼女の作風が確立する裏には想像を絶するほどの研鑽や葛藤があったことが彼女のスケッチブックから垣間見ることができた。本画とスケッチの双方を鑑賞できる展覧会である。 

               
               ※ 道立近代美術館の展示室の前には写真のような表示が立てられていました。

 1月7日、私にとって近くて遠い存在の北海道近代美術館に足を運んだ。
 同館では現在、北海道出身の画家・片岡球子の「本画とスケッチで探る画業のひみつ」と題する展覧会が開催されているのだ。(開催期間 1/4~3/20)

 前夜、アウトドアライフの先達であるsakagさんと歓談させていただいた中で、sakagさんが先に観賞した同展のことを話された後で、「明日は、学芸員による『みどころトーク』があるのでぜひ行ってみたら」と助言を受け、別にあった予定をキャンセルして足を運んでみることにしたのだ。

               
          ※ 片岡球子は80歳を超えてから富士山が描く対象になったということです。写真は冬にもかかわらず富士山のすそ野でスケッチをする片岡です。

 14時から美術館講堂で、学芸員の杉山聖央さんによる「見どころトーク」が行われた。
 彼女の話によると、片岡球子が残したスケッチブックは実に350冊にのぼるという。
 そのスケッチブックを繰ることによって、本画(完成した作品)にいたるまでの創作のプロセスがよく分かるということだった。

 片岡球子のスケッチブックは、一般にいうラフスケッチではなく、大胆な構図を試したり、彩色を施したりと、他の画家たちのスケッチとは一線を画すものだという。時にはアクリル絵具を指で画面に擦り付けるようにして描く場合もあったという。
 また、片岡球子が時代と共に描く対象が徐々に変遷していった様子についても解説があったが、その初期には描く対象をじっくりと観察していることが特色であるが、後期に入りその対象の本質に迫ろうとする(内面を描く?)ような描き方に変化していったとの説明があった。

               

               ※ 上がスケッチで、下がそのスケッチをもとに描いた本画です。

                    

 「見どころトーク」を聴き終えた後、さっそく展覧会の方へ足を運んだ。
 会場には近代美術館が所蔵する本画とともに、おびただしいほどのスケッチが展示されていた。
 画家として初めて世に認められた(第17回院展で入選)「枇杷」という作品は、そのスケッチも本画も、日本画そのものといった感じで、後の片岡の片りんもうかがえないものであるが、同じ初期の勤めていた小学校の児童を描く作品にはすでに片岡独特の描き方の片りんがうかがえるような描き方をしている。

               
               ※ 片岡が初めて世に認められた「枇杷」の本画です。

 ともかく私には、そのおびただしいほどのスケッチの数に驚いた。一流の画家というものが一枚の本画をモノにするにあたって、対象に対してあらゆる角度からスケッチし、対象を深く思索したうえで、納得した後に本画を描き出していることを知った。

               

               

 片岡球子というと、いわゆる“赤富士”が有名だが、本展ではその“赤富士”は展示されていなかった。道立近代美術館にはそのたぐいの所蔵がないということなのかもしれない。一つだけ、青く描かれた富士山の画は展示されていたが…。

                    
                    ※ 今回の展覧会で唯一(?)展示されていた富士山の画です。

 破天荒だ!型破りだ!という印象の強かった片岡球子であるが、今回の「本画とスケッチで探る画業のひみつ」を鑑賞することによってその印象が大きく変えられた展覧会だった。



※ 今日のgooブログは何かトラブルがあったのでしょうか?かなりの時間投稿できませんでしたね。