田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

札幌軟石 いま・昔

2010-05-02 21:11:39 | 札幌学 & ほっかいどう学
 北大総合博物館では今(4/27~5/30の会期で)「わが街の文化遺産 札幌軟石」という展示会が開催されています。その関連セミナーとして、5月1日に「札幌軟石 いま・昔」と題した講演とパネルディスカッションが行われたので参加してきました。 

        
        ※ 展示会では札幌軟石の仕上げの違いを具体的に展示し
         て説明していました。奥から「ツル目仕上げ」、「割り肌仕
         上げ」、「機械割り肌仕上げ」、「カッター仕上げ」の順に展 
         示しています。       

 講演というよりも、話題提供と称したほうが適切でしょうか。
 三つのテーマでそれぞれが20分間ずつ札幌軟石に関わってお話してくれました。そのテーマとスピーカーは…。
 ◇「札幌軟石は支笏火山の贈り物」 北海道地質調査業協会  若松幹男氏
 ◇「札幌の軟石文化」         札幌軟石文化を語る会  岩本好正氏
                       石工の会           地蔵 守氏
 ◇「歩いた!探した!見つけた!札幌軟石」 札幌建築鑑賞会 中村祐子氏

        
        ※ ツルハシで整形したものはやはり手作りの味わいがあ
         るように思えますが…。

 若松氏は地質の専門家ですが、素人にも分かりやすく支笏火山の大噴火によって大量の火砕流が放出され、その火砕流が札幌軟石となったことをイラストなども活用して説明してくれました。ちなみに現在の支笏湖はそのときの噴火の跡に水が貯まってできた湖だということです。

 岩本氏と地蔵氏は札幌市南区の石山付近から採掘される札幌軟石の採掘の様子を説明してくれました。特に地蔵氏は石工として実際に採掘に携わった方でしたので、手掘りをしていた頃の説明には説得力を感じました。また、説明から軟石ゆえに加工が比較的簡単だったことが古くから札幌軟石が建物のさまざまなところに活用されることができたことを理解することができました。

        
        ※ 手掘りの道具を用いて説明してくれた地蔵氏です。

 中村氏は建築鑑賞会の活動として現在札幌市内に残る札幌軟石の建物の記録化を進めているそうです。現在まで、中央区、北区、東区、豊平区の記録化を終え、現在南区を調査中とのことで、会員による調査の様子やその意義について話されました。

 パネルディスカッションでは昭和25年に建築法の改正があって軟石だけでの建築はできなくなった。しかし、現在でも意匠的価値から壁に貼り付けるなどの方法で利用されているそうです。
 そうしたことなどから札幌軟石の生産は大幅に減りましたが、現在も南区常磐で採掘が行われています。
 札幌軟石は歴史的建造物として保存されるだけではなく、古い軟石造りの石倉が再生活用されています。また、先述したように現在も採掘がされているというようなところは全国でも珍しいとのことです。

 札幌の街のいたるところで眼にすることができる札幌軟石の建物、倉、あるいは飲食店などですが、その背景を少しは理解することができた思いです。