ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

人気作家の奥泉光さんの最新単行本「ビビビ・ビパップ」を読み終えました

2016年10月15日 | 
 人気作家の奥泉光さんの最新の単行本「ビビビ・ビパップ」を読み終えました。この単行本のタイトルにある「ビパップ」とは、モダンジャスを産み出す契機となった前衛的なジャズの走りのことです。

 この単行本はページ数が661と数ページもあり、かなり分厚い本です。

 この単行本の表紙は、ジャズの名プレーヤーだったエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)さんを描いていたものです。



 この小説の舞台は22世紀末という未来社会です。金持ち層の人間は生活する際に、IT(情報技術)にかなり支えられています。自分のスケジュールを伝えておくと、仮想秘書ソフトウエアが次の行動を教えてくれるなど、IT(情報技術)なしでは生活できないようです。

 実は、2029年に「大感染」(パンデミック)と呼ばれた悪意の電子ウイルスが、高度に発達し始めたコンピューターなどを襲い感染させました。大きな被害が出ました。コンピューターなどが壊れるという直接的な被害以外にも、例えば本や音楽などの中身をデジタル化した電子データなどが汚染され、貴重な電子情報が消えた事態に陥りました。

 この結果、その後は“悪意の電子ウイルス”対策が重要な課題になります。しかし、その“悪意の電子ウイルス”の本質解明はできていないまま時代は進みます。そして人類は一層、高度なソフトウエアやIT環境などに頼る体制に陥っていきます。

 この小説の骨子は(以下はネタばらしです)、その“悪意の電子ウイルス”は生物が、高度に発達し始めたコンピューターなどの“機械系”との戦いを目指したもので、この生物系と“機械系”の永遠の戦いだったという、陳腐な背景が明らかになります。“機械系”が生物系を殺そうとするのは、映画「ターミネーター」と同じものです。今時の漫画でも使わない陳腐な発想です。

 この小説の面白い点は、未来の高度な“機械系”の姿の面白さです。作者の奥泉光さんはこれを書きたかっただけのようです。

 小説の主人公の女性フォギーは、ジャズピアニストです。当時としては珍しく、本物のピアノを演奏します。女性フォギーが生活できているのはクライアント(依頼主)である山萩さんから仮想現実向けに音響設計の仕事をもらっているからです。

 このクライアント(依頼主)である山萩さんは、世界第3位の軍用ロボットメーカー企業の「モリキテック」の創業者であり、社長です。

 その山萩さんは主人公の女性フォギー向けの、有名なジャズ演奏家のアンドロイドを開発します。エリック・ドルフィーに、スコット・ラファロ(ベーシスト)とロイ・へインズ(ドラマー)の“本物そっくり”のアンドロイドも登場します。後では、エルヴィン・ジョーンズ(ドラマー)も登場します。

 モダンジャスファンならば、レコード(もう死語)・CDではなく、本物の演奏が聴きたい名プレーヤーです。ジャズピアニストの主人公の女性フォギーは、夢のような競演をし、名演奏をします。

 話は進んで、大型豪華客船では主人公の女性フォギーは、チャーリー・パーカー、マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーンなどのモダンジャスの“神様”たちのアンドロイドと夢のオールスタービッグバンド演奏を繰り広げます。

 例えば,クリフォード・ブラウンなどのモダンジャスファンならば、一度は生演奏を聴きたかったモダンジャスの“神様”がオールスターで登場します。この場面が一番、面白い場面です。モダンジャスファンはここを読むだけで、十分に満足できます。

 同時に、未来の戦闘ロボットや戦闘用ドローンによるミニ戦争、戦いの場面は実にリアルに描かれています。

 この単行本「ビビビ・ビパップ」は、こうした細部がとてもよく描かれた、この部分だけでも読む楽しさが感じられる作品です。

 小説の舞台背景については、あまりネタばらしはしていません。未来の人類は、幸せなのかどうかはあまり重要ではないからです。また、高度なコンピューター・ネッも想像がつかないからです。

 なお、この単行本「ビビビ・ビパップ」を読み始めた話は、弊ブログの2016年9月30日編を、その補足編は2016年10月1日編をそれぞれご参照ください。
ジャンル:
ウェブログ
コメント (6)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 愛知県豊田市矢並町にある矢... | トップ | 長野県佐久市の佐久荒船高原... »
最近の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
エリック・ドルフィー (アバター)
2016-10-15 08:25:23
この小説の作者である奥泉光さんは、ものすごいジャズ好きなのでしょう。
チャーリー・パーカー、マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーンの生演奏は可能ならば、一度は聴いてみたいものです。
スコット・ラファロとロイ・へギンズのピアノトリオとは・・ビル・エバンスが知ったら、卒倒しそうなピアノトリオですね。
未来社会 (R2-D2)
2016-10-15 09:26:26
スターウィーズのシナリオが書かれた30年以上前に比べて、最近のSF小説はAR(仮想現実)やAI(人工知能)などが盛り込まれ、ここ30年間の技術の進化を感じさせます。
人類は、高度なIT技術無しで生活できるのかどうか、興味は尽きません。
奥泉光さんの最近の作品は、中身はぶっ飛んだものばかりです。
アバター様 R2-D2さま (ヒトリシズカ)
2016-10-15 10:02:33
アバター様 
R2-D2さま

コメントをお寄せいただき、ありがとうございます。

奥泉光さんの小説は、特に最近の数冊は好き嫌いが分かれる問題作です。

今回も細部が面白いと感じました。

単行本「ビビビ・ビパップ」 (金平糖)
2016-10-15 14:45:06
エリック・ドルフィーに釣られて、この単行本「ビビビ・ビパップ」を読みました。
VR世界で、新宿3丁目のジャスクラブPIT INNが出て来て、にやりです。1970年代の新宿街です。
ジャズシーンは楽しさいっぱいです。
アンドロイドのジャズメンたち (アウトレット好き)
2016-10-15 21:30:11
この未来小説の舞台は22世紀末という未来社会だそうですが、アンドロイドのジャス・プレヤーがジャズセッションを実現するには、人間並みの判断の演算ができるAI(人工知能)が実現し、人間並みあるいは人間以上の脳を持っているということになります。
今から100数十年経つと、人間は機械(ロボット・アンドロイド)には、能力的に負けているということなのでしょうね・・
魅惑のジャス・プレヤー (魔法使い)
2016-10-16 19:16:28
この小説では、エリック・ドルフィーをはじめとして、チャーリー・パーカー、マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーンのアンドロイドが、本物そっくりに演奏するようですね。
是非とも、拝聴してみたいジャズメン達です。

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む