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余所者 「ハトアリの抜粋」

2017-06-28 15:40:07 | 同人 小説コピー本
   「ハトアリ」pixivの抜粋 夢主


不条理とデタラメと愛と我が儘で残酷な住人達が存在するハートの国に迷い込んだのはアリスだけではありません。
貴方だって、迷い込んでしまうことがあるんです。
ほら、目の前を白兎が走っている。
追いかけたら駄目ですよ。
ええ、わかるでしょう、誘惑に墜ちてしまったら、心臓を撃ち抜かれてしまいます。
後ろを見て、あなたの背中を押そうとしているのは黒い影、あれは兎。

ああ、捕まってしまった、押し倒されて、穴の中へ落ちてしまったら抜け出すのはいつになることやら。



「大丈夫ですか」

心配そうに覗き込む男の頭には白くて長い耳が生えている。
白い兎の耳が、最初の頃は驚いたが、しばらくするうちに、慣れてしまうのだから人間というのはよほど耐性ができているといえる。
いや、彼女だからかもしれない。

「どうしたの、ペーター」

起き上がって周りを見ると帽子屋のブラッド・デュプレ、マフィアのボスとエリオットまでいる。

「貴方、抗争に巻き込まれそうになったんですよ、覚えてないんですか、どこか痛いところはありませんか」

真剣に聞いてくるペーターの顔に女は大丈夫よと笑った。
そばにいた黒髪の男が軽く頭を下げる。

「悪かったね、君があそこに居るとは思わなかったものでね」

「謝らないで、ミスター・ブラッド」

「そうはいかない、後で見舞いを届けさせよう、何か欲しいものは、何、遠慮することはない」

「あなた方からの贈り物なんて、彼女が受け取るなんてありえません、せいぜい毒入りケーキがいいところでしょうよ」

「口の達者な兎だな、何故、私が彼女に毒入りなど」

「貴方が死んだら、僕は生きてはいられません」

だったら、さっさと死ねよ、なんなら今すぐ、ここでな。
隣で見ていたエリオットが、ぼそりと呟いた。

じろりと白兔は睨み返し、上着のポケットから何かを取り出そうとしたが、はっとして、その手を引っ込めた。

「僕は紳士です、ジェントルマンですからね」

その言葉と仕草にエリオットだけでなく、ブラッドまでもが、驚いた顔で唖然とした表情になった。

「ええ、こんなところで、拳銃を抜くなんてことはしませんよ、無粋で野暮ですからね」

女の視線に白兔は、はははと胸を張って威張ったような笑いをこぼした。

「ペーター、貴方がとても格好良く見えるわ、本当よ」

「当然です、僕は紳士で、格好いい白兔ですからね」

本気で言っているのならたいしたものだ、とんでもなく馬鹿馬鹿しく、ふざけた会話に聞こえるがペーター・ホワイトの心底、自慢げで威張っている様子にブラッド・デュプレは、内心、溜息をついた。

反対にエリオットの方は、今すぐにでも、こいつの、白兔の頭を撃ち抜いてやりたいという気持ちでいっぱいになった。

隣に、ブラッドがいなければ、本気で銃を抜いていただろう。


「素晴らしい、まったくもって理解しがたいが」
ブラッドの言葉に女は、あらと笑った。

「彼は純粋なのよ、直情的だけど、裏表がないのね」

「単純すぎるともいえるが」

そこが、彼のいいところでもあるのよ、勿論悪いところでもあるけど、女の言葉にブラッドは、そうかいと頷き、手を取った。

「いつでも屋敷に来てくれたまえ、歓迎するよ」

「ありがとう、抗争はしばらく続きそう」

「いいや、すぐに終わらせるよ、貴方の為にも」

「そのセリフは、アリスに」

「誤解しないでくれたまえ、彼女は余所者で」

「私も同じ、余所者なんだけど」

参ったとブラッドは帽子の縁を軽く持ち上げた。

「退屈すると潰したくなる、だが、それをさせてくれない、まったく、困ったものだよ」

ブラッド・デュプレは、このとき、心底、困った顔で女を見た。

自分は女を殺したいのか、そばにいる白ウサギの頭を撃ち抜いてしまったのか、わからない。

本当に困ったモノだ。
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