母上様には娘と息子二人がいる。
その娘とは、かれこれ20年は会っていない。
弟の方も母上様が、施設に入所してからは一度も
会いには来ていない。
二人にとっては母と兄。
もう....この日は10日.....もう時間がないと思った。
亡くなってから連絡して来てもらっては、二人はきっと気まずい思いをする筈。
もう....時間が無ないと思ったから。
あなた達のお母さんもお兄さんも....二人が危篤状態なの。
だから会いに来て欲しいと電話した。
もう夕方になっていたけどすぐに駆けつけて来てくれた。
弟のあ〇〇ちゃんはお嫁さんと。
まずは母上様のところに行ってもらった。
妹のえ〇子さんはタクシーで施設へ行き...弟のあ〇〇ちゃんは息子が駅まで迎えに行って施設に連れて行った。
息子の話だと....え〇子さんは泣いてごめんね、ごめんねと言っていたよ。
意識もあまりハッキリしていないおばあちゃんが涙を流したんだよっと。
びっくりしたことを話していた。
あんなに会いたくは無いと言っていた母上様だったけれどやっぱり親子、
まして母と娘、会いたくない筈はなかったんだと。
もう少し元気なときに連絡してあげれば良かったと後悔もした。
その後....二人の兄でもあるじいちゃんパパさんのところへ息子が連れて来た。
え〇子さんは連絡してくれてほんとうにありがとう。ありがとう.....と
何回も言って泣いた。
え〇子さん....今までの事は気にしなくてもいいわよ。
大丈夫だからこれからは昔の様に仲良くやっていこうね。
私たち...もちろんお兄さんだって怒ってはいないから。
ありがとうとまた泣いた。
良かった、良かった連絡してあげて....私は心の中で何回つぶやいた事か。
パパさん良かったね。ほら、あ〇〇ちゃんも...え〇子さんも来てくれたよ。
〇〇家は、これからみんな仲良くやっていくからね。もう心配しなくてもいいからね。
安心してね。
弟のあ〇〇ちゃんが、この数年来られなかったことが会って分かった。
体調が悪そうだった。歩く姿も弱々しいし話す言葉もハッキリしない
立っていると傾いてくる。
そうだったのね....この四年の間に随分弱っちゃったんだね。
無理だったね。納得した。
夜も遅くなってしまったので、え〇子さんとあ〇〇ちゃん夫婦は
東横インに泊まってもらって朝に一旦帰ってもらった。
時計も回って日付は11日。
朝方四時ころだったろうか...警告音は鳴り響いていた。
看護師さんから告げられた.....連絡したい方がいましたら、と。
娘は家で待機しているこ〇ちゃんに電話を入れた。
いつでも飛んで行くからねっと言ってくれていた兄だったけれど
余りにも早朝....もう少し後ですることにした。
早朝のタクシーが一台も掴めず娘が車を飛ばして家に帰り
子供たちも一緒に連れて来た。
孫たちは学校に間に合う時間までいてくれた。
じいちゃん....みんな声にならないか細い声だった様な気がする
手を撫でてくれた。
これが孫たちにとってはじいちゃんと最期の時間となる。
朝の四時のこんな早い時間に起きて来てくれたんだね。
ますます孫たちの事が愛おしくなって泣けてきた。
家族って....いいなぁ~と思った。