暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

東京教室の稽古・・・祥雲寺の朝会へ招かれて

2016年08月04日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
                       

S先生の東京教室は祥雲寺という古刹の茶室をお借りしています。
文月の稽古日に祥雲寺住職I氏から朝会へS先生と社中全員がお招きを受けました。
二席あり、S先生が正客をされる二席目(9時半待合)でご相伴しました。

いつもお稽古している部屋が待合でした。
夏座敷らしい敷物が敷かれ、ほの暗い室内から簀戸を通して緑の庭が広がっています。
床には風格のある横物が大徳寺棒で吊り下げられていました。
あとでご亭主I氏に伺うと、松平不昧公が天真寺和尚へ宛てた消息だそうです。
「暑中見舞いと松江みやげの菓子を届けるが、暑さのため味が変わっているかもしれません・・・」
という内容で6月28日の日付です。
「辻番形」の煙草盆が珍しく、御本狂言袴の火入に菱灰が入っています。
(菱灰を菱の実取りから作っているWさんのことを懐かしく思い出しました・・・)

                        

古染付の汲み出しで白湯を頂き、席入です。
露地草履に履きかえ、水がたっぷり撒かれ、露がキラキラ輝く緑の露地を一歩一歩茶室へ辿ります。
なんて清々しい席入でしょう・・・もうこれだけで感激!でした。

茶室は六畳、床の掛軸は
「雲 處々閑」(くも しょしょとしてしずかなり)
江月和尚の筆です。
香合は鎌倉彫、文様は荒磯でしょうか?
昔は仏事で出かけるとき、焼香用の香合を袂に入れて持って行ったとか・・・ご亭主I氏の興味深いお話がありました。
ピンクの撫子と夏ハゼが入れられた古銅釣り舟、ゆらゆらと風に吹かれて揺れています。

                         

点前座の風炉の透木釜が珍しく、大きな羽根、どっしりとした形、心惹かれる釜でした。
「地蔵釜」という名称も初めてで、下妻庄兵衛作です。
嬉しい出合いがありました。
「鉋目(かんなめ)小板を好ましく拝見しましたが、どなたの作ですか?」とS先生。
岩渕祐二氏の作で、東京・西荻窪の個展へ行った折にご縁がありました」
ここで岩渕氏の作品に出合うなんて、それにしてもS先生の目の付け所が違います・・・我がことのように嬉しいです。
水指は縄文杉の釣瓶、しっかり濡らして涼を演出してくださいました。

ご亭主I氏が練ってくださった濃茶を、先ずS先生が美味しそうに啜り音をたてながら頂き、次いで6人が頂戴しました。
あとで心配になり、7人目の詰Yさんに伺うと
「皆様が遠慮されたのか、沢山過ぎて飲むのが大変でした・・・(ヨカッタ)」
香り佳く、練り加減好く、美味しく頂戴した濃茶は延年の昔(星野園詰)、
菓子は渦潮(虎屋製)、縁高は十代一閑(蓋裏に花押)でした。

長次郎を思わせる黒楽茶碗が拝見にまわってきました。
残香を楽しみ、深緑の見込みを覗くと、先ほどの朝露の如くキラキラと輝いています。
偶然遭遇した茶碗の中の小宇宙、いつまでも見ていたいと思い、離れがたい一瞬でした。
黒楽茶碗は宗入作、「三熊野(みくまの)」という銘にも奥深い趣を感じ、熊野の旅の思い出が横切っていきます。
茶入は喜三郎(江戸の塗師)の上品な小棗でした。
濃茶に次いで薄茶を御馳走になり、退席しました。

                            

御心こもる朝会をしてくださって、嬉しい一日の始まりでした。
ありがとうございます・・・でも、それからが大変! 
東貴人且座、大圓草、洗茶巾(葉蓋)、昼食をはさんで、逆勝手後炭、逆勝手濃茶、逆勝手入子点、逆勝手四畳半花月と続きます。
東貴人且座と逆勝手四畳半花月に参加し、心身共にフラフラになりながらも充実したお稽古となりました。
S先生、I氏、皆さま、ステキな一日をありがとうございます!  


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