MARIKOのお喋りタイム♪

      

ダ・ヴィンチ作「岩窟の聖母」について・その2

2016-10-29 22:25:16 | 絵画

 

  長らくお待たせしまして、ほんとうに申し訳ありませんでした。m(_ _)m

  早速ですけど、前回の≪ダ・ヴィンチ作「岩窟の聖母」について・その1≫の続きを始めたいと

  思います。

  

  長いブランクが空きましたので、もう一度前回の内容をかいつまんでお話しします。

  前回は、ロンドンのナショナル・ギャラリーでレオナルド・ダ・ヴィンチ作という「岩窟の聖母」

  (油彩画)を見た時、ダ・ヴィンチの作ということに何となく違和感を覚えて後で調べたところ、

  その絵はダ・ヴィンチの真作ではなく、彼の弟子が描いたものであるというのが美術界の定説に

  なっていることを知って驚いた、というお話をしました。

    

  でもナショナル・ギャラリーのほうはダ・ヴィンチが描いたと主張し続けており、2010年に、この絵

  の洗浄と保存作業をしたところすべてダ・ヴィンチの真筆による作品あることが判明したと公式発表

  までしているそうです。

  本人のサインでもあったのか、何をもって真作と判断したのか、詳しいことは分かりません。

  ナショナル・ギャラリーといえばイギリスを代表する美術館です。

      

  わたしは、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵が大好きというだけの一介の素人ですのでどちらの説が

  正しいのか科学的に証明のしようもありません。

  ただ感じたことをお話しすることしかできないのですけれど。

  感じたことをお話ししますね。

 

  ↓下の二つの写真はその「岩窟の聖母」と絵の右横に貼ってあるキャプションの拡大です。

  ダ・ヴィンチはイタリアのルネサンス盛期に活躍し、史上最高の画家と評されています。                   

          

                        

  ↑上のキャプションにも書いてありますように、「岩窟の聖母」という作品は実は二作あって、もう

  一作のほうはダ・ヴィンチの真作であることが美術界でも認知されており、パリのルーブル美術館

  に所蔵されています。

  両者とも同じ構図の作品ですので、二つを並べてみました。

 

  ↓左がルーブルのバージョンで右がナショナル・ギャラリーのバージョンです。(Yahoo画像より)

  両方とも実物もこのように暗い画面でした。ナショナル・ギャラリーのほうは、もう少し青い色

  が際立っていました。 

       
              ルーブル                   ナショナル・ギャラリー                                                          

  ↑絵の中央にいる女性が聖母マリアで、肩を抱かれている左側の幼児はヨハネ、右側の指さしている

  幼児はイエス・キリスト、そして若い女性は天使ウリエルです。

  この二作、皆さんはどう思われますか?  

  わたし個人の感想は、左のルーブル・バージョンのほうが圧倒的に描写が優れていますし、左右の

  画家の実力の差は歴然としていると思います。

 

  ルーブル・バージョンでは人物たちは生命が宿ってほんとうに息づいているように見え、また作品

  全体に品格が感じられます。

  聖母マリアも気品があり、けな気で、彼女はたいへんピュアで慈愛に満ちた人のようです。

  絵の主題である聖母マリアは手の平をかざしてイエスに愛のエネルギーを送っているようで、その周

  辺がほのかに明るく描かれており、過酷な岩窟(人生)の中でもイエスはマリアの愛の温かさに守ら

  れ救われているのを感じますが、運命の悲惨さを知っているだけに見るほうは胸が痛みます。 

 

  一方ナショナル・ギャラリーのほうの人物たちはルーブル版とは対照的と思えるほど、人物たちの

  質感は周囲の岩や石とさほど変わらない無機質な硬さ冷たさを感じます。

  ダ・ヴィンチの描く人物像は、こんな風に硬い描写ではないと思いますけど。 

  描き手は人物たちの辛い姿を表したかったのか、聖母マリアは疲れきって憮然としており、頭上に

  光輪が描かれていなかったら、普通のおばさんと何ら変わらないと思います。

  それでは、聖母マリアを描いたことにはならないでしょう。

  ルーブルのほうは、光輪は描かれていなくても、聖母マリアであることが納得できます。 

  一応は頭上の光輪や十字架が描かれていて宗教画としての体裁は整っているものの、この作品に

  ルーブル版のような宗教的な作者の心は感じられません。

       

  ↓天使ウリエルの部分を拡大した画像がYahoo画像にありましたので、二つを並べてみました。

          
                 ルーブル               ナショナル・ギャラリー      

  ↑これ一つ見ても、画家の力量の差ははっきり見て取れると思います。

  ナショナル・ギャラリーのウリエルは、失礼ですが絵画というよりイラストや映画の看板画の類に

  見えます。

  第一、ダ・ヴィンチがテントのようなこんな分厚い瞼を描くでしょうか?眼玉の描き方も違います。

  顔は、ルーブル版の人間の皮膚の柔らかさに較べて陶器のようですし、全体的にダ・ヴィンチ独特の

  ぼかした柔らかな筆触がこちらでは見られません。

  

   作品の説明を聞いたときに現地ガイドさんは、「この絵はレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた未完成

  の作品です。絵を注文したミラノの教会が代金の支払い額を値切ってきたので、頭にきたダ・ヴィンチ

  が手抜きをして描いた絵を渡しました。右側の天使の左手をご覧ください。最後まで描かれていません」

  と説明しました。この説明も釈然としませんでした。

 

  ダ・ヴィンチは極端な完全主義者でしたので、自分が納得できない作品をとっておくのを嫌い、自分

  で破棄していたというのは有名なエピソードです。

  そのため、遺っている絵画は生涯に十数点という少なさ。

 

  天才的な画家であると同時に、天才的な批評眼も持ち合わせた人だったのではないかと思います。

  その批評眼によって自分の作品の至らないところが全部見えてしまうので、なかなか作品が完成

  したとは思えなかった。合格点には達しなかった。

  案外、自分で自分を食べるような苦しい創作活動をしていたのではないかと想像します。

  「モナ・リザ」や「洗礼者ヨハネ」などは死ぬまで手元に置いて加筆を続けていたそうです(後で

  絵の画像をアップします)。

  もっとも、その批評眼があったからこそ「モナ・リザ」のような魔力を持った絵が描けたのに違い

  ありません。

 

  「値切られたことに腹を立てて手抜きをして未完成の絵を渡した」のが史実ならば、それは

  ダ・ヴィンチではなく彼の弟子がしたことではないでしょうか。

  ダ・ヴィンチという人は手抜きした未完成の絵を渡せるような性分ではなかったと思われます。

 

  この「岩窟の聖母」には面白いエピソードがありまして、そもそもはミラノの「無原罪の御宿り

  信心会」が礼拝堂の祭壇画をダ・ヴィンチとその工房に依頼したことから始まりました。

  そしてダ・ヴィンチは「岩窟の聖母」を描き上げましたが、信心会はその絵が不満で受け取りを

  拒否したのです。それがルーブル・バージョンです。今思えばもったいない話ですけど。

  信心会の言い分は、頭上に光輪が描かれていない、どちらがイエスかヨハネか分からない、

  ウリエルが手を突きだしているのは疑問だなどなど。この作品は未完成なので完成させて欲しい

  という注文をつけました。

 

  ダ・ヴィンチは信心会の要求を却下して、さる人に(フランスのルイ12世ではないかと言われて

  いる)こっそりその絵を売り渡してしまいました。

  もめにもめて何年も経った後、ダ・ヴィンチ工房の弟子がお金が必要になり、棚上げになっていた

  祭壇画を描くことを申し出、信心会の要求を受け入れて描き上げたのがナショナル・ギャラリー版

  だと言われています。

  なのでナショナル・ギャラリーの絵は頭上に光輪が描かれ、ヨハネは宗教画でヨハネを表す十字架

  を持ち、ウリエルは手を引っ込めて描かれ、めでたく祭壇画として飾られたということです。

  二つの作品を見較べますと、このエピソードは何ら無理なく筋が通ります。

 

  レオナルド・ダ・ヴィンチの絵に関心のある人なら、大方の人がナショナル・ギャラリーのバージョン

  に違和感を抱くのではないでしょうか。

  ダ・ヴィンチの作品のファンとして、不愉快な思い出が残り残念です。  

      

            
                  ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

 

            
                         ナショナル・ギャラリー

 

                     ダ・ヴィンチの作品

      
       白貂を抱く貴婦人の肖像                   洗礼者ヨハネ         

 

                                          
                               モナ・リザ

 

  以上で、≪ダ・ヴィンチ作「岩窟の聖母」について≫を終わります。

 

                        

                            

       

  

     

 

                                

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