麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第540回)

2016-11-05 06:15:42 | Weblog
11月5日

東京に来る前から中野という町があるのを知っていた。二見書房が彼の高校時代に出し始めた、貸本マンガ復刊文庫の一冊「悪魔くん」(水木しげる)を通じて。悪魔くんの計画でヤモリビトに変身させられ、やがて自分の意識さえもヤモリビトに乗っ取られてしまうことを嘆いた佐藤が、人間としての最後の時間を味わおうと入ったのが「中野にある喫茶店『喫茶・再会』」だった。「若い人は恋を語り、バカンスを楽しんでいる」という佐藤のつぶやきと同時に描かれているのは、醜い男と醜い女がキスをしている場面だった。初めて実際に中野の駅に降りたのは、79年の春だったろう。北口で中田と待ち合わせて、ブロードウェイをぶらぶらした。当時はまだ、テナントの中の一軒の古本屋に過ぎなかった「まんだらけ」が彼を喜ばせたが、それと同じぐらい、2階の新刊書店の蔵書も彼を魅了した。雑誌や一般書籍の棚の奥には、いく筋かに分かれた狭いスペースがあって、そこには様々なジャンルの専門書(一般書店では必要ないのでは、と思えるほどの)がぎっしりと詰め込めるだけ詰め込んであった。中でも際立っていたのが、「アダムスキー全集」とスウェーデンボルグの「天界との通信」シリーズ(青い表紙に白い紙が貼り付けてあり、そこに各巻のテーマが書かれていた)を中心にひとつのスペース全部を埋めていた超常現象関連本だった。59年生まれの彼にとって、矢追純一のUFO特番やつのだじろうの心霊漫画はおなじみのものだった(ユリ・ゲラーはスターの一人だった)。彼も中学から高1のころまでは、よく見たり読んだりしていた。そのころはただそれらをおもしろがっていただけだった。だが、いまは違う感じ方をしていた。それはまた書くことになるはずだ。そのことはいちおう、このどうでもいい物語の中心になるかもしれない話だから。ああ疲れた。



口譯萬葉集、五巻まで。
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