まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『クレアモントホテル』想像するだけで涙が…

2010-11-18 01:34:59 | イギリス・アイルランドの作家
MRS.PALFREY AT THE CLAREMONT 
1971年 エリザベス・テイラー

エリザベス・テイラーは以前『20世紀イギリス短篇選』
『ハエ取紙』というちょっと恐ろしい短篇を読んだことしかなくて
てっきりデュ・モーリアみたいな怪奇方面の作家かと思っておりましたら違うのですね。
心に響くいいお話しでした。

舞台はロンドンのクレアモントホテル。
主人公はパルフリー夫人という未亡人で、脚に少し痛みを抱えていますが
まだまだ元気な老婦人です。

クレアモントホテルには、他にも4人の老いた長期滞在客がいました。
杖を手放せない、少し尊大で人を傷つけることが好きなアーバスノット夫人、
いつも編み物ばかりして、あまり人の話しに興味がないポスト夫人、
酒好きで派手な装いのバートン夫人、
そして女性たちのおしゃべりは嫌いだけど誰かと会話したいオズモンド氏。

ホテルで余生を過ごせるなんて素敵な気がしません? と思いますよね。
しかし現実はなかなか大変なようです。

毎日意味もなく同じ顔を突き合わせて過ごさなければならない長い午後、
何度も出されてすっかり食べ飽きた美味しくもない食事、
ホテルの従業員からは邪魔者あつかいされ、くだらない詮索が気になります。
親類や友人が訪ねてこなければ肩身の狭い思いをしなければなりません。

大都会のホテルに決めたのは、毎日が賑やかで楽しいだろうと思ったからなのに
出かけて行く術も元気もなくて、無為に日々が過ぎていきます。

それにホテルを終の住処にすることはできません。
動けなくなったら養老院へ行くしかないので、なんとか従業員たちに悟られまいと
大丈夫なふりをする人もいます。

そんな毎日の中、パルフリー夫人はルドという作家志望の青年に出会い
親しくなって小さな幸福を手に入れます。
ふたりでホテルの客たちにちょっとした悪戯を仕掛けたりもしました。

パルフリー夫人の心に芽生えたのは恋心のようなものでした。
母親とうまくいかず、好きな女性にも冷たくあしらわれるルドも
パルフリー夫人に温かい気持ちを抱くようになります。
たとえ彼女と会うのが老人をモデルにした小説を書くためだったとしても…

物語は老人たちのエピソードを中心にゆるりゆるりと流れていきます。
滞在客たちの顔ぶれも変わります。
そして、パルフリー夫人がホテルを去る日がやってきます、それも突然に…

映画化されてます。
パルフリー夫人とルドの恋物語みたいになっちゃってたらいやだなぁ…
いくつになっても恋するって素敵だと思うよ、健康にいいかもしれない。
でも映像で見せられたくない気がする…

それに、決して “ 恋せよ女性!” というお話しじゃないと思うんです。
若いうちはわからない老いてからの哀しさがものすごく感じられる物語で
自分の2、30年後ぐらいを想像すると泣けてくるし、すごく怖くなってきます。
うちは子供もいないし、お金もないし、どうなっちゃうんでしょう?
しかも、物語の登場人物たちには子供がいるっていうのに…

作者のエリザベス・テイラーが、父親と友人を相次いで亡くした時に
目にした苦悩をテーマに書いた物語だそうです。
作者自身も57歳と老境に近づきつつある年代ですので
いろいろと身につまされるところがあったのかもしれません。

私はどんな老後を迎えるのか…否、哀しくない老後のためにはどうすればいいのか
今から真剣に考えなくては!と思った一冊でした。
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