まりっぺのお気楽読書

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『雀横町年代記』日記を出版するならば・・・

2008-11-17 00:03:12 | ドイツの作家
DIE CHRONIK DER SPERLINGSGASSE 
1857年 ヴィルヘルム・ラーベ

自費出版の本で“ 自分史 ” を書く人は多いようですが
自慢とか自分のことばっかりじゃ、読んでて辟易しちゃいますよね
この物語もある意味思い出を書いたものなのですが、主人公である筆者は
あくまでも脇役に徹していて気持ちよいものがあります。
物語ですから、とも言えますけど、日記を出版するならこうであってほしいと思える1冊です。

ある秋の日、老境にさしかかった文筆家ヴァッハホルデルが
長年暮らしてきた雀横町の思い出を書き記そうと思い立ちます。

日記の中に書き綴られていく物語は、幼い頃から恋い慕っていたマリーと
その夫フランツの悲しい死から始まり、二人が残した幼いエリーゼの成長とともに
進められていきます。

横町の名士である新聞記者のヴィンメルや、悲しい思い出を持つ老婆マルガレーテ
食料品屋のおかみさんピンペネル夫人などの過去を彩る人々と
変わり者の漫画家シュトローベル、子供を抱えた踊り子ロザーリエ、
エリーゼと不思議な縁を持つ未亡人ヘレーネなどの今を共に過ごす人々が
ヴァッハホルデルの日記をうめていきます。

日記の日付に起こった出来事と過去の思い出が唐突に交錯するので
時々、これは生きてる人だっけ? 思い出の人だっけ? とこんがらがりますが
横町という、少し雑多な印象の街で流れる穏やかな日々は読んでいて心落ち着くものでした。

もう少し、横町の人々の様々なエピソードが語られる物語かなぁ、と思っていたんですが
(例えばフィリップスの『小さな村』みたいな感じに)
物語は完全にエリーゼの成長記の様相を呈していて
ヴァッハホルデルにとっちゃ可愛くて可愛くて仕方がない という思いが偲ばれます。
帰ってあげなよぉ~ 手紙だけでなく。

気になったことと言えばですね、エリーゼとその夫になったヘレーネの息子グスタフは
実はおじいちゃんが一緒なんですけど(エリーゼの父フランツは、ある伯爵の不実の子で
グスタフの母ヘレーネはその伯爵の正妻の子なんですよね)それは問題無しなの?

それから、そのグスタフっていうのがとんでもなく怠け者っていうか
お調子者でいいかげんなんだけど、結婚を許して良かったのかしら?
画家になってイタリアに行ってるようですが・・・
今後が気になるわ。

物語にはドイツとフランスの戦争の話しも出てきまして
フランス側の例えばドーデーとかモーパッサンが描くフランス人同様、
ドイツ側にも戦争の悲しみにくれる市井のドイツの人々の悲哀が描かれています。
やっぱり戦争っていいことないわ!! 普通に暮らす人たちにとっちゃね。

雀横丁年代記 岩波書店


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