まりっぺのお気楽読書

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『ヘミングウェイ短篇集』はずまない会話がいい感じ…

2011-05-19 02:07:21 | アメリカの作家

アーネスト・ヘミングウェイ

ヘミングウェイはずっと読まず嫌いで、前回『キリマンジャロの雪 他12編』という
短編集にチャレンジしましたが、まだ長編を読む勇気が出ません。
再び短編集に挑戦です。

ちょっと慣れてきたみたいです。
訳のせいなのか、この一冊は前回よりさらにぶっきらぼうな印象を受けました。
でも、それがかえっていい感じ…

とにかく、登場人物のほとんどが、自分の言いたいことを繰り返し
相手の言うことを聞きやしないという強情な人ばかりで、会話が一方通行&堂々巡り。
日本人には無い(と言われる)強い自己主張ぶりに、小気味よささえ感じられました。

一番好きなのは『キリマンジャロ~』で紹介した『清潔で明るい場所』です。
それ以外に気になった物語をいくつかあげてみます。

『贈り物のカナリア(A Canary for One)』
パリへ向かう列車のコンパートメントで同室になったアメリカの婦人は
娘への贈り物のカナリアを連れていました。
彼女はしきりに夫にするならアメリカ人が一番だと力説します。
娘はスイス人と恋愛したので引き離したとも言っていました。

アメリカ婦人の相手をしているのはアメリカ人夫妻なのね。
とにかくこの婦人の会話は、夫はアメリカ人じゃなきゃ! の一点張りです。
最後の最後に “ ガクッ ” て感じになります。ヘミングウェイの体験談なんでしょうか?

『密告(The Denunciation)』
マドリードの名店チコーテの店の常連は、ほとんどがフランコ側につきました。
ある夜爆撃を避けて飲んでいるとウェイターがやってきて耳打ちしました。
なんと、やはり常連で、古い友人のルイス・デルガドが店にいます。
彼は反フランコ派の兵士になっていました。

この物語では主人公の男性とウェイターが、密告をめぐって同じ言葉を繰り返します。
お互いフェアでありアンフェア…あなたが決めてほしいっていう会話です。
でもラストで主人公は、ルイスの気持を大事にしてあげるんですけどね。

『雨の中の猫(Cat in the Rain)』
ホテルに二人しかいないアメリカ人夫婦の夫が窓から外を見ていて
テーブルの下で雨宿りをしている子猫を見つけました。
妻が子猫を連れにいきますが、行ってみるといなくなっていました。
部屋に戻った妻は「子猫が飼えないなら髪を伸ばしたい」と言い出します。

妻はさらにいろんなことを言い出しますけど、中には無理難題もあります。
猫の話しからどうしてそうなるの? っていう旦那の呆れぶりがひと言に滲み出てます。
女性が爆発した時の「何言ってるんだ」感が上品に表されているような気がします。

“ 弱く寂しい男たち、冷静で寛大な女たちを登場させて~ ” と裏表紙に書いてありますが
私は、それはあまり感じなかったですねぇ。
むしろ男性は、小さなことにこだわらずぶっきらぼうで憂いがあって…という男臭さがあり
女性は、静かに男の話しを聞いて相づちをうってるのに掴みどころが無い…という
神秘的&キュートさが目につきました。

(読んだことないけど)ハードボイドにおける理想の男女像、って感じですか?

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