あれこれ思うがままことのは

日々、感じたこと思ったことを語ります。季節や花、洋服のこと、時々音楽や映画かな。

本  「私」を受け容れて生きるー父と母の娘ー

2016年10月15日 | 読み物など

    
いい本だった。
「「私」を受け容れて生きるー父と母の娘ー」 末盛千枝子著  新潮社

児童書や絵本、IBBY(国際児童図書評議会)に深く関係し、すえもりブックスという出版社を立ち上げた経歴も持つ末盛千枝子さんの自叙伝である。生い立ちから現在までを柔らかくみずみずしい文章で連ねてある。あふれるほど多くの興味深いトピックがあって、どれもドラマティックで出来事が濃い。それでもいつどんな時も真摯に人や出来事に向き合ってきた著者の姿勢に、清らかな芯の強さを教えられる思いがする。

いくつもある章のなかからひとつ挙げるなら、
「私たちの幸せー皇后様のこと」という章。
1998年にある映像が全国的に放映された。皇后美智子様がご自身の子どもの頃の読書体験についてお話をされた、わたしも忘れがたい講演のビデオである。ニューデリーでの国際児童図書評議会主催の世界大会に際して皇后が自ら語られ、日本中のひとが驚きと共に観、聴き、感動したあの映像。その顛末に係わったひとりが末盛さんなのだ。
その後その講演の原稿は、「橋をかける」という本になり、書籍化するにあたっての尽力もされている。

今考えても衝撃的な、そして素晴らしい「事件」だった、あの講演映像。
当初は美智子様がインドでの世界大会に出向かわれて講演をされる予定が、その矢先にインドで核実験が行われたためインドご訪問が叶わなくなり、映像を会場で流すという方策を採ることになったのだという。短い準備期間のなかで、しかも隠密に、失礼も失敗も許されない重要なミッション。皇居で皇后の語りを収録し、現地の会場でその映像を流し、帰国して美智子皇后に反響の素晴らしさを報告するまでが描かれている。画期的だった事件の舞台裏の種明かしのようで、あらためてすごい出来事だったのだと実感を強くする。

久しぶりに読みたくなって「橋をかける」を図書館で借りて来た。安野光雅さんの筆による麦畑の表紙の清楚な雰囲気を持つその本は、皇后の記されたそのままに英語版と日本語版がひとつになっている。本になるまでの経緯を知った今また読むと、講演が会場に流れてその場にいた人々のこころのなかに言葉と思いが染みて行く状況を想像してぷるぷるっと鳥肌が立った。美智子様のお人柄はもとより、その思考のやわらかさや慈悲のありようが伝わってくるスピーチで、何度読んでもやっぱりいい、そのたびに沁みる。
    

末盛千枝子さんは彫刻家 舟越桂氏の姉でもある。
「「私」を受け容れて生きるー父と母の娘ー」の本は
わたしが舟越桂氏の彫像を好きなことを知っている友人が送ってくれたもの。
父を亡くしてひと月経ったころ、励ましのたよりと一緒に。

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