memory of caprice

浮世離れしたTOKYO女子の浮世の覚書。
気まぐれ更新。

手仕事の味わい、ガラスコップ

2015-07-27 02:43:31 | GOODS
2015年7月6日朝日の家庭欄より

「そばに置きたい」というGOODS紹介の欄が好きです。
時々、手仕事フォーラム代表の久野恵一さんが担当されていましたが、この日の記事にはクレジットに
*久野恵一さんは4月25日に亡くなり、遺稿を掲載してきました。今回で終わります
という一文が目にとまりました。
お亡くなりになった後も、お仕事が生き続けていたのですね。

紹介されていたのは「太田潤さんのガラスコップ」
あめ色、スカイブルー、透き色の3色で高さ7センチ、幅6.3センチ。一個2000円(税抜き)。
問い合わせは工芸店「秋月」(☎0946・25・1270、火曜定休)へ。

本文は以下の通り。

 色鮮やかなガラスコップを紹介します。50年ほど前にメキシコのたるの形をしたコップが民芸に携わっている者の間で流行りました。それを見本にして小ぶりに作ってもらったのがこのコップです。180ccほど入りますので、ビールをいれてもいいし、冷たいお茶にもあうと思います。
 ガラスの内部に泡がついています。温度をやや低めに設定して吹くと、この泡が残ります。「ガラスのコップはクリアじゃないといけない」という人もいるのですが、手仕事の良さを感じられるのではないでしょうか。
 作っているのは、太田潤さん。福岡県で有名な小石原(こいしわら)焼の窯元の次男として生まれました。じっとロクロで回すよりも、動き回りながら作る方が合っていると感じていたそうです。また、半世紀にわたって倉敷ガラス(岡山県)の民芸品を作ってきた小谷真三さんに憧れ、ガラスの道を選びました。沖縄県で再生ガラスを学び、その後独立して福岡県で工房を開きました。
 訓練を重ねて一定のものができるようになりました。評判もよく、太田さんの定番商品になりつつあります。

歌舞伎衣装の製作・直し 小堺徹一氏

2015-07-23 14:14:51 | ART
2013年の黄綬褒章の記事の切り抜きが出てきた。
歌舞伎衣装の制作・直しを手掛けて約70年。江戸時代からの文化を支え続けた功積が評価されたという小堺さんは当時86歳。

洗張屋の生まれ。浅草の店が東京大空襲で焼け戦後再出発。
歌舞伎を中心に和の舞台衣装の世界に入ったと言う。

手間のかかる衣装作りは「割に合わない」と思い、やめようと思っていた若い頃、初代水谷八重子の舞台を観た。自作の薄い納戸色(鈍い青)の着物のすそを引きながら、水谷が登場した瞬間、客席から「うぉー」とどよめきが起きた。役者は勿論、着物も形が良くなければ、客の心を動かすことはできない。「自分がほめられたようで、やめようという気持ちは一発で吹き飛んだ」
 
染や絵付け、刺繍、仕立て、すべて自前でできる数少ない工房だ。歌舞伎は初日までの制作の時間が限られ、外注では間に合わないこともある。「歌舞伎の衣装を誰かが守らないといけない」との思いから、自前には思い入れがある。15人の職人がおり、後進の育成にも熱を入れる。

客席との距離を計算に入れ、衣装にはメリハリをつけなければ映えない。演目ごと一つひとつ違い、そこが難しく、楽しみでもある。最近の仕事で印象深いのは「菅原伝授手習鑑」の「寺子屋」の松王丸の衣装。雪をかぶった松とタカの見事な絵柄を約1年かけて、すべて刺繍で仕上げた。

荒川区荒川6丁目の店では、洗い張りや仕立て直しなど、着物を長く着てもらえるような仕事も引きうける。「着物文化を残していきたい。ぜひ着物を着て、歌舞伎を観に行ってほしいですね」


*お店の名は「小堺」
いつか行って、洗い張りを頼んでみたい。

優れ物!低価格万年筆の進化

2015-07-23 11:19:12 | GOODS
2015年7月18日朝日新聞
「かしこく選ぶ 買い物指南」
モノ系ライター納富康邦氏による記事より。

高級品のイメージが強い万年筆。ペリカンなど、海外のメーカーが若い世代に親しみやすく・・とPOPなぺリカ―ノなど、低価格品に力を入れていることは知っていましたが、日本のメーカーも逸品を出していることがわかった興味深い記事でした^^

紹介されていたのは2品。

1)パイロット「カクノ」税込¥1080

 2013年リリース。1万~2万本売れれば人気モデルとされる万年筆の世界で、子供や大人の女性に支持されてなんと100万本以上の売り上げをつけているとか。
納富さんによると「万年筆の命とでもいうべきペン先は3千円相当の価格帯に匹敵する品質。細かい配慮も盛りだくさん」とのこと。
キャップや軸は転がらないように六角形。キャップの色はカラフルに10色。握る部分はなだらかな三角形で筆記具の正しい持ち方に誘導する設計。
お手入れの仕方をイラスト入りで丁寧に解説した説明書も。販売時には、インクカートリッジが一本ついているが、別売りのコンバーター(吸入器)を使えば、インク吸入式としても使える。
ペン先はステンレスで、細字・中字の2タイプがある。軸の色も白・黒2種類。ペンケースに入れやすいよう、キャップにクリップはついていない。

 1)プラチナ万年筆 「プレジ―ル」税込¥1080
 
 万年筆は長い間使わないでいるとインクが乾いたり詰まったりするのが弱点。
しかしこちらは「万年筆らしい重厚感ある外見に加え、インクが抜群に乾きにくい」。
キャップの内側に バネ付きのさらに小さいキャップがある独自の構造が、乾燥防止の秘密。気圧をうまく調整し、気密性を高めている。
プラチナ万年筆の実験では、キャップをした状態でも同社の従来品は4カ月放置すると文字が書けなくなったが、プレジ―ルは1年放置した後でもそのまま使えたという。
 プレジ―ルはカートリッジ利用が原則だが、年20万~30万本が売れるヒット商品になっている。
この価格帯で軸も含めてオ―ル金属製という品質も支持を集める。
ペン先はステンレスで、細字・中字の2種類ある。軸は細字が10色、中字が6色展開で擦り傷に強いパール加工が施されている。


自分では、平素モンブランなど、重厚な本格派を使っていますが、こういう「良くできたモノ」の話を聞くとついつかってみたくなりますね^^

トルストイ「イワン・イリッチの死」

2015-07-07 09:52:48 | BOOK
聖路加国際病院院長 福井次矢さんが薦める3冊、というコラムをその3、でようやく目にとめた。
2015年7月6日。
トルストイ「イワン・イリッチの死」(岩波文庫)

 19世紀後半、ロシア中央裁判所判事にまで登り詰めたイワン・イリッチが、45歳で死ぬまでの心の動きを微細に描写した小説だ。
 脇腹の痛みを、最初は「取るに足らない」と無視するが、痛みが激しさを増す中で死に至る病だと受け入れるまでの肉体との対話。一方、家族や医師が真実を隠しているのではないかという疑念、自分の人生が間違っていたのではないかという悔恨など、周囲や人生そのものとの対話。そうして迎えた臨終の間際、彼が達した境地は・・・。
 時代が変っても、誰もがいつかは家族や他人の死、自分の死に臨む。物語を通した死の疑似体験から、生を凝視する視点が得られよう。


ロシア文学のテーマは重く、その深さには驚きを禁じ得ないことが多く、何度読んでも発見があるところが魅力。
医師である推薦人の言葉にも、別れがこれから多くなるであろう人生を予感すると、なおのことその意味が深く心に届くように思えます。