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「アインシュタインの時計 ポアンカレの地図」を読む

2016-11-03 18:10:24 | 
アインシュタインの時計 ポアンカレの地図
ピーター・ギャリソン 松浦俊輔 訳
peter Galison 2003
名古屋大学出版会 2015
 
 ポアンカレは数学者、アインシュタインは物理学者として、それぞれ時代と隔絶したと思っていた。そうではなく、彼らの研究成果は、その時代の社会、その実情を深く反映し、彼ら自身もその中にどっぷり浸る中で、成し遂げられたということが、わかりにくい文章で綴られた本である。
 ポアンカレは、私の中では数学者というイメージであったが科学と方法というベストセラーを書くくらいだから物理学者としても一流だったのだろう。また、はじめは鉱山技師、のちには経度局長官を長らく務める官僚という側面もあったとのこと。彼が生きた19世紀後半から20世紀初めにかけては、時計を合わせるということが社会的な要請であった。バラバラな時間、離れた時間の差は経度差、それをどう求めるか。それは時代の先端課題であった。
 アインシュタインは、仕方なく特許局で仕事をしていたような印象を持っていたが、その仕事もしっかりやっていた。特許文書の書き方の作法、だれにでもわかるようにその新奇性をアピールするという手法が、1905年の論文にも表れているとのこと。当時、時間を合わせるということが時代の要請であったので、時間計測に関する特許がいくつも申請されており、アインシュタインはそれを担当していた。その中で時間とは何か、同時性とは何かを深く考えていったと思われる。
 純科学的な成果も世間の具体的な要請の中での仕事をとおして生まれてきたという点が印象的。昔はそうだったが、現代でも同様なのだろうか。
 
 
 
 

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