店主のたわごと

まれ助堂店主、八神まれ助の煩悩吐き出し処。
小次健、やおい、BLが含まれます。意味の分からない方嫌いな方はご遠慮下さい

NEO NEW ROMANTIC(3)

2016-02-12 10:20:00 | 30周年
暗い道路を走りながら、日向の頭はこれからどのような進路を辿れば、最速で荷物を運ぶことができるか、知る限りのルートをシュミレーションしていた。

チラリと先程目にした中慰が気になったが、日向にとって中慰があの場所になぜ居たかなど、もうどうでもよい事だった。あの男は自分の中では既に過去の人物であった。
日向にとって今何よりも大事な事は、積んでいる荷物を、無事に決められた時間までに届ける事であった。

日向は前方を睨みながら、器用にパネルに指示を打ち込んだ。表示された画面を読み取り、思ったよりもギリギリなことに気が付くと、舌打ちをして更にスピードをあげた。

その内車は山道に入った。辺りには広々とした森が広がっている。開けられた窓から、ムッとするほどの緑の匂いが感じられる。日向はその濃厚な空気を大きく吸い込んだ。

この辺りは政府の保有地だった。今走っているこの道は、れっきとした公道だが、政府のお偉いさん達の道楽が始まると、完全に閉鎖されてしまう。
確かもうすぐ、その道楽の季節だった。

道路が閉鎖されてしまうと、この地区への立ち入りは全面禁止となる。そうなるとこの道の代わりに、下にある道を通らなければならない。グルリと迂回する事になる上に、道路の整備が甘くほぼ砂利道である。
道幅も狭く、大きな事故が頻繁に起こっている。時間は今通っている道の倍はかかるだろう。
何度かその道を通ったことのある日向は、つくづく今がその時期と重ならなくて良かったと思った。
間に合う。
ホッとした日向は、自分が今朝から何も食べていない事を思い出した。長い間検問に引っ掛かっていたので、食事を忘れていたのだ。思い出した途端に、腹の虫がけたたましい音をたてた。
生憎と携帯食料さえも、持っていない事に舌打ちをして、日向は車を走らせた。
すると道の先に、煌々と灯りがついているのが見えた。森が邪魔をしているので、そこに何があるのかは分からなかったが、日向はとりあえずはそこに着くべく、車のスピードを上げたのだった。


着いてみるとそこは無人のサービスエリアだった。つい最近できたのだろう。ほんの三ヶ月前に通ったときには、こんなものがあった記憶がない。
日向はスピードを落とすと、車を駐車場に乗り入れた。時間はギリギリだったが、車を走らせながら食べられる物を購入しようと思った。
駐車場には日向の車の他に、何台かがエンジンをかけたままの状態で、置いてあった。どれもやはり、検問に引っ掛かっていた車らしかった。日向と同じく、腹が減ってここに来たのだろう。
人間考える事は同じな訳だ。日向は軽く嘆息すると外に出た。
ドアを開けると同時に、ぷんと鼻をつく臭いが漂った。日中の気温で溶けでもしたのだろうか。まだ新しいアスファルトから、石油の揮発した臭いが立ち上っているのだ。夜になり涼しくなったとはいえ、気温は30度を越えている。湿気も強かった。臭いは体にまとわりつき、日向を不快にさせた。



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おはようございます!
毎度まれ助でございます(・∀・)ノ

やっと再開の30周年話!
まだまだ序章にもなっていませんが…( ̄▽ ̄;)
のんびりお付き合い頂けたらと思います。


今週は息子がインフルエンザになってしまったけど、他の家族には移らないまま終わってくれそうです。良かった~(>_<)
そしてまれ助、来週の月曜日に胃カメラです(爆)2週間胃が痛いよ(T0T)
エコーを撮ったら、脂肪肝発覚!
だけどそうじゃないかと思っていたから、ショックではなかったけど(^_^;)
他にも色々発覚したけど、取りあえずは1つづつ治していこうと思います。
アラフォーにもなると、色々ガタが出てくるねorz

それでは以下次号!
お楽しみに~♪
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NEO NEW ROMANTIC(2)

2015-08-06 15:40:00 | 30周年
全く動かない現状に、周囲の車の者達も苛立ちのピークなのだろう。窓の外では怒声とクラクションが飛び交っていた。

ふと、その中のひとつに関心を寄せられた。
怒鳴り合っているのは知り合い同士なのだろうか、二人して検問の事を罵り合っている。
その内になんの検問なのかという疑問が飛ばされ、それに他の車が答えていた。

「何でもよぉ、重要参考人みてぇなのが逃げ出したんだと」
「何のだよ?」
「知るかよ!此処らへんはよ、政府のお偉いさん達の土地だからなぁ。大方やべぇ秘密を知っちまった、愛人とかじゃねぇのか?」
「乳のでけぇ、若い姉ちゃんだったら、俺の車に匿ってやるのによ」
「そりゃいいや」
下品な笑いが後に続く。

下らねぇ。日向は忌々しげに舌を打った。
さっきの話が本当なら、そんな事でこれ程の手間をかけるなんて、偉い奴等の気が知れなかった。

日向の車がやっと検問に辿り着いたのは、それから30分程経ってからだった。
思っていたよりは早かったとはいえ、この時間のロスは痛かった。

「免許と通行許可書を」
日向がそれらをぞんざいに渡すと、警察は胡散臭げに日向を見た。
「荷物の中身は?」
問われるままに答える。
こういった所をさっさとやり過ごすには、素直に答えるのが一番手っ取り早いからだ。特に今回は探られてヤバイ物は乗せている訳でもない。

「確認する。後ろのロックを開けろ」
高圧的な警察の態度に、日向は愛想とはほど遠い顔でロックを解除した。もうひとつの後部ロックを外すために、自分も車から降りる。

警察は日向達のような運び屋に、当たり前だか良い顔はしない。今回のような検問があると、一般車に比べて厳しく取り締まられる。
運び屋達が当然のように、非合法な物を運んでいるのが気に食わないらしい。とんでもない言いがかりで、ブタ箱にブチ込まれる奴が、後を断たなかった。
自分達の様な者と警察が、互いに嫌悪し合うのは、何世紀も前からのお約束の様なものだ。
今の時代の警察が腐敗しきっているのを知らない者はいない。
今回は特にヤバイ物は積んではいないとはいえ、いつどう難癖をつけられるか分かったものではない。日向は必ず自分の目が届くために、遠隔ロック以外に日向の生体認証でしか解錠できないロックを、後ろの扉に付けていた。

日向は扉に近付くと、自分の情報をセンサーに読み込ませた。開けた扉の横に立ち、腕を組むと頭で中を指し示した。
「どうぞ」
そのまま警官達の行動を見張るように眺める。
警官達はそんな日向を尻目に、好き勝手中を荒らすと、やっと日向に通行の許可を与えた。

「いったい何の検問で?」
エンジンをふかしながら問う。
いくらなんでもこれだけの人数が出ているのはおかしかった。
さっき聞こえてきた話から、勝手に1人が逃げたと思っていたが、実はもっと大規模な事が起こっているのだろうか?
高々人が1人逃げただけでこんなに手間隙がかけるはずはないと思った。

それに…

日向は先ほど目の端に捉えた人物を思い起こした。
つい先程やって来た車から出てきたのは、政府のSSの奴等じゃなかっただろうか…?
中に見知った顔が居たので、ドキリとしたのだ。あれはたしか中慰であったと思う。もっとも自分が知っている頃と変わっていなければの話だが。

あの男に見つかるのはヤバイ。

そんな日向の懸念を他所に、警官はジロリと睨み上げた。
「貴様が知る必要の無い事だ」
答を期待していた訳ではなかった日向は、肩をすくめると前に向き直り、思いっきりアクセルを踏み込んだ。
無理な加速にグンッと車体が揺れ、タイヤが悲鳴をあげて軋む。
いきなり発進した日向の車に、先程の警官は度胆を抜かれた様に飛び退いた。その拍子に引っくり返って尻餅をついた警官の、足スレスレにタイヤが滑っていく。
風の音に混じって、警官の罵倒する声も遠ざかっていった。

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NEO NEW ROMANTIC(1)

2015-08-05 10:46:27 | 30周年
日向は苛ついていた。

今日中に着かなければならない荷物を積んでいるというのに、一向に車は動く気配がない。

検問があるのだ。

比較的背の高い日向の車からだと、バリケードを組んだその光景が、前方に連なっている車の隙間から、垣間見る事ができた。
決して治安が良いわけではないこの国では、凶悪事件は日常茶飯事だ。相当の事でもなければ、こんなに厳重な検問が行われることはないはずだった。

何か重大な事件でもあったのだろうか?
日向はイライラとハンドルを指で叩いた。
捕まったのは検問から丁度2kmほど手前の所だ。既にそれから3時間近くが経っているが、まだ500mも検問は先だった。
500mを約1時間で進んでいることになる。
2kmを4時間…
日向はそのあまりのロス時間に、げんなりとした。何のためだか分からない検問て、そんなに時間を食ってなんかいられない。1分1秒が惜しいこの時に、厄介なものに捕まってしまったと思う。

『時は金なり』

その昔誰が言ったか知らないが、正に日向の仕事はその言葉通りのものだった。
日向の仕事は運送屋であった。『この世に運べないものはない』というのが売りの、Transportatipn Service System…通称TWSの個人資格所有者である。
もっとも運送屋などと言っても、日向のように大手の企業には属さず、フリーランスで仕事をするものは所謂運び屋と呼ばれており、大抵は合法的なものはもちろん、非合法のものも当たり前に扱っていた。もちろん日向とてそれは例外ではない。今までに相当法を無視した事をやってきている。そのお陰で今では食うに困らない程度の収入が入るようになっていた。
だからこそ、信用がものをいうこの世界で、こういった時間のロスはかなり痛かった。特に自分の様にフリーランスの者は信用を無くしたら、2度と仕事は回ってこないと思わなければならない。
キチンと決められた時間に届けられるかどうかが、死活問題になるのだ。

どうにかならないものかと、日向は車の窓から頭を出し、外の様子を伺った。しかし見えるのは、検問のためのバリケードと、この国の警察特有の鳶色をした制服だけだった。
日向は軽く舌打ちをすると、頭を車の中に戻した。荒れた髪に手を差し込んで、ガシガシと掻きむしる。
相変わらず車は進まない。
付けっぱなしのラジオから、甘い声の女が唄うジャズが流れてきた。まとわりつく様な女の声が、更に日向の神経を苛立たせた。
日向は乱暴にそれを消すと、胸元を探った。空のポケットに煙草はもう止めたのだと思い出して、盛大に罵りの声をあげた。どうしようもないのだと分かっていても、苛立ちは募るばかりだった。



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皆さまこんにちは!まれ助でございます(^3^)/


やっと始まりました30周年!
まだ序章も序章なので、訳分かりませんねf(^_^;

それではちょっと解説。
えーっと先ず、この話の初出はなんと22年前です…( ̄▽ ̄;)あら、自分でもビックリ!そんな前だったのね…

当時の小次健は、大手の作家さんがパロディものをこぞって出していた時期でもあって、正当路線からかなり外れていました。
元々SFファンタジーが好きだったまれ助、それに乗っちゃったのですね( ̄▽ ̄;)
この話の日向さんも若島津も、サッカーは全くしてないですよ(爆)
今だったら考えられないっす。サッカーしてこその二人だもんね。

なのでいつもの二人が好きな方には、ちょっと納得がいかない話かもf(^_^;
気に入らないわ!って方がいましたら、本当に申し訳ありませんm(__)m

この話を出した頃、丁度仕事をはじめて忙しくなって、段々イベントから遠ざかっていった頃でした。
イベントに出たくなくなった訳ではなく、土日祭日仕事なのですよ( ̄▽ ̄;)オタクにとっては死亡フラグの仕事だよなぁ(爆)

イベントに出なくなったら、自分が読みたいものってなんだっけ?と思うようになって、やっぱりサッカーしてる二人だよなぁと、原点に戻ったのでした。

でもこの話は、未完で終わってしまったのがずっと気になっていて、いつかは終わらせようと思っていたのです。

今回まれ助堂30周年という節目に当たって、これを完結させようと決心しました。
1年で終わらせられるか分からないですがf(^_^;
月日も経って、自分の中でも相当の変化があったと思うので、原稿はあるけど試行錯誤しながら進めていくと思います。
どうか生暖かく見守って頂ければと思います。

それでは皆さま、お付き合いのほど、よろしくお願いいたしますm(__)m


まれ助堂店主、八神まれ助拝

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