serohantape

セロハンテープ。
思い、切って、貼って。

戻れたらな。

2007年04月15日 | 
転んでないけどすりむいた
バンドエイド、ある?
うそだろ

どうした、俺ごとき
どこから来て、そんな顔をしてる

僕達は所属しない
そう言い聞かしては
そう言い聞かしてた

戻れたらな

誰もが旅人だから
東京の夜は
海岸の一日みたいに、今も輝かしき退屈を映している。

アンサーソング。

2007年04月12日 | 
何も手にすることのできないこの右手で
空を割って海へ出るとしよう
それでつながるいくらかがあるだろう

疲れたなんて言うなよ
いとしくなんてならないから
果てないなんて言うなよ
ひとりになんてなれないから

こうやって右手で空(くう)をきって
抱きかかえられるものは何もない
何もないだけがある
それで充分で
白い海と歌とで
何も掴めないだけ
それだけ
それだけ掴みたいだけ。

ルドルフのはず。

2007年04月01日 | 
始まりは今日もまた、となかいでした。彼は今日もまた、赤くも黒くもない鼻を誇らしげに――そう見えたのは僕が人間で、「アノ」歌を知っていたからでしょうが――振りながら、歩いていました。
子供がやってきて言いました。
「ねえしかさん、しかおせんべいたべる?たべる?」
となかいは言いました。
「ヘイボーヤ、あたしは鹿とは違うのよ。ほら、よくごらんなさい、立派なりっぱなおつのが、ほらここに、そびえたってるじゃないの。ほら、ようくごらんなさいよ」
僕はこのときになってようやっと、彼女のことを彼と呼んでいたことが誤りであったことに気付いたのでした。それは驚いたというよりも、申し訳無い気持ちになりました。
するととなかいはそれと悟ったかのように、こちらを振り返りました。僕はどきっとしました。
「ねえあなた、あなたもあたしのこと、鹿と間違ってたんでしょう?素直にお言いよ。あたしゃこれでも短気なほうじゃないので有名なんだからさ」
僕がどぎまぎしていると、その日同行していた戒めが、僕の左腕に組みかかっていた右半身をほどいて、助け舟を出してくれました。
「彼はね、とっても優しいのよ。あなたのような動物のことを鹿と思うことが、生まれてこのかたあったかどうかすら怪しいもんだわね。それどころか、あなたのそのおかおに見とれていたようよ。全く、妬いちゃうわ。あなた、よくもまぁ彼とこのあたしの目の前で、その美しい茶色い鼻をちらつかせられたもんね。あぁ、全く、ほんと妬いちゃうわ。あたしってば、褒めてるのよ、勿論、本当のところ」
しかし僕は余計にどぎまぎしてしまいました。戒めが、本当の意味で、僕ととなかいに妬いていると勘違いしたのです。戒めがそんな気持ちになるなんて、普通じゃ考えられないはずなのに。その日の僕はもともとちょっと気が動転していたのでしょう。何せ、絶えず戒めの傍にいられるのですから。
とにかく、とてもどぎまぎしてしまった僕は、その場で戒めの肩を抱き寄せ、その頬に軽く自分の頬をすり寄せました。しかしその際、なんだか悪いことをしているような気分になってしまったのです。
となかいも、なんだか人に戒められたような様子で、すごすごと後しざりし、さっきの子供とつのを使った遊びを始めました。
戒めはなんとなく喜んでくれたようでしたが、それは彼女が戒めのこころを持っているということに帰属するのでしょう。人間のこころを持った人間の女の子だったら、僕のことを最初っから優しくしか扱っていなかったんじゃないかな。僕は救われたような、失敗したような、なんだか変な気分でした。
あんまり変な気分になったので、その日のディナーは、ビーフステーキを食べに行きました。彼女は鼻を真っ赤にして喜んで食べてくれました。