ニューヨー句

1ニューヨーカーの1ニューヨーカーによる1ニューヨーカーのための1日1ニューヨー句

水たまり残りし道や柳絮飛ぶ

2008年05月31日 | Weblog

日本のET企業の新入社員歓迎式での社長訓示。あなたがたには今後十年間丁稚奉公していただきます。次の十年間は勉強していただきます。その次の十年でマネージメントをしていただきます……そんな会社へ誰が行きたい? 一方カリフォーニヤのグーグル本社。若い研究員たちは、ベストシェフが腕を振るう各国料理食べ放題、ジム&スイミングプール使い放題、芝生のお庭にファーマーズマーケット有機野菜買い放題、オフィスに(猫以外)ペット連れ込み放題、壁に(アイデアの)落書きし放題、 社内の移動は電動キックボード乗り放題……こんな会社誰が行きたくない?

 
先月は麦茶を買いに、ちょっと遠いが×グラへ行った。鯛とマグロの刺身。町子好物のシラス。お惣菜やお寿司も品々、J×Sとは雲泥の差であった。これからは遠くても×グラへ行くぞと決心したはずが、やはり遠いのでJ×Sへ行く。それだけでない。前回×グラ店主の言動にカチンときたのだ。それはなにかというと、夫が通路に立ち商品を物色している後ろを、荷運びの男が通りかかった。そのとき、店主とおぼしきが不機嫌な声で「後ろ!」と夫に言った。夫は反射的にすいません、と避けて荷物を通した。だが後になって、なんかおかしくね? と首をひねった。これが黒人のオッサンに、「わっちい!」とか「わっちゃあ!」とか言われたんだったらノープロブレムだが、あの主は日本人。後ろ、って言うくらいだから絶対日本人。いくら無愛想でも日本人だったら、「荷物通るからそこどいて?」くらい言う。ちょっと丁寧な親父なら「あいすいませんお客さん、後ろ荷物通りますんで、へい、お気をつけ下さい」くらい言う。そう。「お気をつけください」が日本の標準、日本の品格だろう。サービスより刺身欲しさの日本人が性懲りもなく毎日群がり来るので奢り高ぶっているのではないのか。しかーし、私はそうでない。刺身など一生二度と食わんでもえーのだよ。実際買っても食いたくないし、食わんのだよ夫と子供しか、わはは。のれんの上に×グラをかいてはいかんがー。
(昨日、吉兆のおかみが廃業会見で、「暖簾の上に胡坐をかいておりました」と頭を下げていた。NKHのアナウンサーは、「やることなすこと裏目に出る日本の酪農家」と言っていた。なんか面白いこと言わんと許されん雰囲気なのか日本は。)
 
ガッテン流ヤキソバを夫が試した。美味しかった。店のヤキソバにぐっと近づいた。コツは、最後の最後まで麺をほぐさないこと。外側を焼いて水分を内側に閉じ込め逆水分傾斜を作る。面倒くさければ、一人分ずつ作るだけでもずいぶんましになる。家庭用フライパンで四人分の麺をほぐしてかき混ぜるのは最悪だ。しかし家庭ヤキソバとガッテン流ヤキソバの差を五十歩としたら、店のヤキソバまでさらに五十歩くらいある。頑張って百歩いったとしてもしょせんヤキソバだからという気もする。
 
(写真は偉大なるドッグウォーカー。多いときはこの二倍くらい連れている。)

旱星闘志育むまでゆかず

2008年05月30日 | Weblog
夫のアリゾナで作った俳句の載った句誌が届く。道子がたどたどしく読んでいるので、いちいち解釈と鑑賞を説明してやる。道子は詩に対する憧れがある。先日、宿題のソネット(*1)がどうしても作れないので町子に手伝ってもらったら、それがクラス最高の95点をとったらしい。なんで? 私の作る詩とどこが違うの? と道子は叫ぶ。それがわかればいい詩が作れるのだよ。ベスト5をここに書きおく。

蜂鳥の羽音の甘き朧かな

インデイアン居留地の夜の蕨かな

仙人掌の棘まで春の暮れにけり

高速道路ラツシユアワーの雨水かな

鳥の巣の闇に踊りしマンボかな

*1 ソネットにもいろいろあるが、道子が習っているのはシェイクスピア風ソネット(十四行詩)、ABAB CDCD EFEF GGの構成で、それぞれAとA、BとB……という風に韻を踏んでいかねばならない。


今日こそ白人洗濯婦と決着をつけるべく色々と準備(*2)のうえいよいよ洗濯に臨んだが、彼女は今朝休みであった。いないとせいせいすると思いきや、ちょっと淋しい。

*2 町子を見送りがてら、夫から「きっぱりI don't careと言う生き方と実践」についてのレクチャーを受け、道子がお風呂に入っているときトイレを使おうと入ってきた夫に対して投げつける罵詈雑言を横で聞いていくつかメモし、そのうえ「らくちん喧嘩英会話」というウェブページを見てニューヨーカー(特に黒人)の啖呵の切り方を勉強。

一難去ってまた一難。サイエンスフェア当日は休んでも単位をもらえる約束をとりつけたはいいが、その後NYにある九つの選抜公立高校(specialized high schools of New York City)入試(SHSAT)の準備クラスに五万出して入りなさいという案内がきて焦る。道子の志望校はその九つの高校の中でただ一校だけの芸術高校であり、入試はオーディションと成績表のみ。よってその予備クラスを受ける必要はないと思うのだが、その旨ガイダンスカウンセラーに質問を書いて送ってもいっかな返事が来ない。夫がカウンセラーと喧嘩しなければよいがと星に願う。

本日の記事の中に真っ赤な嘘が一つだけある。

こでまりを弾ませて犬通りけり

2008年05月29日 | Weblog
最近小さな人が目につく。駅前で待ち合わせをしている金髪の若い小さな女性たち。おしゃれして、ハグしたり、笑いころげたり、どことなく華のある小人さんたちだ。一人だけ混じった普通の背丈の女性が一番不細工で、黒い髪をまだらに染め、みなの分のジュースを買いに走って行ったりしている。もしかしたら小さなのは女優さんたちで、不細工はジャーマネかもしれないと思った。先日の夕方も、うちの前の交差点で若いアジアンの小さな男性が携帯に耳をくっつけて悲しげに話しているのを見た。本当に悲しそうな顔であった。今朝はまた、近所にオープンしたSleepy's for the rest of your lifeのCMでおなじみの寝具店から中年の小さな男性が出てくるのを見た。金持ちが気さくな格好で来ていますみたいなTシャツ姿であった。

ねぶの花傘をたたみて仰ぎけり

2008年05月28日 | Weblog
俳句にはコツがある。「本当に大事なものは何か」をよく見ると、大事でないものをどんどん捨てることができる。これは人生のコツでもある。しかし私は人生のほうはまるでだめだ。今朝も道子の高校進学に必要な単位のことで大失敗をする。サイエンスフェアに出なければLG高校進学に必要な単位が取れないとあれば、何が何でもサイエンスフェアに出席しなければならないのに、サイエンスフェアは膝の手術の二日後。手術前と勘違いしていた。手術前検査は来週すぐ。延期するかどうか、即決せねばならぬ。今朝夫に何気なくサイエンスフェアの日程を話していたら、それが明るみに出た。夫が聞き流していたら、一大事だった。まだどうなるかわからない。
 

マロニエの花びら踏みて仰ぎけり

2008年05月28日 | Weblog
Aちゃんちにてワインとプールの休日。オーストラリアのシラズはあけびの味。魔法の鍋で炊いたバジル鶏肉じゃが。Aちゃんの夢千代ガラシャ完成おめでとう。プールにてビーチボールを二十回落とさずにつくのに躍起となる。それたボールを取りにプールサイドに上がった町子が、再びプールにごろりと入った姿を評して夫。「とても人間に見えない。たとえるなら紐で縛ったローストビーフが鍋に……」 

五月闇娘の脈の速かりし

2008年05月26日 | Weblog
昨夜遅くミスターLの妹さんのピアノが届く。三千ドルのカワイの中古を半額で譲ってもらった。小型のアップライトとはいえ、たった一人で運んできたのだからえらい。夫がロビーからエレベーターまで運ぶのを手伝う。そして、「ピアノと一緒にエレベーターに乗りたくない」と言ったら、運送屋はにやりとした。レンタルピアノよりタッチも音も軽い。音色を作るところまではいかないが、練習には十分。なにしろミスターLも妹も弟もHRNちゃんも弾いた思い出のピアノだ。リンデンは早速ピアノの上で寝る。リンデンが何度も試して大丈夫となったら、メープルも真似して寝る。

ミスターLから話を聞けば聞くほどRSN先生に好感を持つ。最初の年RSN先生についた生徒は五人。次の年に二人減り、三年目にはミスターL一人になった。そのまま卒業までマンツーマンであった。生徒が長続きしないので大学にいられず、西海岸の大学へ移るも、今回またそこを辞めてNYへ戻られることになった。もっと演奏したい、子供も教えたいと思っておられる。しかしRSN先生は基礎を教えない。完璧に弾けるようになった曲を持って来た生徒にだけ、それを輝かせるヒントをくれる。そのヒントは宝の山だが、子供には無理だ、RSN先生と平行してトレーナーが必要になる、というのがミスターLの話。しかし夫がまず教えて、それからRSN先生に見てもらえば問題ない。

夜中に道子に起こされる。急に動悸が激しくなって怖いという。熱はない。脈が速い。夫も不整脈があるので、症状を道子に説明して聞かせる。すぐ終わるものなら、よくあることらしい。道子は昔からちょっと走るとやけにハアハアいって心配したものだ。故郷の昔の家の門をくぐった土間に祖父が狸や鷹を飼っていた。その上に燕の巣があって、ある日子燕が落ちてきたと思ったら、それが蝙蝠の子だった。巣から突き落とされたのだ。お菓子の箱に綿をしいて蝙蝠の子を入れると、小さいながら蝙蝠傘のような翼があり、すでに標本みたいに見えた。トクトクいう道子の速い脈をとっていると、唐突にそれを思い出す。朝になると、道子は元気に起きてきてトリオを弾く。

年に一度の歯科検診。手遅れにならないうちに町子に矯正を、と三年前からLVY先生に言われ続けている。「虫歯がなかったのは奇跡だね」と二人は喜びあう。

白南風の心はすでに故郷哉

2008年05月25日 | Weblog
ロバートソン指揮、NYPへ。リアンのソロとシベリウスよし。隣の口臭おばさんに夫は口臭ドロップを勧めそうになる。ロバートソンは決して外さないが、予測可能な面白さ。

ピアノ運送屋さんが、朝ミスターLのアパートにてピアノをピックアップ、そのままうちへ運んでくる予定をすっぽかす。本当か嘘かわからない言い訳を聞く。今夜九時にリスケジュールしてから、最後のチェロレッスン。ミスターLは今日妹さんのプリカレッジの卒業式とパーティー。妹さんはジュリアードの一次審査(ピアノ)に受かったのにインタビューで落ちたという。マネス音大が妹さんを受け入れた。あたら天才をインタビューごときで失うとは馬鹿げた話。ミスターLの弟さんは昨日ジュリアードを卒業、マスタークラスへフルスカラーシップで進学。連日の卒業パーティー、フェアウェルパーティー。RSN先生からも電話がかかる。来週には帰国なのに最後の最後まで師匠の世話。レッスンのあとHRNちゃんと一緒にARTカフェにて打ち上げ&お別れ。婚約者達の未来にシラズで乾杯。続いてメルロー。四年間の思い出。写真と寄せ書きのアルバム。道子の手の写真。ミスターL以前と以降のボウハンド。町子はこの頃より痩せたね。僕はクレイグリストに「生徒募集」の広告を一度だけ出しました。私がたまたまそれを見つけた。お互いに幸運でしたね。HRNの故郷はチェジュ島の近くですよ。いいえ、飛行機で四十分もかかるのよ。ブラームスの嫌いな人がいるなんて信じらんない。ブラームスは僕達のナンバーワンです。ソウルには独特の雰囲気があってね、恋しくてたまらなくなるんですよ。ミスターLの「ワルツ」にピアティゴルスキー先生の影を見ました。HRNちゃんの最後のリサイタルは心を開ききって歌ってたね。子供達のオーディションに完璧な伴奏をしてくれました。夫はホロヴィッツをライブで二度も聞きました。RSN先生は正直すぎてまわりじゅうに敵をつくるのです。二年たって合わなければ先生を変える勇気を持つことだよ。みんなでソウルに遊びに行きます。道子と町子が最後に挨拶。シーユーアゲイン。お店の前で握手して二人の後姿を見送る。



鍋煮ゆる音したりけり梅雨の宿

2008年05月23日 | Weblog
昨日ダメジンという映画を(途中まで)見たあと、自分達夫婦の行く末をつらつら考える。ダメジンは、どですかでんの現代版みたいな、浮浪者三人組を取り巻く人々の物語で、なーかなか面白い。続きが見たかったが、夫が眠くてどうしようもなくなり、また今度にして、ということになった。若い頃は映画を途中で見止めることなどアリえなかったが、子育てしてみると、「どんな素晴らしいことでも中断、突然終わりが来るものだ」ということを教わった。今は何でもアリだ。それよりも浮浪生活を見ていると、これもアリだな、と思ったことに驚いた。私は何でもして働ける。綿摘みとか、古トラックに家財道具を積んで流浪とか、呼び込み、工事現場の旗振り、何でもやれるが、別にやらんでもいいと思う。子供さえなけりゃダンボール乞食でもいい。あんな生活絶対イヤ、あんなみじめになりたくないワ、という危機感に決定的に欠けている。夫も同様に、というかさらに欠けてをり、だから金が溜まらないのだ、とガッテンした。
 
昨日学校に町子を迎えに行く途中に見たもの。
まずアパートから出ると、前の道路にバンが停まっていて、後ろのドアをがらりと開けたところに痩せたスーツ姿の黒人が座ってあくびしていた。肌の色は薄目、ヒスパニックか黒人かぎりぎりみたいな坊主頭、背は高く手足が長い。どことなく上品な雰囲気。私は歩き出しながら、はっとした。バラク・オバマ? オバマの顔だ。このバンは選挙カー。この街角で演説する。ぱぱぱっと考えて私は足を止めた。男はあくびを止めた。微妙に顔が違った。それから歩いてゆくと、巨大チワワがいた。白地に焦げ茶の水玉もようのチワワ。普通のチワワの五倍ある水玉チワワの耳がべろりと垂れ。気持ちわるう。チワワが振り向いた。それは刈りあげられたコッカスパニエルだった。夏だなあ。
 
本のベストテンが早くも入れ替わる。「怒りの葡萄」(スタインベック)はすごい。「充たされざる者」(カズオイシグロ)も面白い。二人の作家の順位はそのまま、題名を差し替えることにする。

日やとひの並ぶ軒先さみだるる

2008年05月22日 | Weblog

今朝、水木しげるの話題をTVジャパンのニュースでやっていた。画面に映っているネズミ男を見て、夫が唸った。頭を抱え、「ううう、ネズミ男……うぇ?」と言いつつ、目はうつろ。なんだと思ったら、「だめだ! 思い出せない、昨夜見た夢が……!」。

 元バレエメイトのYM子さんのブログに夫はコメントをした。しばらく未承認だったので夫は、きれいさっぱり忘れさられた、もともとえらく嫌われていた、とペシミスティックになりかけていたら、今日コメントが承認、お返事もいただく。いつものことながら、写真が素晴らしくきれくて美味しそう。南禅寺はお豆腐も美味しいよね。

時効警察でおなじみ三木聡監督のビデオあれこれ届く。心躍る瞬間とは、注文した本あれこれ届くとき。顔ゆるむ瞬間とは、注文したビデオあれこれ届くとき。
図鑑に載ってない虫
インザプ−ル
ダメジン
転々
私は、ふせえりさんが好き。顔も声も歌も好き。しっとりと上品なのがいい。「亀は意外と速く泳ぐ」で町内アナウンスをするふせさんが特にしっとり。上野樹里には及ばないが、かなりうまい役者さんだと注目している。ふせさんが素(といっても舞台挨拶)で喋るとき、私と同じくらい人間嫌いに見えて、益々好感がもてた。NY在住ママさんピアニストのSH子さんは、ふせえりさんにちょっと似ている。

白人洗濯婦が弟子を連れてくる。そして私にいつもの宣言(自分は毎週火木の朝に来て、次の予定が詰まっているので、できればあんたは火木の朝は洗濯遠慮して欲しい。それが無理なら、あんたの洗濯物を勝手に乾燥機に入れたり、勝手に放り出したりするよ)をするのだが、なぜかいつものトゲトゲシしさがまるでない。もしあんたが気にしなければだけど、などと丁寧言葉を使用、いつもの鋭いイーグルのような目ながら、口は思い切り横に広がって歯も見えてにこやか。感じのいい人だと、弟子に思われたいのであろうか。

(写真はリンデンの真似をして空き箱に入るメープル)

ピアノなき壁の白さや梅雨の宿

2008年05月22日 | Weblog
夫の見た夢。アンサンブルP&Mの仲間であるバイオリニストのシゲTが、コンクールに出ることになり、ピアノ伴奏を引き受けた。友達と公園で話しているうちに、つい二人とも寝込んでしまった。起きると辺りは真っ暗。しまった、と駆けつけるとコンクールはすでに終了。シゲTの伴奏は他の友人がした。といってもその友人はピアノは弾けず、クラでバイオリンの伴奏をしたという。そしてできはよくなかった。僕がシゲTにあやまると、彼女は「反省会は後で」とキリキリしている。「起きると真っ暗だったって言うけど、まだ少し明るいじゃない」と、わけのわからぬことで責められ、「いやほんとに公園は真っ暗だったんだよ」とわけのわからぬ言い訳をした。以上、聞き書き。 子供の伴奏を自分でやるか、という局面に一瞬陥ったことと、プーランクのクラリネット(*)にはまっているので、それが合体してこのような夢となったのであろう。しかしシゲTのご主人もクラリネット吹きなのに、ご主人でなくまた別のクラリネット吹きがクラでバイオリンの伴奏をしたというのは妙だ。
*プーランクのクラリネットソナタは彼の遺作なのだ。死後すぐに、バーンスタインのピアノ&ベニーグッドマンのクラでカーネギーHで演奏されたという。それは聞いてみたかったなあ。