ニューヨー句

1ニューヨーカーの1ニューヨーカーによる1ニューヨーカーのための1日1ニューヨー句

わが脚を見て歩きけり花の雲

2009年10月21日 | Weblog
四歳と二歳の道子と町子をつれてニューヨークに来たのが二〇〇〇年四月。来月、二人は十四歳と十二歳になる。十年間、子供たちのおかげで、かけがえのない思い出ができた。学校で出会った先生や友達も忘れがたい。あっという間に、家族それぞれの思い出を作ってゆく時がきた。十年後の道子と町子はどうしてるだろうか。二人にとって、いつかこのニューヨー句が、自分たちのこども時代を思い出すよすがとなれば幸いである。

おにぎりの角立てにけり今朝の秋

2009年08月27日 | Weblog
「落選」
今年の受賞は三十三歳の女性。去年は四十八歳の女性。だんだん、年々、夢が遠ざかってゆくのであろうか。しかし私としては、年々上達してきていると信じる。俳句を始めて十九年。私の犬が死んだ年は前厄にあたり、悪いことが重なってた。姉が見かねて俳句に誘ってくれた。初めての吟行句会で、大阪城で欧介に会った。犬が死んだとき、一緒に死のうと決めてたのが、欧介がたまたま電話して、(気楽な声で)吟行に行きませんか? と誘ってくれたので、ベランダから飛び降りるのを延期した。吟行が楽しくて、けっきょく死に損なった。まだまだ精進して、美しい句を産み続けたい。五十年後には、「第110回角川俳句賞はベルリン在住のMapleさん(100歳)に決まった」というニュースを見たいものだ。
 
「ベルリン」
なぜベルリンかというと、一つにはベルリンに住んでみたくなったから。そもそも昨夜TAKAさんと飲んで、いやもっとさかのぼってピアノのNOM先生が、「ベルリン芸大はいいですよ、国立だから学費ただだし」と道子にすすめてくだすった。TAKAさんも昨夜、「ドイツはほんとにいいですよ」と言ってくれた。道子がベルリンに受かったら、私も同じ町に住みたいなあ。ベルリン国立バレエも見れるしなあ。
TAKAさんと飲んで、映画の話とかして昨夜は楽しかった。アル・パチーノがジュリアードに講演にきたんですとか。大阪芸大はフランキー堺だったのよとか。ショパンのプレリュードは(ノシタシオンと同じく)ピアノのテクニックの粋を集めているとか。プレリュードが無性に聞きたい、生で今ぜんぶ。
 
「ベルリン2」
なぜベルリンか。二つ目の理由は、バレ友のYm子さんから贈られたカードが素晴らしかったから。画家はベルリンのミヒャエル・ゾーヴァ。「ヌレエフの犬」という本の挿絵だそう。さっそく日本語訳をアマゾンで購入する。私の好きなケストナーもドレスデンで生まれ、ベルリンで詩人をやってた。名作”二人のロッテ”はミュンヘンとベルリンが舞台。どっちも行ってみたい。
私はファッションにはうといが、Ym子さんのブログ「ハミングバード」は毎日かかさず見る。なぜか。普通のおしゃれブログと彼女のブログは根本的に違う。ファッションも、料理も、アートも、美を追求している。人生を豊かにしたいと、軽やかに、そしてまじめに取り組んでいる。私のブログとは題材は違っても憧れるものは同じだと感ずるから、励まされる。普通のブログなどは、「私って美味しいものも、素敵な服も、知的なイベントも知ってるのよ」という自慢止まりなので、見る気が起きない。偶然、彼女の最新の記事に、「ベルリン」という言葉を発見して嬉しくなった。
 
 

青年の掌厚き踊かな

2009年08月26日 | Weblog
「バレエABC」
若いカラテ先生と一緒に踊る。コーナーから手と手をつないでワルツステップ。手が大きいとは思っていたが、てのひらが硬くてぶ厚い。ぶ厚くて冷たい。端から端まで二人で軽やかに踊り、次の女性にチェンジする。彼はまじめにバレエを基礎から習っている。なぜバレエ、とは思うが、踊るのがきっと好きなんであろう。運動家だから姿勢もバランスもいい。ターンもぶれない。水色のタイツが似合いそうな甘いフェイスである。
mm先生が日本から預かってきてくださったお土産に感涙。元バレエメイトのym子・ハミングバードさんが、猫マグネット&バレエ絵葉書をくだすった。うちのどの猫とも違う柄なんで、新しい猫が来たようなハッピーフィーリング。先日すでに猫病院で、「新しい子猫が保護されたらご一報ください」とHRミさんにお願いしてきた。子猫の穴は子猫でふさがにゃーだちかんで。
元バレエメイトmyuさんもお悔やみ&mm先生のジャパンレッスンの記念写真を送ってくださった。見ましたよ、日本のみなさん!

「極上ピアニシモ」
ピカソ好き。ガウディ好き。TAKA・Kのピアノ好き。ダウンタウンのクールなバーで、TAKAさんのリサタルを聞く。チケット売場に行列。立ち見も出て大盛況。一曲目ブーレーズですでにトリップしそうになる。日系人会の演奏はこれの宣伝だったんやね。正直あのときなんかもの足りなかったんでまた聞きに来てみたら、あんのじょうものすごい。このバッハ。こんなクールでホットでしかも精緻なバッハ聞いたことない。こんな風に弾く人はいない。新しくてしかもうまい。計算し尽くされた音楽を爆発的に演奏する。ミスターローゼンと同じ。宇宙ステーションで働くかたがたにぜひこのCDを一枚持っていってもらうといいな、と瞬時思った。あそこで青い地球を見ながら聞いたら最高だろう。すべてを一度に感じる快感。マンドラゴラは前回もよかったが、今回は格段のできつうか、まったく別の曲じゃん。どうやったらあんな繊細で天国的な音が出せるのよ。特にピアニシモ。魂のピアニシモ。TAKAさんのピア二シモは松坂牛か日本のケーキか日本のパスタ。そんくらいTAKAさんにうっとりさせられた。欧介が「ホロヴィッツよりいいんだこれが」と言った音の片鱗が私にも理解できて嬉しい夜。

赤とんぼピアノの音に来りけり

2009年08月25日 | Weblog
「ピアノ効果」
NOM先生に欧介、道子、町子の三人がピアノを習うことになった。昨夜新居でプリレッスン。それぞれの腕前を見極め、選曲していただく。欧介は、「殻を破れてないのでは?」とNOM先生に言われ、「まだ破れていない殻があった」と感慨しきり。道子はピースにベートーベン、町子はシューベルトをいただく。その後みなで肉食。ワイン二本。信じられないことだが、今朝八時から起きて、子供二人が、かわりばんこにピアノを弾いてる。夏休みが終わったなあ。
 
「NOM先生語録」
ピアノの鍵盤にはツボがあるんです。それを探して押さえてやるとよく鳴るんです。

道子と二人で初めて生ヨーヨー・マを見る。上手ボックス席。最初のベートーベンでチェロの音を聞く。いつもRSN先生の計算し尽くされたチェロを聞いているので物足りない。これなら、今年の春に聞いたTM君のロココのほうがまだ真摯であった。道子いわく、「オブビアスなんだよ」。魂がそこにない。三善アクセントを山ほどつけてやりたい。踊りもいまいち。しかし二曲目アイブスのエンパイアガーデンでトリオになると何も気にならなくなる。衣装、照明、演出、踊り、どれをとっても予想以上の美しさである。ときおり、ピアノがうまいなあとか、チェロの深い音がしているなあ、などと感じつつ、物語に引き込まれる。特にリーダーの男性と、日本人の女性、金髪の小さな女性ダンサーは表現力が素晴らしい。役者としても一流である。最後のシューマンは傑作だと思う。最初のハグから泣ける。特に三楽章の、とかげ歩き最高。あのよさがバレエ少女にもわかるかなあ。
  
「ジャパンストリートフェア」
欧介と二人でHMTシャツ着て、屋台祭りに出るHMバレエを応援に行く。欧介は正確に混雑を予想していたが、私には想像を絶する人出で、屋台には近寄れぬ。帰国後のお疲れもなさそうなMM先生と、KOLさんの浴衣姿と、子供ダンサーたちをテントの裏からのぞいて帰る。
 

引越の済みたる窓に蜻蛉くる 

2009年08月23日 | Weblog
引越しが無事すむ。何が無事といって、猫たちが新居におさまってくれただけでめでたい。といっても、まだメープルはソファの裏にかくれて、缶フードをあげても食べない。夜中にそろそろ出てきて新しい猫トイレを使った。リンデンは最初から、口が開きっぱなし。アパート中匂いをかいでチェックして回り、犬のようにハアハアしてる。こんな顔みたことないね。と言ってたら、道子がこんなことを言う。おもちゃの羽根で一時間ほど遊んでやったら、必ずこの顔になるよ。そうなのか。では興奮しているのか。三人で手分けしてダンボールを開けてゆき、夕方には布団で寝れる見通しがつく。残りの箱は、本棚が届いたら消える予定である。子供たちにとっては初めてのマイルーム。リンデンみたいに口開けてハアハアとまではいかないが、だいぶ嬉しそうである。道子は赤いラグに赤いカーテン、町子は茶色と黒のラグに白いカーテン(葉っぱの刺繍入り)を選ぶ。町子はせっせと働き、あっという間にコージーな巣を作り上げる。丸々太った蟻のようだ。道子はキリギリス。(文字通り)指をくわえて見ているだけ、何も片づかない。「よう町子、私の部屋もふき掃除してよ」などと言う。結局最後に、三人に助けてもらって形になる。しかし洋服ダンスに洋服を詰めるのは自力でやった。今までは、「わたしは掃除が得意でないから」「今足が痛いから」「手を怪我するから」などといって家事一切をしたことがなかったので進歩といえよう。秋から高校生。冬には十四歳。ヨーロッパの大学に行くまで四年。チェロのほうは心配ないが、一人暮らしができるようになるであろうか。
子供たちがドアを閉めて閉じこもると静かである。ときおり二十四階の窓にトンボが、こつんとぶつかる。ハドソン川からくる夕焼けが向かいのビルディングに反射してものすごい。夕焼けの中に宵の明星が見える。
一夜明けて、川霧や雲を見ながら朝ごはんを食べる。窓から空が見えるのはやはり気分がよいものだ。前のアパートはドアなしの上下階だったので、喧嘩の嫌な英語などが筒抜けに聞こえた。一度に一人しか練習できなんだ。ところがこちらでは、今欧介がリビングで渾身のバッハを弾いてる。隣で町子がハイドン・ディベルティメントをチェロで歌ってる。その向こうの部屋で道子がピアッティのエチュードをリズミカルにさらってる。まるで音大の寮だが、それでも全然うるさくない。私はキッチンのマイスペースでこれを書いている。猫たちも少しずつ落ち着いて、明日は写真ものせられると思う。

道路打つ音にそよぎし蜘蛛の糸

2009年08月20日 | Weblog
朝、「葬送のウムイ」の歌詞を初めて読む。沖縄弁は耳に心地よいが意味はわからない。意訳を耳で聞いてもぴんとこない。初めて詩を読んで見て驚いた。涙が出た。ウムイとは「想い」のこと。この場合は「神の唄」という意味だそうである。私の育った村の盆踊もこれに近い。その盆唄はある家族の男しか歌わないし、盆以外のときに子供がふざけて歌うことができるような雰囲気の唄ではなかった。(だから筒井康隆先生の熊の木本線などはまったくリアルに感じていた。)このめでたさを、若い信長先生がよく理解されて曲をかかれたと感心する。立派な仕事である。歌詞の元の沖縄伝承詩と意訳を見つけたのでコピーする。TEAにも歌ってやりたいなあ。

むむとぅしゆいがヨー うちんかてぃいめんヨー
うとぅいむちみそりヨー 阿弥陀仏ヨー ヨーオンナー

なまたべるうさきヨー ただやあやびらんヨー
たまくがにうやぬヨー あぬゆみとぅちヨー ヨーオンナー

たまくがねおややヨー いち見んちん見んぶさヨー
たばくふくえだやヨー 見んしてぃたぼりヨー ヨーオンナー

(意訳)
百歳のお年寄りがそちらへ向かっています。お取りもちください。阿弥陀仏。
今供えたお酒はただのお酒ではありません。大事な親があの世に持っていくお酒です。
大事な親はいつまでも見ていたいものです。煙草を吹く間だけでももう少し見せてください。

(TEAへのウムイ)
一歳の子猫がそちらへ向かっています。お取りもちください。阿弥陀仏。
今供えたミルクはただのミルクではありません。大事な猫があの世に持っていくミルクです。
大事な猫はいつまでも見ていたいものです。煙草を吹く間だけでももう少し見せてください。

生身魂つまづきかけてあやまりぬ

2009年08月19日 | Weblog
火曜バレエABC。
YK先生に、トンベパドブレ、グリッサード、ジャンプを教えていただく。それからピケターン。どれも形だけ、やってるだけ。それではつまらない。基本を完璧にして次へ進みたいと思う。まじめにジャンプしたので、足がよれよれになり、帰りの地下鉄の階段でつまづいて膝を打った。その瞬間、体がふわりと持ち上がった。誰かが脇を持って、支えてくれた。おかげでひどくこけずにすんだ。どうせメキシカンのおっちゃんやろ、と思って振り向いたら、超美形の黒人青年であった。体が逆三角形で、ぴちぴちのシルクの青いシャツを着て、パンツもぴちぴちの黒。まちがいなくダンサーだ。私がうっとりしてお礼を言うと、彼は怒ったように首を振って、「レッスン後は足をマッサージしないと怪我しますよ」みたいなことを早口に言って去った。私の体に触れ、私もダンサーであると直感したのであろうか。どきどき。と思ったがすぐに、私がMM・HRYM・BALLTというピンクのロゴ入りのTシャツを着てバレエシューズをぶら下げてたからだ、ということに気づいた。息子といってもいい年だ。いい匂いがした。

*俳句豆知識
生身魂(いきみたま)とは、お盆の季語。まだ生きている親にお供え物をしたりして長寿を祈願するとき、親のことを生身魂と呼ぶ。


転居して盆提灯をともしけり

2009年08月16日 | Weblog

「寄せ書き」
猫病院からカードをもらう。ドクター&HRミさんはじめ、全員の寄せ書きで、TEAの思い出を書いてくださった。TEAの母親が、TEAたちを産んで三日目に保護されて家族で病院に来た。なかでもTEAは愛らしく、もらわれるまで注目の的であった。みんな悲しんでます、と言ってくださった。四月に日本に帰ったとき、一週間もTEAたちを預けた。みなさんにかわりばんこに、かわいがっていただいた。そういえばお盆なのだ。TEAの霊は引越し先がわかるだろか。

「町子の慰め」
あのね、きみ歌えよの「誰かがいつか耳澄ます」の歌詞だけどね。最初まーは、「みみすます」じゃなくて、「クリスマス」だと思ってたんだよ。でね。本当にこの歌詞がクリスマスだったらよかった、と思ったのね。それならこの曲でプラハに行けたでしょう?

わずかなる風にそよぎし蜘蛛の糸

2009年08月15日 | Weblog
「熱中症」
荷造りの合間に買物へ出ると、アパート前の通りの、横断歩道の真ん中に、短パンの老人が仰向けに寝ている。まわりに人だかりができ、鞄で日陰を作ったり、水を飲ませたりしている。アパートの管理人ホゼーが、腰に手を当ててスポーツドリンクを飲みながら、「ヒートストロークだよ」と私に言う。「それだけじゃない。今日はここでいろいろあった」と、得意そうな顔である。十一時頃、ホゼーの目の前で正面衝突が起ったらしい。それにジョガーがいたるところで熱中症で倒れたりしゃがんだりしてたらしい。「テイクケア」とホゼーに見送られ、DVの店へバイオリンの弦を買いに行く。「一本二ドルなのよ、二本買っとけば?」とDANに得意顔で言われ、驚いて二本買う。チェロの弦は一本二十ドルから八十ドル。十倍から四十倍する。財布を忘れたことに気づいたが、洗濯用のコインがあった。五十セント足りないんで一本でいいと言ったら、DANが「お客さんの駐車用コインがいるから、あるだけ置いてって」と結局E線を二本出してくる。
いったん帰り、財布を取ってからFウェイへ回る。今夜は欧介が男声パー練へ行くんで、夕飯は軽くでいいからスォードフィッシュ一品に、茶そばを買う。子供にはサーロインバーガーを焼く。先々週はTEAと一緒に食べたのだ。TEAが家にいる間、私はリンデンやメープルを構わなかった。道子や町子と同じくらいほっといた。TEAを追い回したりすると、うとましく感じることもあった。最近また私が可愛がりだしたので、二猫とも得意そうである。Fウェイの帰り、太った女浮浪者が飲食店の正面に足を投げ出して座り込んで介抱されている。分厚い足の裏が、墨を塗ったように真っ黒で、相撲力士が手形を取ることを連想させた。レストランの中に客がいれば、それを見ながら食べなきゃいけないところだけど、誰も窓際に座ってなかった。

星飛ぶや女十八人の部屋

2009年08月15日 | Weblog

「荷造り」
黙々とダンボール箱を作り、くだらない荷を箱に詰める。全部捨ててしまいたいが、また買うのもくだらないので我慢して詰める。詰めた箱の置き場がない。家中がダンボールの迷路。リンデンのワンダーランド。

「合宿のようなパー錬−ソプラノ・メゾ編」
私と町子と、午後から紀伊国屋へ行き、別冊コロコロ、のだめ#22などを買い、団長HRMさんの高級アパートへ歩いて行く。町子とAYちゃんが同じクラスだった幼稚園の近所で、途中、歩道の真ん中に置いてあるベンチなど見る。
幼稚園の初日、町子は私と別れて泣いて吐いた。吐いたあとはけろりと遊んだ。二日目も泣いて吐いてからけろり遊び、三日目から朝泣かずにバイバイした。
HRMさんのアパートにて、AY先生のボイストレーニングをまず受ける。ゴムイボ踏み、マジックボールなど秘密兵器が次々出る。私はかかとにこれを置いて歌う。町子は足指にボールを置かれた。NOMさんは股に挟んで歌ったという。AY先生はアイドルみたいにかわゆく小柄なのに声がすごい。流星のように声が輝いて飛ぶ。真似たいが、とてもできない。
全員そろって、NOMさんのピアノで、さくら、旅愁を歌う。OREさんと町子二人の強力アルト。AY先生の指導はここでも細やか、顔の開き方、言葉のニュアンス、音程の感じ方、など、非常に勉強になり、かつ面白い。
休憩もほとんどなく、みっちり練習後、新人歓迎パーティー。ガーデンサラダ、タイ飯、おにぎり、サンドイッチ、ビール、ワイン、ジャスミンティーソーダなど。欧介みたいに乾杯をやたら急ぐ人あり。町子が最初に料理に箸をつけた。好物の唐揚を食べ、すっかり団に溶け込んで友達づきあいしてる。TGWさんも好きだよ、YMGさんはみんなのために片づけをしていい人だね、TRYさんは面白いね、などと言う。ワイングラスを持ったOREお姉様から、”旅愁”の意味を教わる。こういうのが最高の環境だと思う。神童や神童もどきのひしめくプリカレッジで、子供ばかりとつきあってるより、色々な大人と話したり、一緒に歌ったりするほうが、どんだけ楽しく人生が豊かになるか、とつくづく思った。とっぷり暮れた窓にクライスラービルが銀色に光ってた。

欧介も参加できればよかったが、仕事が忙しかった。棒茄子が口座に振り込まれた。振り込まれるまで油断ならなかった。私が思った額より多かったので、聞いて緊張した。ぱーっと使ってはならぬ。分不相応そうなアパートに引っ越すので、月々家賃が赤字になってゆくであろうことは目に見えているから。電話をきってから、ポール・ドゥ・ブラした。

*バレエ豆知識 ポール・ドゥ・ブラ:腕の運び。バランシンの弦楽セレナーデ(チャイコフスキー)冒頭では、全員そろってポール・ドゥ・ブラする。