令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・青春編(一)(12)塞(せき)も置かましを

2010年07月23日 | 家持・青春編(一)恋の遍歴
【掲載日:平成22年7月9日】

でて行く 道知らませば あらかじめ
                妹をとどめむ せきも置かましを



何事もなく  過ぎていく日々
穏やかな 時間ときが 流れている
〈恋とは  気疲れの伴うものよ〉
〈家がいい〉 
落ち着きを取り戻した  家持の家

それも つかの間
天平十一年〈739〉夏六月 
家持を  悲劇が襲う
妻 おみなめの死
幼馴染おさななじみ 大伴書持ふみもちも駆け付ける

今よりは 秋風寒く 吹きなむを いかにかひとり 長き夜を宿
《これからは  秋の風吹き 寒いのに 長い夜ひとり 寝るのん寂し》
                         ―大伴家持―〈巻三・四六二〉 

長きを ひとりやむと 君が言へば 過ぎにし人の 思ほゆらくに
《長い夜を 独りで寝るて 聞いたとき うなった人 思い出したで》
                         ―大伴書持おおとものふみもち―〈巻三・四六三〉

秋さらば 見つつしのへと 妹が植ゑし 屋前やど石竹なでしこ 咲きにけるかも
撫子なでしこの 花咲いとおる 秋来たら 見て楽しもと お前の植えた》
                         ―大伴家持―〈巻三・四六四〉 
うつせみの 世は常なしと 知るものを 秋風寒み しのひつるかも
《世の中は  無常なもんと 知ってるが 秋風吹くと 思い出すなぁ》
                         ―大伴家持―〈巻三・四六五〉 

我が屋前やどに 花ぞ咲きたる そを見れど こころも行かず しきやし 妹がありせば 
水鴨みかもなす 二人ふたり並びゐ 手折たをりても 見せましものを

《庭で咲く 花を見たかて 面白おもろない もしもお前が ったなら 並んで花を 手折たおるのに》
うつせみの れる身なれば 露霜つゆしもの ぬるがごとく
あしひきの 山道やまぢをさして 入日いりひなす かくりにしかば

《人の定めや 仕様しょうなしに 露霜みたい はかのうに 帰らん旅へ 出て仕舞しもて 日ィ沈むに 死んでもた》
そこ思ふに 胸こそ痛き 言ひもず 名づけも知らず あともなき 世間よのなかにあれば むすべもなし
《思い出すたび 胸痛い 嘆く言葉も 見当たらん 消えてく定め どもならん》
                         ―大伴家持―〈巻三・四六六〉 

時はしも 何時いつもあらむを こころ痛く にし吾妹わぎもか 若子みどりごを置きて
《人いつか 死ぬけどなんで 今やねん わし悲しませ 幼子おさなご残し》
                         ―大伴家持―〈巻三・四六七〉 

でて行く 道知らませば あらかじめ 妹をとどめむ せきも置かましを
《もしわしが あの世行く道 知ってたら お前の行く手 ふさいだったに》
                         ―大伴家持―〈巻三・四六八〉 
妹が見し やどに花咲き 時はぬ 我が泣く涙 いまだなくに
《時過ぎて  お前の庭に 花咲いた わしの涙は まだ乾けへん》
                         ―大伴家持―〈巻三・四六九〉 


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