令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家持・青春編(一)(2)若月(みかづき)見れば

2010年08月27日 | 家持・青春編(一)恋の遍歴
【掲載日:平成22年6月1日】

ふりけて 若月みかづき見れば 一目見し
             人の眉引まよひき 思ほゆるかも



大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめは 不機嫌であった
〈大伴本家たる  佐保邸
 後取りは しかるべき身分の嫁が順当
 しかるに  身分釣り合わぬ娘などと・・・
 わが 娘坂上大嬢おおいらつめこそ 似合い〉

従兄いとこ 家持を 
実兄あにとも慕う 年端行かぬ大嬢おおいらつめ
それと察する 坂上郎女いらつめからの歌が届く

月立ちて ただ三日月の 眉根まよねき 長く恋ひし 君に逢へるかも
《三日月の ようなまゆを いたんで こいがれてた あんたに逢えた》
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―〈巻六・九九三〉

〈あの 少女こどもにしては 出来すぎ
 ははぁ 叔母おばさまの代歌かわりうたじゃ これは〉
坂上郎女いらつめの真意 知ってか知らずか
家持 かまい気分で筆を執る

ふりけて 若月みかづき見れば 一目見し 人の眉引まよひき 思ほゆるかも
《振りあおぎ 三日月見たら 一目見た おまえのまゆを 思い出したで》
                         ―大伴家持―〈巻六・九九四〉 

我が屋外やどに きし瞿麦なでしこ いつしかも 花に咲きなむ なそへつつ見む
《庭植えた 撫子なでしこ咲くん 楽しみや 女らしなる お前おんなじ》
                         ―大伴家持―〈巻八・一四四八〉 

石竹なでしこの その花にもが 朝な朝な 手に取り持ちて 恋ひぬ日けむ
《撫子の お前花やと えのにな 毎朝手にし いつくしめるに》
                         ―大伴家持―〈巻三・四〇八〉 

思いもよらぬ  返し歌
坂上郎女いらつめ 大嬢おおいらつめを駆り立て
手取り足とり 歌みさせる

生きてあらば 見まくも知らず 何しかも 死なむよ妹と いめに見えつる
《生きてたら 逢えるんやのに なんでまた 夢に出てきて 死のやてうの》
                         ―大伴坂上大嬢―〈巻四・五八一〉 
大夫ますらをも かく恋ひけるを 弱女たわやめの 恋ふるこころに たぐひあらめやも
《男でも 夢に見るほど 恋苦くるう おんな恋苦くるしん 当たり前やん》
                         ―大伴坂上大嬢―〈巻四・五八二〉 
つき草の 移ろひやすく 思へかも 我が思ふ人の ことも告げ
《移りな 露草の児や 思うんか 逢いたいあんた 何もん》
                         ―大伴坂上大嬢―〈巻四・五八三〉 
春日山かすがやま 朝立つ雲の ゐぬ日無く 見まくの欲しき 君にもあるかも
《春日山 朝雲いつも かかってる うち、、もいっつも あんた思てる》
                         ―大伴坂上大嬢―〈巻四・五八四〉 

〈これは たまらん 母子おやこしての 相聞攻勢か〉
家持 思わずの苦笑にがわら


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