令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

坂上郎女編(17)枕と我れは

2010年03月26日 | 坂上郎女編
【掲載日:平成22年5月18日】

玉主たまもりに 玉はさづけて かつがつも
             枕と我れは  いざ二人寝む



大嬢おおいらつめは 家持妻問い重ねの後 とついで行った
佐保大納言邸の  跡取り嫁として 同居の所帯だ

よわい 十八の花嫁
甘やかされての育ちか  実家が恋しい
今日も今日とて 坂上郎女いらつめは 追い返しに 心をくだ

〈居て欲しいは  やまやまなれど・・・〉
ひさかたの あま露霜つゆじも 置きにけり 家なる人も 待ち恋ひぬらむ
《もう帰り  露や霜かて 置くよって 家で待つ人 心配しとる》

玉主たまもりに 玉はさづけて かつがつも 枕と我れは いざ二人寝む
《ご主人に  お前返して もうわたし 枕と一緒に 寝さしてもらう》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六五一~二〉 

〈そう言えば  
 昔 所有田地でんち差配さはいで 跡見庄とみのしょうへ出向いた折 
 あの子  家で泣き暮れていたことがあった〉
常世とこよにと 我が行かなくに 小金門をかなとに もの悲しらに 思へりし わが児の刀自とじを 
ぬばたまの 夜昼よるひるといはず 思ふにし 我が身はせぬ なげくにし 袖さへ濡れぬ
かくばかり もとなし恋ひば 古郷ふるさとに この月ごろも 有りかつましじ

《帰らへん 旅でもないに もんに立ち 別れ悲しむ 我が娘
 夜るだけちごて 昼間でも 思い出したら 身は痩せる 嘆く涙は 袖濡らす
 こんな心に かるなら この故郷さとひとり 幾月も じっと出けへん 心配で》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・七二三〉 
朝髪の 思ひ乱れて かくばかり 汝姉なねが恋ふれぞ いめに見えける
《髪乱し 寝られんほどに うちのこと 恋しがるから 夢見るやんか》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・七二四〉 

〈帰したら 帰したで こっちが 寂しくなる 母娘おやこなんやなぁ〉
うち渡す 竹田の原に 鳴くたづの ときし 我が恋ふらくは
《鳴くつるは 引っ切り無しや それみたい あんた思うん 絶え間あれへん》
早河はやかはの 瀬にる鳥の よしを無み おもひてありし 我が児はもあはれ
《瀬早よて 羽根休めどこ ない鳥か あんた心配 気ぃ休まらん》 
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・七六〇~一〉 




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