井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

テレビのきれいごと

2017年12月09日 | 日記

昨日テレビで、旧知の方、一度お会いした方・・・と立て続けにテレビの画面を
通じて、再会しました。

一度きり、お会いしたのが瀬戸内寂聴さんでまだ寂庵を開かれてからさほど
年数を経てない頃・・・・女優の渡辺美佐子さんに伴われ寂庵を
訪れたのでした。

樹木もまだ、今ほど整い茂ってはいずそれでも佇まいがファッショナブルで
庵というイメージからは遠く、アンアンやノンノのグラビアのような
庭園でした。

気さくな方でしたが、仏教の教学上のことである質問(内容失念)をしたら
黙ったきり、答えてくださいません。
聞こえなかったのか、と質問を繰り返しても茫洋とした表情のまま
だんまり。

ああ、知らないことを知らないとおっしゃりたくないタイプの方なのだ・・・・
と、それが印象に残っています。(悪口ではないのです。自分を棚に上げ
単に印象的であった事実として記しています。その時寂聴さんも
まだ60歳ぐらいであったと思います。今なら率直に、知らないわと
お答えになるような気も致します)

孫やひ孫をさして可愛いと思わず、よそに可愛い子がいれば、あらこっちのほうが
可愛いわ、と思う、と答えられあっけらかんと正直な人です。
聞き役で訪れた真矢ミキさんが、急いで「でも、嬉しそうににこにこしていらっしゃる(お孫さんの
話をする時は)」と、いかにもテレビ的な偽善フォローをしていましたが・・・
これも真矢さんへの悪口ではありません。
いかにも、テレビ的対処の仕方、まとめ方なのですから。私は好きではありませんが。

世の中には孫を可愛いと思わない祖母もいます。瀬戸内さんはまだ乳飲み子の娘さんを
置きざりに、他の男の元へ走った人。

母性の欠如はそういう生まれつきなので、その人のせいではありません。
私はそこを責めようとも批判しようとも思わず(遺棄という行為を是認はしませんが)、ただ世の中の
「親は子を愛するもの、子は親を慕うもの、孫は可愛いもの」という決めつけと
押し付けの欺瞞が嫌いなのです。

事実は事実として直視したい。

だから、無条件に我が子、我が孫が愛しく、親が好きならそれは「幸運」というものであり、
当たり前ではないのです。

世の中には、我が子が嫌いで邪魔で、どれほど親を憎んでいるか、そういう
人たちも多いのです。テレビは、最大公約数的幸せの枠で人を語り、その
欺瞞を私は好きではなく、だからコメンテーターとしてわりに画面に出ている時、
時に、コメントに苦慮しました。
私が不思議でならないのは、番組で誰かを好意的に取り上げると、出演者全員が
好意的ににこにことしていて、私など嫌いな人間にそういうことは難しいので
口ではさすがに嫌いとは言いませんが、ひきつっていたわけです。

瀬戸内さんは、安保法制案に反対なさり国会前でアジ演説すらなさっていました。
戦争に良い戦争はない、どの戦争も悪い、と。
それはその通りなのですが、仕掛けられる戦争だってあるわけです。
軍靴の足音が聞こえるというのですが、しかしそれは中国や北朝鮮のそれではありませんか?
有事のその時、丸腰でいていいのかどうかという意見も一方にあるわけですが、テレビは
そのアジ演説の部分を流しっぱなしで、コメンテーターで誰一人そこに
触れる人はいないので、結局その部分だけ政治的刷り込みになりかねないのですね。
「戦争はやってはいけない、悪しきものだ」というコンセプト自体は間違っては
いないので、それが即日本は憲法を改正してはならない、という文脈に
すり替えられてしまいます。
番組の作りても真矢さんや国分くんら司会者も出演者も、そこまで意識しているか
どうか知りませんが、テレビの功罪の罪のほうでしょう。

それと、ひっかかったのは寂聴さんの言葉「あの世があるかどうか、怪しくなってきた」と。
本当に率直な人だとは思うのですが、私などは仰天します。あの世の存在を知らぬまま、
神仏を説いていらしたのか、と。
この世ではないもう一つ別の世界を、何らかの形で体感している人以外、神仏は
語れないと思います。
そういう意味では、世の中にどれほど本物の宗教家がいるでしょうか。
あの世を視ず聴かずの人が、何かを語るにしてもそれは道徳談話、この世を生き抜くための
説話ではあり得ても、宗教家の言葉ではありません。
墨染の衣も、金襴の袈裟も十字架も、ファッションでしかないでしょう。

有名神社の愛憎に依る殺傷事件も、ふと想起します。

もう一人、旧知で画面を通しての再会は鳩山幸さんでした。
当時、世田谷は野沢にあった拙宅に遊びにいらしたこともあった程度には
お付き合いがあったのですが、それはファーストレディになる
前のことです。

色々と愉快で、またけったいなお方ではありました。
民主党が政権を取るのとほぼ同時に、お付き合いも絶えましたが、いまだに
このご夫婦は「宇宙人」を名乗ってらして、宇宙から見れば国境はないなどと
おっしゃっているようですが、だったらご自分の邸宅もわが敷地となさらず、
貧しい人々に開放なさい、と言いたくなります。

乱暴な言い方ですが、国境も敷地と同じことですよ。侵入者がいれば撃退しなければ
乗っ取られ、追い出されてしまいます。追い出されるだけならまだしも、そこに
強姦や拷問、殺戮が伴います。

「変わらないなあ」と思いながら、ご夫婦の姿をテレビでしばらく、見ていました。

 



7 コメント

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きれいごとが国を滅ぼす (くるみのばぁば)
2017-12-09 10:30:31
井沢先生
今日の記事も、読んですっきりしました。

日頃感じていることを、
先生がスパッと書いてくださるので、
喉元のつかえが取れるのです。

今の日本はきれいごとで自縄自縛に陥り、
国体の弱体化へと緩やかな坂を
滑り落ちているように感じます。

きれいごとは、殆ど短く言えます。
戦争反対、原発反対、弱者に優しく…等々。
正しいけど、時にそれではいけないと抗弁するには、
具体的な説明が必要で、時間も要し、
そうなるともはや誰も聞きません。

選挙の演説と同じ。
きれいごとはシンプルで簡単に連呼しやすい。
テレビもきれいごとを時間内に収め、
繰り返し流すので、知らずそれが自分の考えと
思う方も多いでしょう。

日本の行く末を思うと、
本当にもう手遅れではないかと
胸塞ぐ思いになりますが、
先生のブログを読んでいつも心強く感じ、
有り難いことと思っています。
欺瞞と二枚舌 (チッチョ)
2017-12-09 13:38:00
番組を見ていないので驚きました。孫やひ孫と会われるのですね。
娘さんが結婚されるときにお祝い(嫁入り道具だったか)を贈ったら「私には母はおりません」と送り返されたと当時読んだ記憶があります。
恩讐の彼方に許されたのでしょうかねぇ。自分も子供を持ったら尚更許せない気持ちになると思うのですが。

こんな生臭坊主の説教を有り難がる輩がいることにも呆れます。そのような半生を知らないのか、知っていてもなんとも思わないのか、マスゴミが担ぎ上げるから疑わないのか。

出家なさったときは「尼さんの格好がしたかっただけだろうな」と漠然と思いました。今でいうコスプレですねw
当時、女子大で同級だったという友人のお母様が「あんな人が出家するなんて、そんなことが許されるなんて・・・」と嘆いてらしたことが強く記憶に残っています。その後「あれで出家と言えるの?剃髪しただけじゃないの」と怒っておられました・・いや、あれは剃髪じゃなくてスキンヘッドだよね。だから単なるコスプレw
お返事 (井沢満)
2017-12-09 14:44:11
くるみのばぁばさん

>今の日本はきれいごとで自縄自縛に陥り、
国体の弱体化へと緩やかな坂を
滑り落ちているように感じます。


加速度がついているように、思います。



チッチョさん


>孫やひ孫と会われるのですね。


よく、来るなぁ、と私も反射的に思いましたが・・・・

まあ、財産が多いからなぁ、と脚本家的裏読み、ないしはゲスの勘ぐりもしました。
それを感じるから寄って来られても、孫も可愛いとは思えないのではないのかな、とも。


>「あれで出家と言えるの?剃髪しただけじゃないの」


道を求めての出家ではなく、尋常ならざる愛欲の果の、その重荷に耐えかねての遁走ではなかったかと、私は思っています。

瀬戸内寂聴さんに思う (総太郎)
2017-12-09 15:39:28
先生、皆様方、こんにちは。

井沢先生の体験も伺うと、瀬戸内寂聴さんには色々と考えさせられますね・・。

小生、直接お目にかかった事はございませんが、気さくな暖かいお人柄だと周囲から伺う事が多く、政治的なお考えは別として、個人的に反感は全くありませんが、チッチョ様が仰る通り、ある程度の世代の方々は御指摘の事情から嫌悪感を持つ方々が確かにいらっしゃいますね・・(~_~;)

(鳩山御夫妻にお目にかかった際の印象は以前、御報告しましたので割愛しますが、殊更悪印象はなく(^_^;))

今回のテレビ出演は拝見しておりませんが、
思い出したのは
以前、久米宏さんの番組に御出演された際の様子。

毎日放送製作・TBS 系列全国ネット
「久米宏のテレビってヤツは!?」
(2008年10月~2009年3月放送)
で寂聴さんの半生を探る特集回・ゲスト出演された事があり、スタジオでは視聴者の方々からの寂聴さんへの手紙・人生相談も取り上げられ・・。

確か、出産間もないある女性視聴者から「生まれて間もない自分の子供が可愛く思えず悩んでいます」旨、子育てに関するお悩み。

寂聴さんは「自分の産んだ子供さんを可愛く思えないのは悲しい事・・」と納得しかねる御様子で、確か最終的には、「お医者様のカウンセリングを受けるなり、周囲の信頼出来る親族の方々に御相談なされば・・」旨、だったと記憶しているのですが、今回の寂聴さんの御言葉を額面通り受けとめれば、かなり隔たりも感じますね・・。(当時、録画した筈ですが再見はしておらず、小生の記憶違いがあればお許しを)

10年近く経ち、実際に自身のお孫さんを目の当たりにして、可愛く感じない現実・心境の変化があったのかも知れず、現在ならご回答の内容も違うのかも知れませんが・・。

昭和の時代から美輪明宏さんや有識者の方々との対談でも、一貫してスピリチュアル的な存在を信じるとも仰っていた筈なのですが・・(~_~;)

寂聴さんは、かつて昭和40~50年代に
NET (現テレビ朝日)「奈良和モーニングショー」
の御意見番・コメンテーターをされていましたが、当時の出演・発言状況を調べると、現在以上に現実的な印象も・・。

「大久保清事件」、「連合赤軍事件」等にも辛辣な言葉で発言し、人間の残酷さや闇も指摘され、人間性善説を否定するような現実主義の印象。
(当時の寂聴さんはかなり凶悪犯罪の研究・考察をされていた様子)

出家されてから、聖人君子的な振る舞いを意識されたのかどうかは分かりませんが、
(因みに昭和48年当時、出家・剃髪の様子も、プロデューサーの説得で、奈良和モーニングショーが独占放送)

昭和50年代以降、
連合赤軍の永田洋子死刑囚の弁護側証人に立たれ、
「永田さんは本当は心の美しい人で、社会を良くしたいと思い行き過ぎた・・」
旨の発言には
正直、違和感と抵抗を感じましたね・・(~_~;)

失礼ながら、近年の寂聴さんは人間性善説やイデオロギーに基づいて、発言なさる傾向が強すぎるのが残念・・。

女性週刊誌の人生相談等は、皮肉抜きで、暖かい内容や耳を傾けるべきお考えを感じるのですが、拉致被害者にも関心を寄せてくださったり、北朝鮮や中国にも厳しい批判を行って下さらなければ、偽善的に感じてしまいます・・(~_~;)

これは寂聴さんだけでなく、進歩的文化人・リベラル派と呼ばれる方々全般の傾向でもありますが・・。

そして、
「ホンヨミ」に対する先生の真摯な取り組み、
役者さん達の「声の収集」には唸らされました!

昔の俳優陣は美声・声に魅力のある方々、
ナレーター・朗読に定評のある方々が実に多数でしたね・・。

藤真利子さんと先生のお着物姿にもホッと・・(^_^)

先生の今回の着こなしはラフな感じが良い印象ですから、近場や、ちょっとしたお買い物にお出かけの際は、実に適した感じかも知れませんね(^^)

では、良き執筆を(^_^)
Unknown (ひろ)
2017-12-11 14:38:33
先生こんにちわ。

瀬戸内寂聴さん、以前番組でお見かけしたときに
相談者が求めている意見とは、ズレたコメントをなさっていて「ご年齢のせいかしら?」と思ってましたが違うようですね。

私が物心ついた時には寂聴さんは、すでに良いお年でどうして尼になったのか、彼女のことは何も知らなかったのですが

数年前にドラマで宮沢りえさんが瀬戸内寂聴の半生を演じられているのを見て、こういうことがあって仏門の世界に入ったのかと。
ドラマの中では若い頃は、自分の気持ちに正直で、とても気性が激しい女性に見えました。


下重 暁子さんが書かれた本「家族という病」がなかなか良いと思っています。
前にアマゾンのレビューを見たときは批判されまくりでした。
批判してる人の大半は、家族は仲が良いのが当たり前、愛情があって当然、家族のことを悪くいってはならないと思ってる人たちなのですが。。。

私も家族関係が希薄な生い立ちなので先生の考え方寄りですが
テレビのCMでも暖かい家庭が沢山描かれていますし
「家族はこうでなければならない」という刷り込みはメディアから受けてるでしょうね。

それにしてもテレビのフォローやおべっかは視聴者にも苦し紛れなことや
心が全くこもってないのがバレバレで、見ているこっちが恥ずかしくなるのですが。
私が子供の頃はこんな不自然なフォローあげ番組
なかったように思います。テレビがつまらなくなったのはそういうのもあるでしょうね。

話は変わり、最近北朝鮮の舟が沢山日本に漂着していることが不気味でなりません。
先生はこの事件どう見ていらっしゃるのかなぁ?

またブログで見解を書いてくださるといいなと思っています。
お返事 (井沢満)
2017-12-11 16:19:24
総太郎さん

>先生の今回の着こなしはラフな感じが良い印象ですから、近場や、ちょっとしたお買い物にお出かけの際は、実に適した感じかも知れませんね(^^)


市原さんに、和洋折衷の衣装はたとえば、こんな感じ、というサンプルで、本読みに出かけたのです。



ひろさん

>家族は仲が良いのが当たり前、愛情があって当然、家族のことを悪くいってはならないと思ってる人たちなのですが。。。


この手の人が多いですね。
自分のところがたまたま上手くいっている。
だから人も、という発想で想像力のキャパが
ないのだと思います。気が合わない親子なんて
処置がないほど、お互いを嫌いです。

>先生はこの事件どう見ていらっしゃるのかなぁ?

一介の物書きなので、分勢力はありませんが、
印象としては、北朝鮮がいよいよ経済的に逼迫していることと、いずれ押し寄せてくるかもしれない難民の前兆のような気がして、不気味。イージーな人道主義に陥らず、政府が今から対処を考え準備していることを望みます。相手は我が国を敵視している国です。
台湾からなら、自分のご飯の半分を上げても助けて欲しいと思いますが。
補足 (井沢満)
2017-12-11 16:23:13
オカルトじみるので書くのを控えたのですが・・・

過去世の仇敵同士が、親子という関係で輪廻を繰り返し、虐待のゲームを繰り返すことも多いのです。
親子の役割をとっかえひっかえしながら。

このたぐいの負の連鎖は、親子という関係でだけではなく、会社の上司と部下などという関係性にもつれこんでくることもあるようです。