All animals are equal, but some animals are ...

but some animals are more equal than others.

勘違いスタッフが作るテレビのスポーツ中継

2007年09月04日 | なんでも
世界陸上と呼ばれる陸上競技世界選手権がようやく終了しました。
世界に向かってホスト国日本の恥を晒し続けた大会となりました。

開会式のガラ空きスタンドに始まり、宿泊手配の不備、選手送迎のミス、ボランティア管理の不手際、競技運営の未熟さ、とどめに閉会式の独りよがり演出などよくもここまで徹頭徹尾ひどい大会を開催したものだと嘆息が漏れます。
これらについては他のblogなどでもごまんと取り上げられていますから、ちょっと違う内容を書いてみたいと思いました。


今大会のホストブロードキャスターとして国内ではTBS(もしくはその系列局)が地上波で模様を放映しました。私が直接見たわけではありませんが、この局の得意技として「間もなく始まります」とテロップを流して実際はその数時間後に始まるという手法で視聴者にチャンネルを変えさせないという荒業を使うようです。
今回閉会式の時間にたまたまテレビが前にある環境にあり、問題だらけの大会の閉会式がどれほどのものかと見てみたくなりテレビを点けました。
事前にTBSのWEBページで21:30より「閉会式」という文字を見つけた私はその時間にテレビのスイッチを入れ眺めていました。しかし流れたのは閉会式のオープニングと思しき和太鼓の演奏、突然競技表彰式、競技の総集編と選手のミスを嘲笑う映像、メインキャスターのくだらない感想独白のみでした。
総集編なるものもメインキャスターがいかにこの大会をスタンド上層の特等席から観戦して、その結果馬鹿騒ぎをしたかという他人の生活を覗き見するような悪趣味なもので、この放送局が何を考えて視聴者にこれを提供しているのか、さっぱり理解できないものでした。


この放送局がどんなことを考えてスポーツ中継をしているか、考えの一端がわかるものがWEBページの端にありましたので貼っておきます。

http://www.tbs.co.jp/job/w_sports/sebare/index-j.html
「空気」を創り出す仕事
というタイトルのこの文章はこれからこの局に雇用されたがっている人向けに提供している内容のようです。
構成は番組プロデューサーとディレクターの対談形式です。
冒頭に
「最先端のスポーツ中継のリアル≪現実≫が赤裸々に語られる!!」
という文言がありますので、これは現場の人間が本当にそう思っているという現われなのでしょう。
内容はいかに盛り上がらない会場を無理やりに盛り上げるか、それがいかに大変で価値のあることか、その自慢話です。


「スポーツ中継ってスポーツという既にあるものを撮ってるだけって思われがちだけど、実はあの盛り上げを創り出してる」
「プレーの画を入れないで『普段はこういう人たちなんですよ』っていう素顔を見せてあげることによって、『こんな子がコートでこんなに頑張ってる』というふうな見せ方を僕らはしているかな。深いね(笑)」



放送している内容は自分達が演出したものだとはっきり言い切っているわけです。
もちろん映像は切り取られ編集されているわけです。そこに行為主体の主観が入り込まないわけにはいきません。だからと言ってここまで堂々と


「俺達のおかげでスポーツ中継は盛り上がっている」


と、勘違いされても困ります。




==========

2006世界バレー プロデューサー&チーフディレクターの「スポーツBIG対談!!」

22試合の平均視聴率が16.2%!
2006世界バレーを大成功へと導いたプロデューサーとチーフディレクターのガチンコ対談がついに実現!WaTとモーニング娘。の歌に隠された秘密とは?高視聴率の意外な理由とは?
最先端のスポーツ中継のリアル《現実》が赤裸々に語られる!!


安江:
改めてお疲れ様でした。

古山:
お疲れ様でした。

安江:
長かったよね。期間が。オリンピックだって2週間なのに、1ヶ月以上だし、会場も12会場あったしね。

古山:
全部の会場の国際映像と日本の国内向けの映像も作りましたし。

安江:
単純に日本で放送しているものだけではないからね。あとバレーボールの場合は会場のイベントも「作る」ことになるからちょっと特殊だよね。

古山:
そうですね。

安江:


最終日、日本戦終了30分後に始まったブラジル対ポーランドの男子決勝戦はすごかったね。たった30分の間に会場が日本じゃなくなった。国民性の違いなのか、ブラジル人なんかは一気にボルテージが上がっていくんだよね。でも日本人は背中押してあげないと、そういう環境を作ってあげないとやっぱり自分たちでは盛り上がり切れないところがある。

古山:
バレーボールの場合はサッカーや野球とは違いますから。

安江:


バレーボールはほかのスポーツとはちょっと違う。観客の7割、8割が女性という事も理由としてあるんだろうけど・・・。自然発生的な地鳴りのような歓声にはなかなか会場がたどり着かない。だからちょっとだけ背中を最初に押してあげる。日本のバレーボール会場では常に競技以外のプラスアルファが供給されてきたから、それが現場にないと逆に観客にも違和感がある。照明落として、ライティング演出を会場に施して、歌を大音量でコンサートと同じだけ出して、短時間でボルテージが上がる環境を作ってあげる。そういう意味では「歌」というのは非常に短時間で、観客の心を一つにするのにはすごく重要なファクターだよね。OAが始まったときにはボルテージは最高潮に達していてほしいからね。

古山:
あれで、会場の空気ができる。

安江:


ああいう演出はOAのためではなくて、全ては会場の空気を作るため。2時間半、人々が一生懸命声を嗄らして応援する、そういう気持ちに、1万人を一つにまとめることが一番大事って僕は考えてる。その熱気で極端な事を言えば試合結果まで変わってくる。それがホームアドバンテージ。外国に行ったらもっとひどいですよ。日本人は相手チームにブーイングしないからホントに外国選手にも好まれる。
そして、試合が始まってしまえば、バレーボールを知り尽くしてるディレクターとTBSの技術がいるから、そこはまったく問題なく最高のスポーツ中継は出来る。今回は名カメラマン、名オーディオミキサーもそろえてもらったし、中継としてはすばらしい中継になったと思う。

古山:
スポーツ中継ってスポーツという既にあるものを撮ってるだけって思われがちだけど、実はあの盛り上げを創り出してる。

安江:
他のスポーツは会場を盛り上げるイベントを作るために別の制作会社が入ってるけど、バレーボールはイベントを作るのもスポーツ局の仕事だよね。

古山:
プロデューサーはそういうイベントも作るし、国際バレーボール連盟との折衝もあるし、それこそ、試合の順番とか時間を決める作業もあるし、ミニの番組も見なきゃいけないし、出演者のケアもあるし・・・。

安江:
仕事の量は某局の3倍くらい(笑)。他の部署の人からもまさかイベントまで作ってるとは思われていない。

古山:
1ヶ月我慢すれば、次は来年ですから(笑)。

安江:


そうだよね、スポーツの場合は短期間に集中してる。制作にいた頃はゴールデンのレギュラー番組をやってきたからもうエンドレス。「これいつ終わるんだろ・・・」って。スポーツのいいところでいうと、毎回が特番だから、打ち上げとかもすごく盛り上がるし、終わる日が見えてるのはいいよね!

古山:
確かにいつ終わるんだろって思いながらやってたもんな・・・

安江:
バラエティ番組は「終わる」ということは打ち切りだったりするから悪いことだったりするけど、スポーツの場合は「終わる」というのはまた違って、そこに向かって全スタッフが集中できる。スポーツの良さはそこかなって。達成感はとにかくスゴイ。

古山:


僕が今回面白かったのは、安江さんから「ライブ感を大事にしたい」っていう話があったから、選手の表情をたくさん入れて、緊張感を出したところですね。いいプレーが出てスローが出るときにも、その中にも表情をどんどん盛り込んでドラマチックにしたりして。

安江:
イタリアのゾルジ(男子バレー界のスーパープレイヤー)が今回もジャーナリストとして来日していて、彼が言っていたのは「日本のTVのスローはプレーが終わったあとの表情が何であんなに多いんだ?」って。日本のスポーツ中継の考え方って非常にアメリカ寄りなんだよね、たぶん。日本人は人のパッション、表情を見るのが好きな人種で、アメリカに倣っているところがあると思う。一方、ヨーロッパの中継を観ているとプレーを究極に分析して見せようとする。とにかくワンタッチを見せようとか、ラインに入ったところを見せようとか。ケーブル有料チャンネルでの放送ということもあるけどスポーツファンとしての下地が完全に成熟しきっているのがヨーロッパで、成熟しつつも人々の喜怒哀楽が見たいというのがアメリカ的な見せ方とすると、今の日本はアメリカ寄り。日本人はプレーヤーの歓喜や苦悩、叫びといった表情を視聴者は好んで求めているから、プレーが終わったあとにそういうスローを僕たちは出していく。

古山:
女子の方が視聴率がよかった(女子平均18.1%・男子平均14.4%)のもそういうところからきてるんでしょうね。

安江:


そうかもしれない。男子バレーボールは本当に面白いけど、日本ではやっぱり女子の「ひたむきさ」が好まれる。男子があれだけいいバレーボールしても女子の視聴率を抜けないっていうのは、ちょっと悲しい気がするね。

古山:
日本人はスポーツを人で見るとこありますよね。感情移入して人間で見ようとする。「野球」を見にいくんじゃなくて「新庄」を見たくてファンは球場に足を運ぶ。

安江:
バレーボールってスポーツなのに、F2・F3(個人視聴率の集計区分・F2=女性35~49歳、F3=女性50歳以上)が視聴率の半分を占めてるっておかしいでしょ?通常スポーツの視聴者層は男性が半分はいるからね。そして彼女たちは「この子たち頑張ってるわね。応援したい」というふうにバレーボールを見てる。だから試合中に出す選手紹介のVTRには一切プレーの画は入れてないようにしている。プレーの画を入れないで「普段はこういう人たちなんですよ」っていう素顔を見せてあげることによって、「こんな子がコートでこんなに頑張ってる」というふうな見せ方を僕らはしているかな。深いね(笑)。

古山:
安江さんがすごい。他のスポーツ競技はあんまりそういうのは無いですよ。

安江:


そこにティーン(10代)が入ってくるのはやっぱりアイドルたちの力。自分が大好きな小池徹平君が、ウエンツ瑛士君が、モーニング娘が必死で応援している姿をみてそれまでバレーボールに興味を持っていなかった子達も「私たちも一緒に応援しようかな」と思ってもらえる。F2・F3・ティーンと層を少しずつ増やしていって全体の数字を上げていくっていう作業をしてる。実際にOAを見てもらえれば、そこには感動と興奮があるわけだし、チャンネル合わせてもらう作業だけを僕らはすればいいかなと。スポーツは深い。

全てホンモノでいきたい
安江:


僕が WaTに最初に言ったのは「これはバレーボール世界最高峰の世界選手権。世界一の大会だし、選手たちを含め、みんなこの大会に賭けてやっている。だからそこに賭けている人たちにウソは絶対にバレるし、ウソのものを1個でも作りたくない。だから本気で入ってくれ」って言って、WaTに長い合宿にあれだけ行ってもらって、モーニング娘。にも合宿で実際に選手たちがどんなふうに大会に備えているのかを観に行ってもらった。合宿の選手を見たら応援せずにはいられませんよ。普通の人間なら(笑)。彼ら彼女らがホントに声をからして応援してくれた状況が、ゴールデンタイムで毎日放送できたっていうのは、非常に素晴らしいことだと思う。

古山:
入り込んでくれたんで良かったですね。WaTもモーニング娘。も。やっぱり試合も熱い試合が多かったから、僕らのイメージの想像以上にバレーボールに入り込んでくれたんですごくいいものになった。

安江:


よっすぃ(吉澤ひとみ)が「おりゃー!行けー!」って顔を曲げて応援したり・・・。アイドルのあんな姿がテレビ画面に映し出されたってことは過去一度も無いと思うね。「あ、これ何か違うんだ、今までのバレーボールと違うんだ」というのがその瞬間に伝わったかなと思う。


古山:
ぶっちゃけて言うと僕らTBSテレビは今NO.1じゃないじゃないですか。一緒にNO.1をとろうっていう気概を持っている人に来てほしいですよね。

安江:


ホントそうだね。僕は絶対にこの世界バレーでTBSはNO.1に返り咲くんだ、っていう気概でやっていたし、来年は間違いなく大ヒットが期待されるドラマ「花より男子2」「華麗なる一族」があるし、さらに夏には「世界陸上大阪大会」もあるから、とにかく、この世界バレーをきっかけに、TBSはトップステーションに返り咲くことを信じている。来年再来年入ってくる人たちにはそのままNO.1ステーションでい続けるんだっていう気概を持ち続けてほしい。プロだからいい番組を作るのは当たり前。トップになればいろんなことができる。すべてがどんどんいいように回って行く。常にトップにいて最高の番組を作ってNO.1ステーションでいなければダメだ。そういう気概のある人に来てほしい。

古山:
そしてスポーツはトップになるための勢いをつけられる!

安江:
ドラマはどんなに当たっても残念ながら週に1回、2時間しか出来ないからね。バレーボールや陸上イベントが始まったら週に5回の2時間半の番組がゴールデン、プライムタイムでやることになるから、やっぱり、勢力バランスが一気に変わってしまう。やっぱり起爆剤になるのはやっぱりスポーツしかない。

就職活動をしている学生の皆さんへ
安江:


ぼくは就職活動のときが一番自分の人生をまじめに考えた時期だったな。なかなか20歳、21歳で自分の人生をちゃんと考えることってないと思うんだよね。会社に入るというのが人生のすべて決める訳ではないけれども、やっぱりその先の自分の人生を長いスパンで考えるいい機会だから、その時期に「こんなもんでいいや」とかじゃなくて、ちゃんと真面目に、真剣に考えて、自分でその道を選んだって結果になることが一番大事だと思うのね。この会社を選んだ、別に会社じゃなくていいけど、もし会社に入るんだったら、この会社は自分で選んで入った会社なんだって納得するまで考えることが大事だと思うよ、っていつも学生には言ってるかな。

古山:
確かにそうですよね。

安江:
挫折からスタートするとダメでしょ?やっぱり。この会社にしか入れなかったっていうんじゃなくて、自分がこの会社で働きたかったっていう気持ちでスタートしてもらいたい。テレビ局でも他のどんな業種でも自由業でも、自分がその仕事を選択したっていう事実が大切だと思うな。

古山:
僕は安江さんと違ってあんまり内定もらえなかった方だけど、確かにその気持ちは大切ですね。

安江:
僕はバブルの絶頂期だから、一般企業は履歴書出せばもう「内定!」って感じだった(笑)古山の頃はもうバブル終わってたでしょ。

古山:
いや、あんまりバブルは関係ない・・・。TBSテレビはそういう人でも逆に活躍の場はいくらでもある会社ですよね(笑)。


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